13. まだまだ行きます園遊会
次に向かったのは、王宮の園遊会。
有名な弦楽器奏者が招かれ、参加者も錚々たる顔ぶれである。
(きっと出席すると返事をした以上、断る選択肢はなかったのね。)
私はニマニマと笑った。
昔、お父様とお母様にも連れてきてもらったな……。
少しだけ、昔を思い出す。
ふと辺りを見渡した。
(あら。あちらにいるのは、確かエルツェ侯爵。)
若い頃から、カツラ疑惑があったのよね。
昔、級友たちと誰があのカツラを剥ぎ取れるか挑もうとしたことがある。
けれど、あの魔王のような見た目に全員震え上がり、誰一人として成功しなかった。
(どうせ短い人生……魔王にやられますか。)
私はエルツェ侯爵へ向かって歩き出した。
侯爵は椅子に腰掛けている。
ちょうどいい。
目の前に、剥ぎ取りやすそうな頭がある。
私は勢いよく手を伸ばした。
バサッ。
カツラを思いっきり剥ぎ取る。
ツルン。
太陽の光を反射し、エルツェ侯爵の頭が眩しいほど光り輝いた。
辺りの人々が、ゴクリと息を呑む。
もちろん、私の手にはふさふさの髪。
最初に口を開いたのは、エルツェ侯爵だった。
「こりゃ参った! 髪がないぞ! ガハハハ!」
……え?
意外にも、愉快なおじ様だった。
聞けば、カツラを被るたび、自分を偽っているようで心苦しかったらしい。
けれど、一度被り始めたものを、今さら外すきっかけもなかった。
おまけに元々汗かきで、カツラの中は蒸れて仕方なかったそうだ。
「嬢ちゃんのおかげで、ようやく頭が涼しくなったわ! ガハハハ!」
豪快に笑い飛ばされてしまった。
(……あら?)
魔王が、愉快なおじ様へ変わった瞬間であった。
また、なぜか紳士たちに囲まれた。
「君は勇者だ」
「長年の謎が、ようやく解けたよ」
「エマにも見せたかったな」
懐かしい級友たちの声も聞こえてくる。
(見てるわよ。というか、剥いだの私だけど。)
ほんの少し、嬉しくなった。
ふと見ると、リゼットは誇らしげに胸を張っている。
(ちょっと。復讐のつもりだったのに、なんでアデルの評判が上がってるのよ。)
私は不満げに唇を尖らせた。
どうやら身体の年齢に引っ張られて、考えることまで少し幼くなっているのかもしれない。
こうして悪女になるという私の目論見とは裏腹に、招待状だけが次々と積み上がっていくのであった。




