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【完結】夢見た世界でガレットを  作者: Pe.com
第三節 贖罪

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第16話 救済

 かなり、昔に書かれた文章だ。何十年では収まらない。何百年と前に書かれたものだろう。ところどころ判別不可で、綺麗に読み取れるところだけを、覚たちに読ませた。


 ここから読み取れるのは、このアルトラ・アーレントという人物が、夢見人であるということ。そして、この能力と名前から判断するに、恐らく彼こそが、大昔にアルトラ帝国を築いた張本人であるということ。


 そして、最も懸念すべき点は、この文章を隠蔽しようとした、あのアルトラ帝国の使者が、今もこの国にいるということ。


 彼は魔獣を従えていた。もし、アルトラ・アーレントの力が現代にも生きているのなら、最悪だ。


 嫌な予感がして、思考が回らない。


 武器屋で聞いた、夢顕兵装の話が、頭から離れない。


 私は問題無いだろうが、今もなお使用し続けている星華は、もし彼らと接触した場合……!


 魔獣を従わせる能力があるなら、より強力な魔獣を求めるはず。なら、あの男性の向かう先も、恐らくファフニールの所……


 とりあえず、今さっきあったことを、早口でクライムに説明する。早く伝えなければならない焦りのせいで、逆にうまく口が回らない。


「だいたい、状況は理解しました。すぐに、星華さんを探しましょう。恐らく、そのシャルロットさんの予感は当たっています」


「待て!探すっつても、無茶だろ!」


「……これはあくまで憶測ですが、やはり星華さんの向かった先は、ファフニールよる甚大な被害を受けている街でしょう」


「でも、もしそうだとしたら……ギデオンはファフニールのもとへ向かうなと言っていたんだ!行ったら必ず後悔するって、死人がでるかも知れないって!」


「そうですか……なら、やはりファフニールのいる街へ向かいましょう」


「てめぇ、話聞いてんのか!?」


 珍しく、覚が感情的になる。クライムもクライムで、なぜギデオンの予言を聞き入れないのか。人助けを嫌っていたクライムが、なぜそこまで、星華を救うことに執着するのか。


「私はもう、これ以上罪を重ねたくないんです。そもそも、贖罪を果たすため、彼の予言を信じ、覚くん、君の前に現れたのですから」


「……何が言いたい?」


「もう私にできる贖罪は、誰かのために命を落とすことだけなんです。もし、その戦場に向かい、役に立って死ねるのなら本望。私は、幸福など、手に入れてはならない極悪人なのだから」


 クライム……


 なぜ、そんな悲しいことを言うのだろうか。


 私は知っている。私が買い物や料理をしている間、彼はずっと、住人の手助けや、街の見回りを行っているところを。それを、見かけてしまった。


 そんな心優しい彼が、たった一度の、それも、彼の意志じゃない罪で、凶悪殺人犯なんて仮面を被って、生きていく必要なんてない。


 彼は救われなくてはならないはずだ。誰よりもまっさきに。


「行きましょう、覚。予言を破って死にに行くためではなく、クライムを救うために」


「シャルロット……?!」


 覚は知らない。クライムがどんな男か。どんな悲劇に見舞われたのか。


 そして、それを知ってもなお、他人には、彼を簡単に救うことはできない。私は理解した気になっているだけで、実際はないもすることが出来ない。


 わからない。何が正解で、何が間違っているのかも。


 わからない。彼らがなぜ苦しみ、なぜ復讐を果たそうとしているのか。


 他人を知らなさ過ぎる私には、これっぽっちもわからない。


 でも、それで投げ出したくはない。


 彼らが復讐のために生きるなら、私はその痛みへの寄り添い方を見つけるために生きる。


「早く行きましょう!下を向いてたって、何も救えないし、救われないわよ!」


 二人はすぐにはついてこない。それでも、私は振り向こうとはしない。


 死ぬのが怖くないのではない。今も、足の震えが止まらない。


 だが、このまま逃げたとして、恐らくその先にある後悔は、一生私の罪になるだろう。


 それのほうが怖かった。


ご覧いただき誠にありがとうございます!

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