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エピソード18  文化祭の準備


 六月。


 校庭の木々は鮮やかな緑に染まり、桜ヶ丘学園では文化祭の準備が本格的に始まっていた。


 校舎のあちらこちらから金づちの音や笑い声が聞こえ、学校全体がどこかお祭りのような雰囲気に包まれている。


 一年一組の教室でも、ホームルームが始まっていた。


「今年の文化祭は、一年一組は『お化け屋敷』に決まりました。」


 担任の山下先生が黒板に大きく書く。


 教室中から歓声が上がった。


「やったー!」


「楽しそう!」


「衣装も作ろう!」


 ひまりも目を輝かせる。


「絶対楽しい!」


 クラスメイトたちは早速役割分担を始めた。


「大道具係!」


「受付係!」


「衣装係!」


 すると、クラス委員の奈々が手を挙げる。


「ひまりは飾り付けが得意そうだから、美術担当どう?」


「えっ?」


「私?」


「うん!」


「絵も上手だったし!」


 ひまりは少し驚いたが、笑顔で頷いた。


「よし、頑張る!」



 放課後。


 教室には多くの生徒が残り、文化祭の準備が始まる。


 段ボールを切る人。


 ペンキを塗る人。


 小道具を作る人。


 ひまりは大きな模造紙へ、お化け屋敷の看板を描いていた。


「ここをもう少し怖く……。」


「でも可愛さも欲しいな。」


 一生懸命に色を塗っていると――。


「あれ?」


 絵の具を取ろうとして手が滑る。


「あっ!」


 パレットが机から落ちそうになる。


 その瞬間。


「危ない!」


 誰かが素早く受け止めた。


「大丈夫?」


 見上げると、朝倉陽向だった。


「あっ!」


「朝倉先輩!」


 ひまりはほっと胸をなで下ろす。


「ありがとうございます。」


「間に合ってよかった。」


 陽向は笑顔でパレットを渡した。



「朝倉先輩も文化祭の準備ですか?」


「うん。」


「二年生は中庭で模擬店。」


「ちょっと材料を取りに来たところ。」


「そうだったんですね。」


 陽向はひまりの描いている看板を見る。


「すごい。」


「上手だね。」


「本当ですか?」


「うん。」


「これならお客さんがたくさん来そう。」


 その言葉に、ひまりの表情がぱっと明るくなる。


「嬉しい!」


「もっと頑張ります!」



 その後も準備は続いた。


 クラス全員で協力しながら少しずつ完成へ近付いていく。


「段ボール持って!」


「ガムテープお願い!」


「ひまり、その文字すごくいい!」


 教室中に笑顔があふれていた。


 夕方になり、一年一組のお化け屋敷は形になり始めていた。



 帰ろうとした時だった。


 廊下で再び陽向と出会う。


「あっ。」


「今日も会いましたね。」


 ひまりが笑う。


「本当によく会うね。」


 陽向も笑った。


「準備、お疲れさま。」


「先輩もお疲れさまです!」


 二人は並んで昇降口まで歩く。


「文化祭、楽しみ?」


「すごく楽しみです!」


「初めてだから全部新鮮で。」


「朝倉先輩のお店にも行っていいですか?」


「もちろん。」


「待ってるよ。」


「約束ですね!」


「約束。」


 二人は笑顔で頷き合った。



 翌日。


 昼休み。


 ひまりは文化祭のポスターを掲示板へ貼っていた。


 すると美咲が通りかかる。


「ひまりが描いたの?」


「うん!」


「どう?」


 美咲はじっくり眺める。


「すごく上手。」


「一年生とは思えない。」


「本当に?」


「自信を持っていいよ。」


 姉に褒められたひまりは、少し照れながらも嬉しそうに笑った。



 放課後。


 文化祭まであと数日。


 校舎は完成へ向けてさらに賑わいを見せていた。


 ひまりは教室の窓から校庭を眺める。


 二年生の模擬店準備をしている陽向の姿が見えた。


 楽しそうに仲間と笑い合っている。


 その姿を見ているだけで、不思議と自分も笑顔になる。


「文化祭、早く来ないかな。」


 初めての高校文化祭。


 クラスのみんなと力を合わせて作る思い出。


 そして、約束した朝倉陽向との再会。


 期待で胸がいっぱいだった。


 文化祭は、ただのお祭りではない。


 仲間との絆を深め、新しい出会いや思い出を育む特別な時間。


 その準備期間もまた、青春という名の大切な一ページだった。


 ひまりの高校生活は、笑顔とともに少しずつ色鮮やかになっていく。


 そして文化祭当日、二人の距離は今よりもう少しだけ近づくことになるのだった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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