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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
第四節 選ばれなかった未来

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第23話 作戦会議

「それじゃあ、出発ね」


 シャルロットが荷物をパンパンに詰めたバッグを背負いながら、俺の方へ振り向き、馬車に乗り込んだ。この街ではもう俺達はちょっとした有名人で、かなりの人が、俺達の見送りにやってきていた。


 風はほとんどなく、雪が静かに降り積もっている。馬車は見送り達に囲まれており、何だかここを発つのが寂しい。


 手を振って俺達を見送る人々に手を振り返していると、馬車はその白い大地を駆け始めた。


 一つの馬車に、俺とシャルロット、星華、ギデオンと幻真が乗っているため、少し窮屈で、気まずい空間が展開されている。ここから数十分はこのまま移動するわけだし、どうにかしたい。


「……教えてほしいのじゃが、クライムはどうなった。拙者が、あの戦いで、どんな罪を犯したのか」


 その静寂を破ったのは、以外にも星華だった。そこから、シャルロットが、優しく諭すように、何があったのかを星華に伝えた。


 すべての話を聞き終え、また、車内が静寂に包まれる。星華が何を考えているのか、俺には健闘もつかない。


 だが、これがクライムの望んだ結末なんだ。俺達は、彼に未来を託された。それは、俺もシャルロットも、星華も、受け止められているはずだ。


「お主ら、これから対魔征討軍に、協力を持ちかけるつもりなのじゃろう?なら、拙者が間を取り持とう」


 その声を聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。


 どうやら、俺達の作戦は、うまく成功したようだからだ。



『パカラッパカラッ』


 俺達を引く二頭の馬が、降り積もる雪をものともせず、俺達を目的地まで連れて行く。連れて行かれるがままに、俺達はその場所まで辿り着いた。


 結局、ほとんど会話もせず、かなり気まずい空間だった。ギデオンがたまに何度か話しかけてきたが、その会話もあまり弾まなかったのだ。


 ギデオンから聞きたいことは山程あるのだが、あの車内でそれを聞く勇気は俺にはなかったらしい。


 馬車を降り、周りを見渡した。目に映り込んだのは、一度見たことがある、栄えた街並み。


 そう、俺達は戻ってきた。星華とクライムに初めて出会ったこの街に。まぁ、クライムと出会ったときの記憶は俺にはないのだが。


 星華を先頭にし、その後ろをついていく。住人達の中には、星華の帰還を喜ぶものや、俺達を不審がるものと、様々だった。


 そうして、対魔征討軍総司令部の入口に到着する。入口の大きな扉に、星華は小さな手をあてた。


「もう遠征組は帰還しておるのだろう?ギデオン」


「あぁ、間違いない。数日前に、すでに帰還しているよ」


 ギデオンが答えると、星華は力いっぱいにその扉を開いた。


 ギギギッと音を立てながら開くその扉の前にして、俺の頬に汗が流れた。中からの緊迫感が、俺の鼓動を速める。


 扉が開いた。開けたすぐそこに誰かいるというわけではなく、たくさんの部屋に分かれた、超大型の建物だ。


 広すぎる……何部屋あるんだこれ……天井がありえないくらい高く、ロビーは走り回れそうなくらい広い。その想定外の大きさに、思わず声を失った。


「こっちでござる」


 また、星華に連れられ進んでいく。その先にあった扉を星華が開いた。


 その部屋の中心には、円卓とその周りに椅子が並べられており、月並みではない、星華と同等か、それ以上のオーラを放っている人物が数名着席している。


 だが、それにしても空席が多い。俺達のために開けているわけではなさそうだ。


 恐らく、そのレーヴェでの遠征で……


「ギデオン・リアド……朧幻真(ロウ・ゲンシン)……!?星華、よく戻った。だが、この状況を説明しろ!」


 座っていた一人の男性が、声を荒げて星華に問うた。それを見て、隣りに座っていたもう一人の男性が静止する。


「要件はすでに、君から聞いている、ギデオン・リアド。一度、着席したまえ」


 その重厚感、威厳のある声が、俺にのしかかる。さり気なく席に着き、できる限り息を潜めた。


「空席が多いようだけど、やっぱり僕の予言をしん……ングッ」


 話し始めたギデオンの口を、幻真がすぐさまに抑え込んだ。言わないほうが良いことを口にしようとしたのだろう。その幻真の流石のスピードには、未来が読めてもギデオンは抗えていなかった。


「今回の遠征について、君の要望を聞き入れなかったこと、素直に反省している。だからこそ今回は、あのことは水に流し、私達と戦ってほしい」


 その男性は、俺達に頭を下げた。あまりにもすぐさま謝罪されたので、ギデオンも、流石に戸惑っている。


「いや、僕の方こそすまなかったね。もう少し良い方法があったかもしれない。だから顔を上げてくれ」


 この感じ、互いの協力は得ることができそうだ。互いの目的が完全に一致し、片方ずつでは何も出来ないこの現状では、こうするしかないのか。


 「これからの二十日間、僕達はアルトラ帝国の襲撃に備え、準備を進めないといけない。そこで、対魔征討軍と、それ以外で別れて、これから言う計画を遂行して欲しい」


 全員の視線が、ギデオンに集中する。


「まず、対魔征討軍の人達には、夢顕兵装使用時の、副作用の克服。君達が克服帰光(こくふくきこう)と呼んでいるやつだ。で、僕達夢見人は、この国に巣食う、強力な魔獣の殲滅を行う」


「何で?」


 思わず間抜けな声で聞いてしまった。


「アルトラ・アーレントの力は、もはや神の域に達している。たとえ離れた場所にいる魔獣でも、その影響を及ぼすだろう。だから、それを未然に防ぐためだよ」


 残り二十日間でそれを……少し不安だが、俺も強くなった。あの頃とは違う。十分に戦える。他のみんなもいるんだ。俺がビビっていられない。


「俺達よりも、対魔征討軍の夢顕兵装の方が問題だ。それはたった二十日間で、克服し切れるものではないだろうからね。現状、それを成し遂げているのも、総司令官と星華ちゃんだけだろうし」


「……拙者が?!」


 星華が驚く。あの一戦を経て、あの力を自分のものにできたということか。だとしたら、かなりの戦力になるはずだが……


 星華自身もその自覚がないのなら、またあの支配と暴走が繰り返されないか、少し不安が残る。


「心配要らないさ。星華ちゃんは、もうその力を思う存分使いこなせる。だから、問題はそれ以外だ」


 ギデオンがそう言うのなら問題ないのだろう。なら、俺は自分のできることに集中しなくては。


「総司令官も、この方針で大丈夫?」


「あぁ、異論はない。私にできる最大限を尽くそうと思う」


「なら、決まりだな。決戦の三日前までには、俺達ももう一度、この街へ帰ってくるよ」


 そう言うと、ギデオンは早くも席を立った。


「それじゃあ行こうか。もう、ゆっくりしている時間は無いからね」


 もう出発するのか……まだ、知りたいことがたくさんあるのに。


 立ち去るギデオンの背中に幻真も付いていく。遅れないように、俺とシャルロットもその姿を追いかける。


「覚、シャルロット……」


 だが、それを、星華の声が一度妨げた。二人揃って星華の方へ振り向き返ると、そこでは、星華が深々と頭を下げていた。


「世話になったでござる……」


 その姿に、シャルロットは笑顔で手を振った。


「またね……!」


 その光景を眺めながら、少し寂しさを感じつつも、俺は対魔征討軍総司令部を後にした。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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