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花道闊歩 -異世界の光る球に転生した最弱生物は、死ぬ運命の女の子二人を絶対!老衰エンドに歩ませます!-  作者: ガリガリワン
第一幕 第一章 貧乏少女編

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第四話 最強老メイド


 坂田は幼い頃、よく祖父から昔話を聞かされていた。


『おなかの中をさしてまわりましたとさ』


『おなかの中ぶっ刺すのー!?』


『そうだぁケン坊、鬼は腹ん中から針で刺されたんだ。チクチクっとなぁ!』


 その記憶が、今になって鮮明に浮かぶ。


(じいちゃん……俺、俺じいちゃんに今すっごい感謝してる。じいちゃん……俺やってみるよ)


 透明で誰からも見えない坂田。声も聞かれないこの状態で、彼は自身が持つ特性を最大限に活かす。


(喉……どんな生物だって、内側から喉を体当たりされたら、微弱な衝撃でもびっくりするだろ……!)


 地竜が段々大きく見えてきた。それでも、坂田は速度を落とさずに進み続ける。恐怖は感じない。なぜなら今の坂田は、無敵なのだから。


「バギャアアアアアア!!」


 咆哮。それを行った地竜は、フリィアたちがいる家に突進し始める。それに合わせて、坂田は口の中へと飛び込む。


「おばばを置いてくなんて……できないよぉ!」


「いいから! 行きなさいフリィア!」


(安心しろ──俺が助ける)


 もうダメだ。坂田以外の二人はそう思っただろう。しかし、その絶望は消えてなくなる。地竜は突如動きを止めたと思いきや、苦しむように後退し始めた。


「ッバッッフゥバッハァッガグァ!」


 咳き込むように声を上げ、地竜は地面に頭を叩きつける。


(ぐちゃぐちゃにしてやるよぉおお!!)


 坂田は地竜の喉の中で暴れ、肺の入口あたりでがむしゃらに暴れる。この竜を殺すまではいかなくても撃退するまでやってやる。そんな意気込みだ。


「お、おばば、地竜(ドルメーア)が苦しんでる……」


「な、なんでだぁい……?」


 当たり前だが外では二人が困惑している。


(い、いつまでやりゃあいいんだ!)


「フリィア、とりあえず逃げるよぉ……!」


「う、うん!」


 坂田が時間を稼ぐ中、フリィアたちは外に駆け出す。すると、坂田は何か大きな気配を肌で感じ取り、地竜の激しい咳で吐き出されてしまった。


(し、しまった! 一瞬動きを止めたせいでっ!)


 失態に焦りながらも外に出て、彼はフリィアたちが逃げるのを見た。しかし、一人の老婆がこちらに向かってきている。


(な、なんで婆さんが近寄って来てるんだよ! 婆さん死ぬぞ! 逃げろって!!)


 その老婆は、フリィアの祖母らしき人物よりも腰が曲がっており、か弱い印象を抱かせる姿だった。


「地竜なんて一年ぶりじゃのお……」


 坂田は気にしている。先ほど自身が感じた大きな気配はなんだったのかと。あの気配に見合う存在は未だ見当たらない。


「ッグゥルゥッガアアアア!!」


 地竜が口を大きく開けて吠えた。怒り、自身が悶え苦しんだことへの怒り。それを表す叫びだ。


(あの婆さんなんなんだ……)


 坂田は空中から地竜と老婆を視界に入れ、これからなにが起きるのか全く想像できなかった。



 ──ここは異世界。


 どんなファンタジーもここでは現実。


 坂田は目にする、非現実的現実(嘘のようなリアル)を──



「ちと。おいたが過ぎるのう」


 その言葉と共に老婆から、先ほど感じた気配が発せられた。そして、老婆は姿を変えていく。


(え……え? え、マジ?)


全知脳(ぜんちのう)が発動します]


 老婆は120cmほどの身長から一気に190cmへと成長し、筋骨隆々とした姿に変わる。元々ダボダボだった服はピチピチになり、白髪に艶が戻った。


人変族(じんへんぞく):種族

 年齢に関係せず、魔力によって姿を変える種族。

 人知族(じんちぞく)の変異種であり、珍しい種族でもある]


(婆さんが……ムキムキになった……?)


