6. 生まれ変わり
「おとぅしゃま…ごめんなさい。わたちぃのしぇいでこんなになちゃって。」
なんとも舌足らずな声が聞こえる。
手もなんだか小さく風景が随分低い。
ふと鏡を見てみるとそこにいたのは私ではなく幼女だった。
(どう言うこと。私、死んだはずじゃ。生まれ変わったってこと?)
突然ドアが開いた。
「僕等の娘、アデル。おはよう。さぁ、朝食を一緒に食べよう。」
入ってきたのが、ルーカスとリゼットだった。
…と言うことは、私、この二人の子どもとして生まれ変わったの!
衝撃過ぎて固まった。
朝食が終わり、私はすぐにお父様の部屋へ走った。
そこには、
ベッドの中にお父様が横たわっていた。
私の最後の記憶から随分白髪が増え、頬がコケていた。
私は、すぐにベッドの横の椅子に座り手を握り話し掛けた。
息も絶え絶え、今にも死にそうな顔色だった。
私は、急いで私付の医者を呼んだ。
ルーカスとリゼットは慌てて止めようとしたが、私がキョトンとした顔で応じると…渋々医者を呼んでくれた。
(どうせ幼児が何してもわからないと思ってるわね。)
その医者はお父様を診察する。
これは…一瞬眉根が動いたが、直ぐ横に居た私がシーッとする意味で唇に指を立てた。
「今夜が峠です。痛み止めを処方しますので、ウェルツ伯爵様に飲ませて下さい。」
私、手ずから薬を受けとった。
私の侍女に水を持って来て貰い、その薬を飲ませた。
ふーっと様態が安定した。
ルーカスとリゼットがおいでと手を引っ張っていこうとするが、イヤイヤをして離れない。
私の侍女がお嬢様の様子は私が見ますからと…とどまることが許された。
(お父様に会えた。もう一度、話したい。お願い神様、お父様を連れて行かないで。)
私はそう願うのである。
次の日、また私付の医者を呼んだ。
今度は人払いをして。
「ひしゃしぶりね。アルベルトしぇんしぇい。わたし、エマよ。」
いつもの穏やかな顔がさっと嫌悪の表情へと変わった。
「いくらお嬢様でも、故人を冒涜するのはいかがなものかと。」
「ならわたしの、むないたにあったふたちゅのほくろおぼえてる?」
ルーカスとアルベルト医師しか知り得ない私の特徴を話した。
アルベルト医師は目を見開き
「なぜそれを…」
泣きそうな声で応えた。
私は、死んだ後、暫く霊魂になり漂っていた。
昨日、記憶を取り戻し、自分がルーカスとリゼットの子どもであることに気付いた。その時、お父様が毒を飲まされ続けていたことを見ていた…と、自分が分かる範囲のことを全て話した。
アルベルト医師は信頼できると確信して。
「何ということだ…わかりました。協力致しましょう?ただ毒を飲まされ続けております。助かるかは正直分かりません。解毒剤と水を飲ませ続けましょう。」
私は、アルベルト医師の横で、薬や水をせっせと飲ませた。
✥✥✥✥
「ルーカス、昨日からアデル、おかしいと思わないかい?あんなに旦那様を怖がっていたのに。昨日から旦那様から離れようとしないのよ?死にそうだったのが息を吹き返したし。」
「アデルはまだ幼女だぜ?何ができるんだって言うんだ。伯爵様もきっとたまたまだぜ。死ぬ前の最後のなんたらさ。それより、俺の子どもが最後まで献身的に見送ったってのはまた美談になるぜ。」
二人は、すぐそこまで来ている未来に期待し、笑い合ったのであった。




