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純白のSと共に  作者: Kanra
36stage群馬湯けむり公道レース
396/435

草津プラクティス

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


 翌朝、九重拓洋は朝風呂に入るため、宿を抜け出し、白旗の湯に向かうと、朝早くから練習走行をしていたらしき、レイブリックNSXと遭遇した。

(うるせえな。朝っぱらから走ってんじゃねえよGTマシンで。)

 と、拓洋は片耳を塞ぐ。

 そして、レイブリックの後はkeeper LC500だった。

「どこぞの暴走族じゃねえんだから、静かにしてろ。騒音問題で訴えられたらどうすんのさ。夜中走らなかったからいいけど、朝っぱらからうるせえんだよ。どこぞの共産党だってこんなうるさくねえっつーの。」

 光泉寺の石段を降りながらつぶやく。

 片手には、コンビニ袋に入れたタオルを持って歩く拓洋もまた、レイブリックNSXやkeeper LC500と一緒の世界に生きているのだが、この温度差は何なのだろうか。

「まっ、奴等と俺の合間の温度差は、白旗の湯の熱い湯とぬる湯くらいだろう。まあまあ、俺だって熱いぞ?」

 白旗の湯の扉をガラガラと開ける。

 脱衣所で服を脱いで、浴槽に入る前に、かけ湯をしてまずはぬる湯(43℃~45℃)で身体を馴らす。

(よし。んじゃ、一発決めるぞ。)

 熱い湯に入る前に、またもかけ湯。

「グッ―!」と、かけ湯をする度に気合を入れる。

 頭から50杯程度、多いと100杯はかける。こうすることで、全身の血管を広げられ、身体を温度に慣れさせる事が出来る。

 そして、熱い湯(48℃~50℃)に身体を沈める。

「ううぉっ効くなっ。」と、呻き声をあげる程に熱い。

(下手に動くな!湯が揺れて余計に熱くなる。)

 時計を見ながら思う。

 1分経過。

 身体を引っ張り出す。

 そして、水を飲みながら、木製の床に横になる。

 10分~15分程、横になった後、もう一発、熱い湯に入って同じことを繰り返す。

 1時間近く、それをしていただろうか。

 まもなく、朝食の時間なので、宿に戻る。

(入る前に、まんじゅう1つ腹に入れたけど、メシ喰わんと。今日は、プラクティスだ。)

 と思いながら、宿に戻って、朝食会場に入ると、愛衣が腕を組んで待ち構えていた。

「どこ行っていた?」

「白旗の湯に―。」

「あっああ。痔を直したって言うあの?」

 腕を組んで、厳しめな説教をしようとしていた愛衣も「白旗の湯」と聞いて納得したらしい。

「てっきり、例のお二人さんとハーレムデートかと思った。」

 拓洋はそういう愛衣に、証拠として、自分の腕を見せる。

 熱い湯に入った身体は真っ赤になっていた。

「レイブリックとkeeperに会った。あいつらバカじゃねえ?朝っぱらから走ってやがってうるせえんだよ。騒音問題で訴えられたらどうすんだよ。」

「まあ、禁止されてはいないから、やっても問題はないよ。だって、私だってやろうとしたんだからさ。」

「勘弁してくれよ。」

 

 プラクティスの時間が迫る。

 プラクティスは2周実施だ。

 愛衣と同時にプラクティスを行う集団には、カルソニック坂野も含まれていた。

 そして、拓洋と同時に行うのは、ARTA月夜野、レイブリックNSX、その他、S660もいた。

 先にスタートする愛衣は、拓洋とすれ違いざまにウィンクする。

 拓洋も「コクリ」と頷いて応えた。


 プラクティスが始まる。

 愛衣はいきなり勝負を仕掛けず、坂野の後を80%の力で走る。

(予選は95%。レースは100%で行く。まあ、今は、坂野さんのテクをじっくり観察させてもらうよ。)

 と、愛衣は思いながら、坂野のR35GTRを観察する。

 拓洋もまた、ARTA NSXとレイブリックNSXの後を走り、2台の様子を伺う。

 レイブリックNSXの山河尚也は、自分よりクラスが下のはずのS660がぴったりと食い付いているのに気付いた。

(S660で食いつくんか?こっちはGTマシンだぞ?まあ、公道だからマージンは取っているけどさ。)

 ARTAの月夜野はこれを予想していたのだが、山河は予想できなかった。

(今回はVSAを完全に切った上、馬力を90に上げた。中低速域の立ち上がりの向上はそのままに、馬力を上げたんで、ついてはいける。下りならね。上りは無理だが。)

 と、拓洋は思う。

 昨日も、愛衣に「最低でも5位」と言ったのは、登りのパワー不足で失速すると予想したからだ。「最低でも5位」とは言ったが、拓洋の出場するプロBにも、ランエボやスープラ、ランボルギーニ、ポルシェ等も居る。

 彼らと戦うとなれば、必ず、登りでやられる。

(出来うる限り、プロAに食い込みたいんだけどなぁ―。)

 と、拓洋は思う。

 スーパー耐久に出場するドライバーが多いプロBにも、GT300で活躍するレーシングドライバーが多数参戦しているし、D1ドライバーもまた、プロBに多い。

 だが、金精峠―いろは坂往復レースで、プロAに食い込みまくった拓洋としては、ここでも同じことをして、プロAに出場することを望んでいた。

 そして、愛衣に至っては、このレースの結果と次戦の結果次第で、プロA昇格の可能性が出てきている。

(特急「秩父路」を名乗りたいんだが、これじゃあ急行が良いところだろうな。)

 と、拓洋は思う。

 プラクティスはまだ、始まったばかり。

 愛衣はどんどん先へ行く。

 それを追いたい拓洋だが、今は、レイブリックとARTAの後を必死に追うのが先決だった。


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