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純白のSと共に  作者: Kanra
36stage群馬湯けむり公道レース
395/435

草津温泉

この物語はフィクションであり、実在の地名、団体とは一切関係ありません。

公道での乗用車による高速・危険走行は生命に危害を及ぼします。

作中での行為は絶対に真似をしないで下さい。

自動車を運転する際は道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けてください。


また、サーキット走行に関する描写は、岡山国際サーキット及び、筑波サーキットの走行規程を元にアレンジした物です。

実際のサーキット走行時には、サーキットごとに定められた規程に従って走行してください。


「草津よいとこ?」

「薬のイデユ。」

 夕方までコース確認を行っていた愛衣と拓洋は、指定された宿に入ると、その足で草津温泉へ繰り出す。

 レースではない時、二人は人間に戻って、普通に観光をする。

「上毛かるたを覚えたのはいつ?」

 と、愛衣。愛衣は上毛かるたを言えない。

「えっと、中学時代だったかな?」

「中学時代に?埼玉住みだったのに、なんで群馬の?」

「ワケあり。」

 コインパーキングの横の細い道を歩き、草津温泉の鎮守様である光泉寺に参拝してから、石段を降りていくと、目の前に湯畑が見える。

(初めて来た時は「これが有名な―」って、感動したっけな。行き方知らねえで、大滝の湯に入っちまって、その後、帰ろうとしたらドジってコインパーキングに入ったら見えたんだっけな。)

 と、九重拓洋は思い出す。

「夕食は19時30分。それまでに、宿に戻って、食後は自由時間。でも、修学旅行じゃないから、ハメ外さないように。」

「お前、引率の先生かよ。」

 等と話しながら、湯畑を散策。

 湯畑を流れる大量のお湯が流れ落ちる音が近付いてくる。

「あんまり、買い食い出来ねえよな。夕飯もあるから。」

「ほいこれ。お茶飲みながら、足湯入ればいいじゃん?」

「―。」

(俺、白旗の湯に行きたいんだけど。まあいいや。飯喰ってから出直そ。)

 拓洋は言われるままにした。

 足湯にちょこんと座る。

 隣に愛衣。

「コース知ってる拓洋は、ただのドライブだった?」

「GTマシンがうじゃうじゃ走ってる時点で、ただのドライブじゃねえよ。」

「そうだね。草津は、走っていて気持ちいい。景色もいいし。」

「そうか。俺も、草津は好きだよ。」

「温泉って意味合いでね?」

「そうだよ。」

 足湯を出る。

 タオルで足を拭いていた時だった。

「よっ!」

 と、拓洋に話しかける女性二人組。

「出たよ―。」

「何?嫌そうな顔しないでよ。」

 松風あやかが笑う。

「えっと、隣りは―。」

「チームメイト?って言うか、彼女?」

 ムンズと、足を踏まれる。

「イッ。あの、中学の時のダチと、中学時代の数学の先生だよ。」

 と、拓洋は愛衣に、松風と三条を紹介する。

「あっ。どうも。」

 愛衣が挨拶する。

「デート中?混ぜてもらってもいい?ダブルデートって事で。」

「ちったぁ空気読めよ。つか、デリカシーってもん考えろ。」

 拓洋が言い返すが、意外にも愛衣が「OK」と言った。

「その代わり、あちらの二人も混ぜさせて貰いますよ。」

 と言って、大山神威と塚町南和子を呼んだ。

「ばっ!お前!カオスになるって、イテテテテ。」

「混ざればみんな同じ。デートじゃなくって、団体旅行になる。」

 耳を抓りながら言う愛衣を見て、三条は、

「女房の尻に叱れる亭主ってやつね。」

 と言った。

 結局、3組合同デートになってしまう。

(あーあっメンドクセエ。)

 と、拓洋は思う。

「私達、明日からのレース見に来たんだよ。連休だし。何なら、レース終わった後、ダブルデートしよ?」

「なんでこっちの都合関係なしに話進めるんだよお前は。」

 松風と拓洋が話しているのに、初めて愛衣が違和感を覚えた。

 松風の相手が年上の女性にしか見えないからだ。

「あの、ダブルデートって言いますが―。」

「愛衣。察してくれ。ちょっと、ワケあり。」

「ワケありワケあり。随分多いねワケが。」

「言っていいのかなこれ―。」

 と、三条の方を見る。

 三条は無言で頷いたので、拓洋はワケを話す。

「あっああーそういうことね。いいんじゃない?別に隠さなくっても良いでしょ?堂々としてりゃいいんだよ。」

 と、愛衣は言う。

 

 そして、そんなデート中の様子を、離れたレストランから見ていたARTAの月夜野は、土谷にそれを報告。

「だからなんだ?人ん家の事に首突っ込むな。」

 と、土谷は言った。

(あいつら、崩壊なんかしていない。嫌な予感がする。)

 月夜野はそう思ったが、同じ店で飯を食べるカルソニックの坂野大樹は、

「あいつ、レースをドライブデートと間違えてんじゃねえのか?」

 と、酷評した。

「坂野。お前は片割れを失っていた九重拓洋と会ったんだってな?」

「ああ。あの出来損ないのクソガキにな。NISSANに入れず、結局、古巣に戻って、女に泣きつく。あんなの、片手でへし折れるわ。」

 坂野は人一倍、九重拓洋と言う存在を目の敵にしていた。

 千葉の茂原ツインサーキット等、サーキットで散々鍛え、厳しいキャリアを積んだにも関わらず、拓洋はそんなの関係なしに、活躍しているからだ。

 坂野と月夜野は、クイック羽生で初めて遭遇。以後、ツインリンクもてぎカートレースを始め、様々な局面でぶつかり合ってきたライバルだった。

 そして、今でも、スーパーGT、スーパーフォーミュラ等でもぶつかり会っていた。

「坂野。俺はあいつらが、演技していたんじゃねえかって思う。」

「演技?」

「空中分解したと見せかけて、実は裏で繋がっていて、空中分解した様子を周囲に見せつけることで、油断させる。」

「だったら、菅生のスーパー耐久は何だったんだ?演技であんなことになるか?」

「坂野。お前はどう考えてんだ?」

「さっき言った通りさ。俺は、九重拓洋が嫌いなんだよ。彼女のコネだか親のコネだか知らねえけど、そんなもんで、俺のキャリアを潰されちゃ嫌なんでね。芸人Kの事件も、そんな考えを持つ奴等が仕込んだんじゃねえのかって思ってんだよ。」

「おいおい。もしそうなら、スーパー耐久であんなことになって、巻き添え喰った奴等は大迷惑だ。」

「ARTAでは土谷さんがキレたらしいな。」

「ああ。いや、みんなキレてたよ。」

「まっ、何れにせよ、へし折ってやるよあいつらなんか。」

「邪魔者は、お前に任せて、俺は勝手に勝つからな。」

「そうは行くか。」

「相変わらずだな。坂野。」

 坂野と月夜野の予感はどちらが正しいか、それは今後明らかになるだろう。


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