 老婆はその巨体ながら駆け出し、坂田が目で追えない速度で地竜の頭へと跳ぶ。そして放たれる一撃必殺。ムキムキの老婆が放つその拳は──


「ッギュアアア!!」


 地竜の尖った口先をクレーターのように凹ませ、周囲に衝撃波が放たれる。加えて、雷鳴のような音が辺りに響き渡った。


(……な、なにが起きてんだ)


 坂田はポカンとして一部始終を見ており、老婆が地面に着地して眼鏡の位置を整えると、地竜は白目を剥きながらその場で倒れる。


全知脳(ぜんちのう)が発動します]


[マレッカ・ストラドール・五十七歳・女性・人変族(じんへんぞく)


 坂田は情報を得た。ムキムキの女性はマレッカという名であると。


(……異世界ってまさかこんなバケモンばっかいる感じか? え、てか魔法は? 剣は? 拳じゃん!)


 想像していた異世界と違うのかもしれない。坂田は不安を抱く。どうかこの老婆の見た目をするマレッカだけが、異常なだけであってほしいと願った。


「マレッカ〜! もう倒したの〜!」


 呆然としながら彼女を見ていると、村の奥の方から一人の女の子と、一人の執事がやって来る。


「“リルメス”お嬢様〜、そうですよぉイチコロです」


 坂田は耳を疑った。


「マレッカは最強ね!」


(リルメス……? 今、リルメスって言ったか?)


 道の端で固まるフリィアとその祖母らしき人は、道の真ん中を堂々と歩く桜色の髪をした女の子に視線を向ける。坂田ももちろん釘付けである。


「マレッカメイド長。お怪我は?」


「グラバ、あたしが怪我をするとでも?」


「ふふ、まあそうですよね」


 高身長で紳士な執事に、筋肉モリモリのメイド。場違いな少女、リルメス。


(……あの護衛がいるなら、そりゃ死なんわ)


 その光景を見ると坂田は納得する。あまりにも周りが強すぎる。そんなことを感じながらも見つめていれば、三人は道を歩いて去っていく。


(んで……あれとフリィアちゃんを、どう繋げりゃぁいいんだ? 無理じゃないか? だって異世界って貴族と庶民の関係なんて、悲惨だろうし……)


「おばば、大丈夫?」


「私は大丈夫だよぉ……地竜も気絶してるみたいだしぃ、処理されるまでどこかお散歩しようかぁ」


「おばばとお散歩……する!」


 頭を悩ませる問題が大きくなった。それはそれとして、フリィアたちが歩き始めたので坂田もついていく。目は離せない、一応戦い方も知れた。


(……リルメスの心配は当分なしで大丈夫。となると尚更フリィアちゃんを中心に考えよう。一応透明でも戦えたし……少しだけ希望も見えた。俺が考えるべきなのは、透明化が解除された後のことだ……!)


 坂田は計画を練る。透明化が解除され、これから彼女の前に姿を現して関わる際の流れを──



 ◇ ◇ ◇



(うーむ……)


 異世界転生十二日目。フリィアの住まう家の中で、坂田は一つのことに対して深く考え込んでいる。


 それは異世界で生きる上での、自身の名前。


(名前はどうしようか……サカタ、は嫌だし……どうせなら何か異世界らしい名前がほしい)


 そんな暇はあるのかと彼が問われれば、その答えはYESだろう。なぜなら、あれから死のリストに変化はなく、危険度の高い死の運命もなかった。そのおかげで一週間ほど、計画を立てることが出来たのだ。


(タカサ……いや逆読みじゃ高さじゃねぇか)


 計画としては、フリィアの貧困脱出が目標。そのため、前世の商売スキル(居酒屋勤務経験五年)を使い、どうにか商売で一儲けしようとしている。


(……妖精(サルェタ)族、坂田。サカタ……)


(サルェタ……サをカ行に変えないか? カルェタ? いやキモいな……ェが悪いんだ! ……てことはカルエタ? なんかしっくりこないな……)


 言語、地理、歴史、魔法。一般的な大人の教養レベルまで、全知脳(ぜんちのう)を使って知識を得た坂田。彼は、十二日目にて与えられた魔法を使いこなしている。


(……コルエタ? いや、キルエタ? うーん……もう、カ行で好きなやつでいくか。“ケルエタ”だ)


 無理ゲーだと思っていた異世界での仕事も、彼は段々と慣れてきた。まだまだ不安要素は多く、安定したとは言い切れない。


 それでも、今だけは少しホッとしていた──


(俺はこの世界をケルエタとして生きる……!)


 自分の名を考える暇があるほどには。



 そして、彼は異世界転生して十五日目にして、ついに自身が守るべき対象のフリィアと、顔を合わせる。


 光る球なので顔なんてないが──

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