第21話 夢は続く
星華とクライムを、戦火の届かない場所へ避難させ、急いでギデオン達のもとへ向かう。
全ての建物はすでに完全に焼け落ち、街はもう原型を留めていない。だが、まだその中心部からは、金属同士が激しくぶつかり合う音が聞こえてくる。
必死に覚の背中を追いかける。
「生きてたのね……良かったわ」
そう呟いたのは、幻真だった。全身傷だらけで、アルトラ・アーレントが、圧倒的な力を持っていることが一瞬でわかる。
「……あぁしんど。マジで死ぬと思った……」
背後から、疲弊しきった声が聞こえる。
ギデオンだ。だが、その傷は幻真よりもひどい。二人とも満身創痍だ。
「でも、僕たちの勝ちだ。最低目標は達成した。アルトラ・アーレント、もうお前も、戦う理由はなくなったんじゃないのか?」
その目線の先には、アルトラ・アーレントが宙に浮いている。
あの、翼はどこに隠していたんだ……見た目が、星華のように、魔獣のような見た目に変貌している。
「また、新しい夢見人に、我が計画を阻止されたか。あの魔獣を殺されるだけでなく、我が支配からも解放してみせるとは」
こいつが、我が祖国の仇。叶うものなら、今、ここで……
覚も、同じ気持ちだろう。表情は見えない。だが、その闘志だけは感じることができる。
幻真の前に出て、アルトラ・アーレントめがけて飛びかかる。その勢いは、はるか上空に佇むアルトラ・アーレントまで届いた。
「今ここで、お前を殺す……」
振りかざした大鎌がその首元まで届く。だが、アルトラ・アーレントはそれを軽々、その背に生やした翼で弾き飛ばした。
だが覚はさらにそれを読んでいた。長槍へ変形する。それをもう一度アルトラ・アーレントめがけて突き刺した。一撃目を弾かれたとき、僅かに体が後退し、リーチ外かと思われたが、変形したおかげで、その一撃は、アルトラ・アーレントの胸元を貫いた。
アルトラ・アーレントの胸元から血が噴いた。口からも吐血した。
勝った……はずがない。これで勝てるはずがない。
「お前を殺す……か。なら、なら、やってみろ……それが、我が望み、長年の夢そのものなのだから!」
血を吐き出しながら、そう言う姿に、全身の細胞が震え上がる。気迫だけで、理解させられる。
こいつには、勝てない。
突き刺された覚の長槍を、アルトラ・アーレントが握り返す。そして、少し力を入れた瞬間、その水色の刀身が粉々に砕け散った。
それが、パラパラと、私たちの前に、キラキラ舞い降りてくる。
「は……?」
覚の表情が固まる。そして生まれた大きな隙に、アルトラ・アーレントの翼が、覚を地上まで叩き落とした。
「覚……!」
「いや、大丈夫だ……クソッ武器がないと……」
それでも、まだ戦おうと立ち上がった覚を、ギデオンの手が阻む。
「貴様は、我を殺してくれるのだろう?なら、期待しているぞ。一ヶ月後、またこの国に出向いてやる。今度は、我が全軍を率いてな」
アルトラ帝国の全軍?!この戦力で、太刀打ちできるはずがない!もし本当にそうなれば、全滅は避けられない!
「貴様、ギデオン・リアドと言ったな。どうだ?貴様の目に、我の死は映っておるか?そえとも、仲間の亡骸か?」
ギデオンはうつむいていた顔をフッと上げ、ニヤけながら答えた。
「Needless to say,お前の敗北さ。俺の目に映っているのはね」
それを聞いても、アルトラ・アーレントは表情一つ変えずに、その翼を大きくは羽ばたかさせた。
「では、楽しみいしているぞ……」
アルトラ・アーレントは、そのまま闇夜へ消えていった。
結果だけを見ると、私達の勝利かも知れない。
だが、唯一奪われた彼の命は、私達にとって、大きすぎるものだった。
雪はまだ止まない。燃え上がるこの戦場に、耐えずに降りしきる。
月も星も、雲に覆われていて、何も見えない。
だが、確かに太陽は、彼の行く先を照らしてくれたに違いない。
これにて、第三節は完結です!
ここまで読んでくれた読者の皆様のお陰で、めげずに執筆を続けることが出来ています!
引き続き、どうかよろしくお願いします!




