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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
第三節 贖罪

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第18話 覚醒

 ◆   ◆   ◆


『ドオオオン!』


 後方から、激しい爆発音が聞こえてくる。恐らくシャルロットたちだ……


 だが、他人の心配をしている暇は無い。


「再戦だな、星華」


「逃げ……ろ……覚…このままでは……お主を殺してしまう……」


 ここまで変貌してしまったのに、まだ僅かに自我が残っているのか。


 この状態の星華を、どう助け出せばいい?


 この二刀の夢顕兵装の影響で魔獣化しているのなら、もし破壊することができれば……


 ただ闘うだけでは埒が明かない。まずは、それを狙ってみよう。


 星華が刀に手を掛ける。俺も、この武器を構える。まずは大鎌の形態。突っ込んで来た所で、変形し、意表を突く……


 一瞬、時が止まる。


『チャキンッ』


 来る……!


『────プシャ』


 クソが……あまりにも速すぎる。変形する時間なんて無い。


 だが、今の一撃で気づいた、星華の弱点。速いが、一撃一撃があまりにも軽い。


 それに、あの神速の一撃を放った後、大きな後隙がある。


 いける。勝てない勝負じゃない。


 『カチャンッ』


 今度は別の刀。恐らくあれは、さっきのとは違い、超高火力の一撃。当たれば死。だが避ければ、その隙を突いて反撃できる。


 星華がゆっくりその刀を抜く。そこから放たれる光は神々しいのに禍々しい。


 止まっていては、あれをまともに喰らってしまう。 瓦礫の後ろなどに隠れながら、星華の周りを走り回る。


 焦れ……これで少しでも星華の気が紛れ、手先が乱れれば……


 走り惑う俺のほうに、星華は迷うこと無く刀を振り払った。


 見誤った。この一撃は、あまりにも……


『ドゴォォォォォォン!』


「…………ガハッ……オエッ……」


 何とか、直撃は避けることができた。でも、範囲が広すぎる。完全に避けることなど不可能だ。


 このままじゃ、絶対に勝てない。それだけは嫌だ。


 俺も、理解しなくてはならない。俺がなぜ、夢見人になったのかを。俺はこの夢で、何を叶えたいのかを。


 それを自ら理解し、俺が夢見た力を手に入れなければ、こいつには勝てない。


 思い出せ、逢坂覚。


 あの日の屈辱も、絶望も。それらを打ち砕くために、何を願ったのかを……




 また、あの神速の攻撃が来る。


 この戦いにはタイムリミットがある。星華の体が魔獣に完全に侵食されるか、あまりの力に星華の体が持たないか、そのどちらかが訪れても俺の負け。


 時間は無い。迷っている時間は!


『チャキンッ』


「落ちろぉ……『無明の……流星!』」


 その瞬間、また星華が視界から消える。気づいたときには、もう俺の背後に。


『ピュシャ!』


 見えもしない無数の斬撃に、すでに俺は切り裂かれている。遅れて気づいた俺の体が悲鳴を上げる。


「ガァァッ!」


 俺が死んでも負け。こいつが死んでも負け。


 敗北した自分は、こんなにも想像できるのに、勝ち筋は一向に思い浮かばない。


 だって、こいつは俺よりも速い。俺よりも一撃の破壊力も高い。それなのに、こんな俺がどうやって勝つ?


 『チャキンッ』


 

 『────ピュシャャン!』


 無理だ。あいつが隙を見せたところで、反撃をする余裕が俺には無い。


 服は切り裂かれ、血まみれの体が露出する。今は辛うじて耐えているが、次の一撃は、内臓まで届く。


『敗北』


 その二文字が脳裏に浮かぶ。圧倒的強者に、どれほど歯を食いしばっても、勝つことの出来ない現実。才人に、積み重ねてきた努力を打ち砕かれる屈辱。


 今まで、何度も味合わされてきた。


 だが、今回のこれは、少しわけが違う。


 俺が負ければ、次はみんなが殺される。信じて送り出してくれたあいつらが。


 これまでの、誰にも期待されず、何も背負わずして味わったそれとは訳が違う。


 初めて、誰かに託された。俺にしかこれは出来ない。


 だったら、相手が誰だろうと、俺がどれだけ弱者だろうと、泥臭く、戦い抜く。


 これは、あの地獄への復讐のためじゃない。この夢を守るためのに見つけた、そのために与えられた、俺の力だ。


 見つけられた気がする、俺の夢を。


『夢反剋上(レーヴェイオス)』


 俺の理想が脳内に溢れる。


 強者への下剋上。俺の夢見たその瞬間が、何もかも叶う気がする。


 星華が刀に手を掛ける。しかも両刀。


『チャキンッ、カチャンッ』


 星華が、静かに光る黒刀を右手に、雲を裂く光を放つ白刀を左手に、俺に斬りかかる。


 それが見える。


 これ程度なら、この大鎌だけで十分だ。


『キンッ』


 初撃を刃で受ける。


『ガンッ』


 二撃目も……三撃目も……!


 目で追える。それに合わせられる。


 スピードも、力も、すべてがこんな俺と拮抗している。


 今ならいける。星華の攻撃の隙を突き、武器の形態を長槍へ変形させる。


 急にリーチが変わり、理性のない星華が動揺する。


『シュパッ』


 長槍の先端が星華の脇腹にかすれる。直撃はしない。かすれただけ。だが、初めて星華にダメージを与えることに成功した。


「何故じゃ……何故、貴様が……拙者の攻撃に……」


 突然、スピードも力も、格段に上がった俺に、星華は驚きが隠せていない。


 『夢反剋上(レーヴェイオス)』


 恐らくこれは、格上の強者との戦闘時にのみ発動する、俺の能力。強者への憧れではなく、自分を見下されたことへの嫌悪感から生まれた、俺の夢。


 この能力の詳細を、完璧に把握したわけではない。


 でも、圧倒的強者を目の前にして、何故か胸の高鳴りが止まらない。今までは羨み、憎しみを抱くことしか出来なかった俺が。

 


 自分の願いを知れて、心底気持ちがいい。


 強者になれたからではない。というか、強者にはなっていない。これは弱者の願いだ。逆転を夢見た俺が思い描いた理想そのものだ。



「さぁ、始めようか、下剋上」


ご覧いただき誠にありがとうございます!

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