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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
第三節 贖罪

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第17話 決戦

 外に出た。雪はますます深く降り積もり、足取りも視界も悪い。月も星も見えない。風が強く吹付け、雪が私の顔を横殴りする。


 それでも、私は、前へ進む。


「ごめん、シャルロット。俺も、闘うよ」


 そう、どれだけこの世界が暗くても冷たくても、私は一人ではなかった。


「馬車を借りましょう。そうした方が早く着く」


 そう、どれだけこの世界が理不尽にみちようと、それが私達に牙を剥こうと、立ち上がることができる。


「シャルロットさん……ありがとうございます」


 わかり合えないこともある。その痛みを知って、私はまた、強くなれた。



『パカラッパカラッ』


 猛吹雪の中、馬が力強く私達を運ぶ。だが、この三人の中に、馬車を操縦できる人はいなかったため、助っ人を呼んだ。


「目的地までは連れてくが、俺はすぐ引き返すぞ」


 そう、武器屋のマスターだ。片道だけという約束で、馬車の操縦を引き受けてくれた。


 マスターの操縦する馬車はとてつもないスピードで、風を切り、音を置き去りにし、疾風迅雷の如く進み続けた。



『ドオオオオオオン!』


 遠くから、激しい衝突音が聞こえてくる。それと同時に、地面は激しく揺れ、馬が思わず急停止する。


「キャア!」


 マスター含め、乗っていた全員が地面に投げ出された。雪が積もっているお陰で怪我はない。


「二人とも、ここからは走って向かいましょう。これ以上の接近は彼が危険です」


「マスター、本当にありがとう!戦いが終われば、絶対にお礼に行くわ」


 そう言うとマスターは誇らしげに笑い、投げ出されたバックの中から、何やら木箱を手に取り、私へ渡してきた。


「礼には及ばねえ。この国の危機なんだ。嬢ちゃん、そのクロスボウでは満足出来ないって言ってたろ?それ、持ってけ」


 木箱の中には、もう一台のクロスボウと、鉄球。そしてただならぬオーラを放つ五本の矢が入っている。


「そのクロスボウは、その鉄球を装填して使え。その五本の矢は、いざというときに使うんだ。それじゃあ、健闘を祈る」


 真剣な面持ちで私達を見るマスターに、私達一同は一礼し、戦場へ向かって走り出した。


 すでに誰かが戦っている。早く向かわなければ、また死人がでる。


 この戦いに、一番乗り気でなかった覚は、すでにその大鎌を構えて、誰よりも早く走る。


 その後ろに、クライムと私は必死に喰らいつく。



 そして、ついに街へ到着する。


 すでに見えてはいたが、建物は燃え、もう街の形を保っていない。だが、人の死体も見当たらない。すでに、避難は済んでいるのだろうか……


 燃え広がる炎の中心へと足を進める。そして、徐々に見え始める、四人の人影と、二匹の魔獣。


 二人の人影と、二人と二匹の影が、睨めあっている。その隣には、すでに殺された魔獣が一匹。


「ギデオン・リアドと、さっきの女の人……」


 そう、相対していた二組の内、一組はさっき森の中で出会った、ギデオンと女性だった。


 その奥に、森で出会った、あの魔獣を連れていたフードの男性。そして、目に映したくなかった、予想はしていた最悪の悪夢が、炎を背に映り込む。


「星華……クソッ、やっぱり間に合わなかった!」


 星華はすでに、夢顕兵装で魔獣に侵食されかけていた体を、アルトラ帝国の力で支配されているようだった。


 顔は星華のまま、幼いままだ。だが、あの無邪気さも、正義に満ちた眼差しも、全てが失われている。


 その代わりに、頭には二双の角が生え、牙が伸び、その姿は魔獣に近づいている。


 構える二頭の刀は、以前よりも禍々しい光を放っている。


 だが、まだ救える。ここにいる全員がそう確信している。


「なぜ俺の予言を無視したんだ……殺されるんだぞ……このままじゃ、お前たちも」


 そうか、死ぬかもしれないのか、私……でも、とっくに覚悟は出来ている。


 死ぬための覚悟じゃない、戦い抜く覚悟を!


 もう誓ったから、逃げないって!


「ギデオンさん、私達はもう引きませんよ。諦めて、共闘をお願いします」


「クソが……どこで俺は間違えた……どこで俺は、未来を選び違えたんだ……!?」


「二匹の魔獣は、私とシャルロットさんで引き受けます。残りは、皆さんにお願いしますよ」


 大鎌を構える覚が、ギデオン達の一歩前に出て、星華やその男性、魔獣たちを見上げる。


「俺は星華を助け出す。それが俺達の目的だからだ」


「……なら、僕たちはアルトラ・アーレントを……行くぞ、幻真!」


 そして、ギデオンと、幻真と呼ばれたその女性が、フードの男性に攻撃を仕掛けた。


 だが、今確か、ギデオンはその男性のことを、アルトラ・アーレントって……


 どういうことだ……彼は大昔の夢見人のはず……なのに、何で……


「シャルロットさん、考えていることは同じでしょうが、今は戦闘に集中しましょう。いいですか、絶対に私から離れないでください」


 クライム……わかった。今それを考えるのは止そう。


 星華を救い、生きて帰る。それが、私達の目的なのだから。



 そして、戦いの火蓋が切られる。


 ギデオン、幻真と、アルトラ・アーレントと呼ばれた男。


 覚と星華。


 私、クライムと、この二匹の魔獣。



 それぞれの戦いが、今ここに始まる。

 覚……どうか無事で……!


「シャルロットさん、離れた場所まで奴らを引きつけて戦いましょう。ここは、あまりにも次元が違います」


「そうね……でも、どうやって引き付ければ……あ!」


 このクロスボウを使えば、奴らを引きつけられる!


 二台貰ったクロスボウの内、鉄球を装填できる方を構える。


(ここだ!)


 放たれた鉄球は、目にも止まらぬスピードで、一体の魔獣の顔面に直撃。その瞬間、ギロッとその魔獣の鋭い目が私に突き刺さる。


 そして、その魔獣は私達の方へ、大地を抉りながら走る。


 それにつられ、もう片方の魔獣もそれに続く。


 「うまく、引き付けれましたね。このまま距離を取りましょう」


 そのまま、魔獣から目を離さないようにしながらを誘導を続ける。


 遠くからは、すでに覚たちが闘う音が聞こえてくる。


 大地は収まること無く揺れ続け、衝撃波がここまで空気を裂いている。


 これが、本当の戦争。


 炎に囲まれているのに、背筋が凍り、体が震える。


 『ヒュンッ』


 だが、それでも戦わなくては……


 魔獣の顔に、放たれた鉄球がクリーンヒットする。


 また、クロスボウを構える。


 今度はたった五本しか無い、とっておき。


 これで一体、仕留めきる。


 魔獣は倒壊した家屋や燃え広がる炎を気にせず、一直線に私のもとへ向かってくる。


 その動きは単純明快だ。


 『ヒュンッ』


 その矢は、この薄暗い大地を照らし出しばがら、完全に標的を捕らえた。

ご覧いただき誠にありがとうございます!

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