表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/19

エピソード8 体育館に響く声


 県大会予選まで、あと二週間。


 私立桜ヶ丘学園女子バスケットボール部では、最後の追い込みが続いていた。


 朝七時。


 体育館には、まだ数人しか集まっていない。


 その中に、春風葵の姿があった。


 ドリブル。


 シュート。


 レイアップ。


 一本一本を確かめるように練習を続けている。


 体育館へ朝日が差し込み、汗がきらりと光った。


「おはようございます!」


 元気な声が入口から響く。


 神崎蒼真だった。


 両手にはボールバッグと給水用のタンクを抱えている。


「おはよう。」


 葵は笑顔で応えた。


「今日も早いね。」


「先輩こそ。」


 蒼真はバッグを置く。


「もう練習してたんですね。」


「朝は集中できるから。」


 そう言って再びシュートを放つ。


 ネットだけを揺らす綺麗なシュート。


「すごい……。」


 蒼真は思わず見入ってしまう。



 朝練が始まる。


 部員たちが集まり、いつものメニューが始まった。


「速攻!」


「戻る!」


 キャプテンの声が飛ぶ。


 全員が全力でコートを駆け回る。


 蒼真はタイムを計り、給水の準備をしながら練習を見守っていた。


「春風先輩!」


 パス。


 葵が受け取り、そのままドライブ。


 シュート成功。


 その瞬間だった。


「ナイスシュート!」


 蒼真が思わず大きな声で叫んだ。


 一瞬、体育館が静かになる。


 部員たちは顔を見合わせた。


 次の瞬間――


「ありがとう!」


 葵が笑顔で返した。


 その一言で、体育館全体の空気が変わる。


「ナイス!」


「もう一本!」


 自然と全員の声が大きくなった。



 休憩時間。


「蒼真くん。」


 葵がスポーツドリンクを受け取りながら笑う。


「さっきの応援。」


「すごく嬉しかった。」


 蒼真は照れくさそうに頭をかく。


「すみません。」


「つい声が出ちゃって。」


「謝らなくていいよ。」


 葵は首を振る。


「ああいう声があると、もっと頑張ろうって思える。」


 その言葉に蒼真はほっとしたように笑った。


「本当ですか?」


「本当。」


「これからも応援して。」


「もちろんです!」



 午後。


 実戦形式の練習が始まる。


 葵のチームは劣勢だった。


 何度も相手に得点を許す。


 焦りが見え始めた、その時。


「春風先輩!」


 蒼真の声が体育館に響く。


「落ち着いてください!」


「いつもの先輩なら大丈夫です!」


 その声は、不思議なくらい真っ直ぐだった。


 葵は一度深呼吸する。


「そうだ。」


「焦らない。」


 ボールを受け取る。


 仲間を信じる。


 パス。


 スクリーン。


 再びパス。


 最後は自らゴール下へ飛び込む。


 シュート成功。


「ナイス!」


 チーム全員が笑顔になる。



 練習終了後。


 顧問の森田先生が部員を集めた。


「今日、一番良かったことは何だと思う?」


 誰も答えられない。


 先生は微笑んだ。


「声だ。」


「良いチームほど、お互いを励ます声がある。」


「今日の体育館は、今までで一番声が出ていた。」


 部員たちは頷く。


「試合は技術だけじゃ勝てない。」


「仲間を信じる気持ちが勝敗を左右する。」


 先生は最後に蒼真を見る。


「神崎。」


「はい!」


「いい応援だった。」


「ありがとうございます!」


 蒼真は嬉しそうに頭を下げた。



 夕方。


 体育館の片付けを終えた二人は、自動販売機の前で少し休憩していた。


「はい。」


 葵はスポーツドリンクを一本差し出す。


「え?」


「今日は応援のお礼。」


「ありがとうございます!」


 二人はベンチへ腰を下ろした。


「蒼真くん。」


「はい。」


「これからも、たくさん応援してね。」


 蒼真は力強く頷く。


「もちろんです。」


「誰よりも応援します。」


 その返事に、葵は思わず笑顔になる。


「心強いな。」


 風が優しく吹き抜ける。


 体育館からは、後輩たちが自主練習をする音が聞こえてくる。


 その音を聞きながら、二人は静かに空を見上げた。


 バスケットボールがつないだ出会い。


 仲間として過ごす時間。


 応援する声と、それに応える笑顔。


 まだ恋という言葉には届かない。


 それでも、体育館に響くその声は、二人の心の距離を少しずつ近づけていた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