12. お茶会デビュー!?
セドリックを亡き者にした後、あの人たちは私にウェルツ家を継がせるつもりだ。
そして、その地位を盤石にするため、貴族の子息を婿に迎えようとするだろう。
となれば、躍起になって私の婚約者を探すはず。
✥✥✥✥
予想通り、お茶会の招待状が次々と舞い込んできた。
薔薇が咲き誇る、広い宮廷の庭。
そこには、同年代の子どもたちと、その親たちが集まっていた。
(いきなりそこにチャレンジしたの!? リゼット、マルクス。私への信頼、どんだけ厚いのよ。)
私は目を丸くし、思わずぶはっと笑った。
確かに二度目の人生だ。
礼儀作法も勉強も、同年代の子どもより抜きん出ている。
外見だって腹立たしいことに、顔だけはいいルーカスと、美人のリゼットに似たおかげで、自分でもなかなか綺麗だと思う。
(まあ、いいわ。)
私はニヤリと笑った。
(ご期待には、しっかり応えさせていただきましょう。)
そうして私は、意気揚々と会場へ足を踏み入れた。
まず、目に入ったのは――
(あら、マーガレット先生。)
エマが学園に通っていた頃の教師である。
ぐちぐち、ぐちぐちと細かく、家格の低い令嬢が失敗すれば声を荒らげる。
そのくせ、家格の高い令息には猫撫で声。
生徒が失敗すれば、嫌味たっぷりに笑う。
(昔から、いけ好かなかったのよね。)
アデルは唇を尖らせた。
それにしても、随分お太りになったものね。
時が流れるのは残酷だわ。
ふと隣を見る。
(あら。あれはお嫁さんかしら。)
随分と小さくなって。
毎日、ぐちぐちぐちぐち言われているんじゃないかしら。
私はマーガレット先生へ向かって歩き出した。
「ねぇ、おばさん。なんでそんなに太ってるの?」
直球である。
「まあ、なんて失礼な! 私は学園の副理事長ですよ。これまで数多くの優秀な生徒を輩出してきた、由緒ある――」
(いつの間に、そんなにお偉くなったのかしら。)
ぐちぐちぐちぐち。
始まったので、とりあえず欠伸をしておくことにした。
「で、なんで豚みたいに太っているの?」
少しだけ声を大きくする。
「痩せていることが、淑女の嗜みじゃなかったかしら?」
会場中が、一瞬静まり返った。
どこからともなく、
「ぶふっ」
と、吹き出す声が聞こえる。
隣のお嫁さんの瞳が爛々と輝いていたのを、私は見逃さなかった。
マーガレット先生は全身を真っ赤に染め、わなわなと震えている。
本当に、豚のようになってしまった。
(あら。言い過ぎたかしら。)
もちろん、反省はしていない。
マーガレット先生は、その後すぐにお帰りあそばした。
なぜか私は、親たちに囲まれていた。
その中には、エマだった頃の級友もちらほら見受けられる。
(私も生きていたら、今頃この中にいたのかな……。)
ほんの少し、センチメンタルになった。
ふと後ろを見ると、リゼットが何か言いたげな顔をしていた。
けれど、私は一応ウェルツ伯爵家の令嬢。
幼女とはいえ、リゼットより身分は上である。
ましてや私は、ルーカスとリゼットにとって大切な愛娘。
家に帰ったところで、そう強く叱ることもできないだろう。
(マルクスも、まさかこうなるとは思ってなかったでしょうね。)
私は静かにほくそ笑んだ。




