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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
幕間の物語

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対魔征討軍


 荒れ果てた海の真ん中を、一隻の黒船が大きく揺さぶられながら進んでいる。


 その船内、甲板、いたるところに、傷だらけの兵士が項垂れている。その状況は、まさに悲惨だった。


 そんな船の船首に、一人の男性が、遠くの海を見つめている。他の兵士と違い、彼にはほとんど傷がなく、無表情だが、堂々と、そこに聳え立っている。


 その彼の後ろから、一人の女性が近づく。彼女はすでに傷だらけで、全身に包帯がグルグル巻き付けられ、それもまた、血で染まっている。


「総司令官、もう少しで、カウニータ・ウニアへ到着する見通しです。危ないですから、中へ」


 その女性は、彼を『総司令官』と呼んだ。 


「エストレージャか。すまないが、もう少しここにいる」


 そして、その男性は彼女をエストレージャと呼んだ。彼はエストレージャの呼びかけを無視し、その場に残り続ける。


 何をするわけでもなく、ただ遠くを見つめ、たまに『はぁ』とため息を吐く。


「やはり、今回のレーヴェ遠征を後悔されていらっしゃるのですか?夢見人、ギデオン・リアドのこともありますし……」


「確かに、私は見誤った。彼の予言通り、此度の遠征は中止にするべきだったのかもしれない。そのせいで、多くの幹部、その他兵士達を失った」


 彼は、手に持っていた杖を、強く握りしめた。それは、この敗戦に対する嘆きそのものだった。


「残された幹部は、私含め、あと四名です。現状では、もうアルトラ帝国に抵抗するには、戦力不足です。やはり、彼らの力を借りるしか……」


「だが、私達はすでに、ギデオン・リアド、及び朧幻真とは敵対関係だ。もしもう一人の夢見人、クライム・バンディの協力を得ることが出来ても、それで十分とは言えまい」


 それを聞いて、エストレージャは少し考え込んだ後、唾を飲み込んでからもう一度彼の方を見つめた。 

「彼らと私達の目的が同じであれば、必ず彼らと協力できるはずです。総司令官、もはや私達には、それしか方法は……」


 彼女の真剣な訴えを聞き、彼はしばらく考え込んだ。


 ─────

 

 対魔征討軍と、夢見人との間に起こった、一つの事件。


 そのきっかけは、ギデオン・リアドが見た予言にある。対魔征討軍が、レーヴェに遠征し、その結果、大敗を喫する、その運命を変えるため、対魔征討軍を止めるため、彼は朧幻真とともに対魔征討軍総司令部を訪れた。


 そこで彼はこう言った。


『君たちは、その持っている武器の特性を逆手に取られて、アルトラ・アーレントに支配される。その結果、大敗し、撤退を余儀なくされる。だから、この遠征は中止にするんだ』


 だが、彼の予言は信用されなかった。圧倒的実力を兼ね備える彼らは、それに耳を傾けようとはしなかった。


 総司令官である彼も、アルトラ帝国に対抗するために、やっとの思いで完成された夢顕兵装が、相手に利用されるとは考えてもいなかった。彼自身も、アルトラ・アーレントの能力を見誤っていた。


 『夢顕兵装』


 それは、魔獣本体を素材とし作製された、対魔征討軍幹部にだけ与えられる特殊武器。その武器は、素材元となった魔獣の持つ能力を引き出すことができる。まさに超次元的な力。


 だが、その武器の使用者はすぐに理解する。この能力は、我が身を滅ぼしうると。


 夢顕兵装は、副作用として、使用者の体、精神が、素材元となった魔獣に侵食されていく。それはやがて、使用者全体を飲み込み、身体、理性、その身の全てを使用者から奪い尽くす。


 そんな恐るべき点にも、総司令官である彼は気づいていた。


 彼、フェルヴィナント・フォン・トラオムは、夢顕兵装を使用した最古の人間。


 そして、その副作用を打ち破ったたった唯一の人間でもある。


 彼は、トラオム王国と言う旧国の王族の末裔。


 そのトラオム帝国は、数百年前、アルトラ・アーレントによって滅ぼされた。今のアルトラ帝国は、トラオム王国から奪い去った領土に、その支配を置いている。彼にとって、アルトラ帝国は、祖国を滅ぼされた因縁の敵であり、殺すべき最後の敵であった。


 そこで彼は命懸けで、最強の魔獣を討伐し、彼の夢顕兵装を作製した。


 だが、強大過ぎる魔獣の自我は彼を飲み込み、彼を最強の魔獣へと変貌させた。


 だが、彼のアルトラ帝国への復讐心は、それすらも跳ね除けた。失われた自我を取り戻し、その魔獣の能力を、完全に自分のものにした。


 魔獣化の克服、彼はこれを『克服帰光』と呼んだ。


 そして、最強になった彼は、対魔征討軍を結成する。世界各国から、精鋭たちを寄せ集め、彼らに適した夢顕兵装を与え、満を持して、アルトラ・アーレントへの復讐の準備が整った。



 そして、いざ出発しようとしたそのとき、ギデオン・リアドが現れる。


 突然現れ、『その武器が、自分たちを破滅に導く』、そんな予言をされても、そこまで、これほどの苦悩を乗り越えた彼にとって、簡単に承諾することは出来なかったのだ。


 話を聞かず、出陣しようとした対魔征討軍を、ギデオンは武器を使ってでも、必死に止めようとした。


 だが、それでも彼は止まらない。


 いや、止まれなかった。もう、後には引きたくなかった。


 理性を欠いていた。

 

 結果、運命は彼の予言どおりに進み、部隊はほぼ壊滅。

 

 これが、レーヴェで起きた、もう一つの悲劇の全容である。

 

 ─────


 アルトラ・アーレントを殺すためには、夢見人の力が必要不可欠であることは、彼も今回の遠征で深く理解した。


 彼としては、自分の手で、奴を葬りたいという願望が、この大敗を喫する前までは、確かにあった。


 だが、もうそんな悠長なことは言ってられない。奴を殺すために、彼は何だってする、彼もまた、復讐者であった。


「よし。エストレージャ、交渉の準備を」

ご覧いただき誠にありがとうございます!

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