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誰もが強いわけではありませんよ?

召喚儀式は終わった。

室矢重遠が気づかないうちに……。


そして、咲良マルグリットの姿もない。


5巻目で、ベル女編がどうどうの完結!

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 時翼(ときつばさ)月乃(つきの)は、考え込んだまま。

 この短期間に衝撃的な事実を詰め込まれ、頭がパンクしているようだ。


(可哀想に……。破裂しそうなのは、その胸だけでいいのに)


 俺も心を痛めていたら、その月乃がこちらを見た。


「視線……。分かるんだけど?」


「すまない」


 俺は息を吐きながら、青空を見上げた。


(しかしまあ……。東アジア連合の要人か!)


 原作の【花月怪奇譚(かげつかいきたん)】が終わった後でも、ルートにない死亡フラグが追いかけてきやがる。


 原作ヒロインの1人、月乃が、どの展開でも死ぬわけだ。


 日本の四大流派である操備(そうび)流にとって、絶対に消したい女。

 さらに、東連(とうれん)の門派も……。


(原作の主人公には、手に余るな!)


 その鍛治川(かじかわ)航基(こうき)とは、高校卒業から会っていない。

 無関係にした後で、それっきり。


 まあ、そっちはいい。


 俺たちは、国際空港の見送りをする場。

 つまり、飛び立つ旅客機を見送れる展望デッキだ。


 見送りの人が多く、その中に紛れている。


「永 俊熙ヨン・ジュンシーと話さなくて、良かったのか?」


 経緯はどうあれ、彼女の父親だ。


 俊熙(ジュンシー)の息子である永 飛龍ヨン・フェイロンが言ったように、今生の別れになる。


(月乃が、東連に行かない限り……)


 最後の別れは済ませたものの、俊熙(ジュンシー)は最後まで連れて帰りたい雰囲気だった。


 すると、月乃は顔を上げる。


「うん……。ボクは日本で生まれ育ったし、ベル女が故郷だよ! それに、いきなり父親や腹違いの弟がいると知っても……」


 キィイイイン


 ゆっくりと動いている旅客機が、次々に飛び立つ。


 その度に、俺たちのような見学者の視線が動いた。


 本来ならば、俊熙(ジュンシー)たちが乗っている旅客機を見送るべきだが――


 月乃は、俺の顔を見た。


「もう、行こう?」


 その表情は、苦しそうだ。


「……分かった」


 時計によれば、連中が乗っている旅客機が飛び立つまで時間がある。


 でもな?


 どうせ、小さな窓から見ることはできない。


(ま、いいか!)


 正直なところ、どうでもいい。


 当事者の月乃が言うのなら、帰ろう――


 プルルル♪


「はい……。何だ、詩央里(しおり)か」


『若さま? 今日は、帰ってこなくていいので』


「え?」


『ですから! 時翼さんの相手をしてください! もちろん、アレの意味で!』


「え?」

『え?』


 電話口で深呼吸をした南乃(みなみの)詩央里が、質問してくる。


『あの、若さま? まさかとは思いますが、このまま帰す気で!?』

「ダメ?」


『ダメです! あのですね? ちょっと待ってください』


 ここで、ブツッという音。


 耳にスマホを当てていた俺は、電話が切れたことに気づく。


 しかし、超空間のネットワークによる念話へ。


『彼女が卒業したベルス女学校の友人がいても、所詮は同性に過ぎません! 今の時翼さんは、(すが)る相手が欲しいんです』


 そうか?


『若さま……。男女の違いを抜きにして、あなたは強い人です。だけど……』


 ある意味では、人の気持ちを分かっていません。


 そう言われて、俺は考え込む。


 いっぽう、詩央里は熱弁を振るう。


『あなたを追い詰めていた1人である私に、言う資格はないでしょう……。でも、言わせてください! 今の彼女には支えが必要です! そんなに、時翼さんが嫌いですか? メグの親友でもありますし』


 別に、抱きたくないわけじゃない。


 息を吐く気配のあとで、詩央里の声が頭の中で響く。


『なら、お願いしますね? 大学生になってまで、女にリードさせないでくださいよ?』


 余計な一言を残して、室矢(むろや)家だけの会話は終わった。


 気づけば、近くで立ち尽くす月乃が、こちらを見ている。


重遠(しげとお)?」


「ああ、すまない! 大した用事ではなかったよ? それより、今から時間はあるか?」


 一瞬だけ嬉しそうな表情を見せた月乃が、頷いた。



 ――高級ホテル


 飛び込みで、有名な高層ビルの最上位にあるホテルへ。


 時翼月乃はその意味を分かっているだろうが、拒絶せず。

 大人しく、ついてきた。


 二面ともガラス張りになっている都心の絶景を見ながら、広いリビングにある海外ブランドのソファーに座る。


「えっと……。ボ、ボクは大丈夫! 大学のほうは、1日ぐらい休んでもカバーできるし」


 緊張している月乃が、わざと明るい声。


 それを聞いて、不思議に思う。


「俺は、室矢クァトル大学だが……。お前は?」


「同じところ! 明示(めいじ)法律大学の講義を受けているんだけど……」


「そうか……。あそこはキャンパスが多いし、共通の講義じゃないとすれ違いもあるか」


 ここで、月乃が顔を赤くした。


「あ、あの……。本当に申し訳ないけど、少しだけ自宅に帰ってもいい? す、すぐに戻ってくるから!」


 察した俺は、応じる。


 慌てたように、彼女は立ち上がった。


「い、1時間もかからないと思う! 待っててね?」


 バタバタと走り出した月乃は、絶景を眺められる自宅のような空間を後にした。


 残された俺は、ポツリと呟く。


「急な話だったからな……。準備ができているはずもないか!」


 特に、下着はな?


 今ごろ、待機していたタクシーに飛び乗って、自宅へ急いでいるだろう。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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