↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花道闊歩 -異世界の光る球に転生した最弱生物は、死ぬ運命の女の子二人を絶対!老衰エンドに歩ませます!-  作者: ガリガリワン
第一幕 第二章 天才お嬢様編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

第十話 日常の裏で


 異世界転生二十一日目。


「フリィアって呼びにくいわね……」


「そ、そうかな……?」


 ケルエタは目の前の光景が信じられなかった。


(……なんで、なんでリルメス側からフリィアちゃんに、話しかけに来たんだ!?)


 そう、彼が今目にする光景とは、フリィアとリルメスが横に並んでソファに座り、会話してるもの。


「……フリィ、フリィってあたしは呼ぶわ!」


「フリィ……? えへへ、リルメス様からそうやって名前を貰えるのは、なんだか嬉しいです」


「もっとゆるく話しなさいよ!」


 リルメス。ボルワール家の一人娘。ケルエタは完全な偏見で、傍若無人なお嬢様だと思っていた。しかし意外にも、中身はまともな女の子である。


「じゃ、じゃあ……リルメスちゃんって呼べばいい?」


 フリィアのその声に、リルメスは満足したのか嬉しそうに、笑顔を浮かべてぶんぶんと頷く。


「そうよ! そう呼べば良いの!」


(俺……話しかけても大丈夫なのか? めちゃくちゃ拒絶されて暴言とか吐かれたら、泣くぞ)


 ケルエタは少女二人を前にして、思い切って恐る恐るリルメスに話しかけてみた。


「リ、リルメスお嬢様は、何か用があってここに?」


 すると、リルメスはこちらに視線を向けて口を開く。


「あなた名前何よ」


「ケルエタです……」


「あたしはリルメス!」


 質問にはすぐに答えてくれないリルメス。


(初っ端暴言じゃなくて良かった……)


「それで……何をしに?」


「べつに何用でもいいでしょ! あなたたちが気になっただけよ!」


 ツンとした反応だが、これがリルメスにとっての普通の態度なのだろう。それに対し、思わずケルエタは苦笑いが漏れそうになった。



「リルメスちゃん……気になったって……?」


 気になった。その言葉が引っかかったのか、フリィアはリルメスに訳を聞く。


「……あたし、ともだちいないの」


(そんなはっきり……言うか、この性格だし)


 ケルエタはリルメスの顔を見ていると、彼女が先ほどとは違った、寂しそうな表情を浮かべる瞬間を目にする。


「この村に来たのは一ヶ月前だし……元々首都の方でもともだちなんていなかった。みんな、あたしが貴族だからって……」


 リルメスは本音を容易く吐露してくれた。ケルエタは彼女についてあまり深く知らない。それでも、今のこの表情見て、この発言を聞けば、リルメスがただのわがままお嬢様でないことを察せた。


「そう……だったんだ」


 フリィアがリルメスに肩を寄せる。


「なら……もしよければですけど──」


 ケルエタが少し間を置きながら話すと、割り込むようにフリィアが声を上げた。


「わたしたちと、ともだちになろうよ!」


(言われた……ま、いっか。その方がいい)


「……いいの?」


 リルメスはフリィアに顔を向ける。


「もちろん……! わたしもともだちいないし……貴族の人からしたら、良くないかもだけど──」


 少し苦笑い混じりの微笑みを浮かべるフリィアは、言葉を発し切る前にリルメスに抱きつかれ、ソファに倒れた。


「リ、リルメスちゃん?」


「良くないわけないわ! フリィは今日からあたしの“ともだち”よ!! あとケルエタも!!」


(オマケかよ! ……まあ、それでいいよ。フリィアちゃんと仲良くしてくれる方が、俺は嬉しい)


 ユユジュを絞るためだけに用意された大きな部屋の中、休憩用のソファに倒れる少女二人を見ながら、ケルエタは少しだけ、無い口角を上げる。


(ふふ、絶好調だな。今のところ良い方向に行ってるし……このまま二人が仲良くなれば、後々楽になる)


「わたしたちともだちだね……!」


(……五年後の戦争。明確な日付は未だにわからん。俺のここからの動きは、二人を戦える存在にすること……そのためにはリルメス以外の、グラバさんから信頼を勝ち取らなきゃな……!)


 昼前、大きな部屋の中には、二人の少女が笑う声が小さくこだまする。そして、一体の光る球は希望を抱いて、これからを誰よりも先に考えていた。



 ◇ ◇ ◇



 異世界転生一ヶ月目。


「フリィ! あたしを捕まえてみなさい!!」


「わたしだって早いからね……!」


 屋敷が持つ大きな庭の中、フリィアとリルメスは追いかけっこをしていた。ガリガリだったフリィアも、健康的な食事を屋敷で食べられるようになり、普通体型に戻りつつある。


「……ケルエタ様、リルメスお嬢様は最近、フリィア様と遊ぶのが心底楽しいようで……」


「それは私もよく知ってます……なんだか不思議ですよ。まさかあんなに仲良くなるなんて……」


 二人を見守るのはケルエタにグラバ、メイド長のマレッカであった。


「いんやぁ……でも困ることもあるんですよねぇ」


 三人は共通して一つの悩みを持っている。


「……リルメスお嬢様が魔法を全く勉強しない」


「あー……言ってましたねこの間……」


「リルメスお嬢様はねぇ……中級魔法使いにならないと、首都に帰ることが許されておりませぬぅ……」


 リルメスは中級魔法使いになるまで、首都にあるボルワール家の城には帰れない。


「グラバさんって……王級(おうきゅう)魔法使いですよね。それでも教えにくいとかあるんですか?」


「ケルエタ様、実力と教える力は釣り合いませんよ。(わたくし)、絶望的に教えるのが苦手なんです」


「グラバは昔っから感覚派じゃからのぉ〜」


 この屋敷にいる護衛は基本的に五名。ケルエタがこの前出会ったっきりのエルメットとピドッド、マレッカにグラバともう一人だ。


 その中で魔法使いなのはグラバのみであり、教える人が彼以外いないのである。


「なぜリアバダ様は魔法教師を雇わなかったのですか……」


「信頼……してるんじゃないですかね?」


「そうじゃろうねぇ……」


 リアバダ。レクセト領の領主でありリルメスの祖父。


「どうしましょうかね……」


 グラバは目を右手で覆い隠し、ため息を深く吐く。


 屋敷に来てからは半月も経っていないが、ケルエタは関わる人らが人格者なのもあり、すぐに大人とは仲良くなることが出来た。


 今では、多少の信頼を勝ち取っており、屋敷内でも自由に動いて良いと許可されている。


 何もかも、リルメスと関われたのがおかげだ。


(……今なら言ってみても、いけるか)



「グラバさん。私にリルメスお嬢様の、魔法を教えることを任せてはくれませんか?」


「……本当ですか?」


「ケルエタ殿、魔法使えるんですかぁ?」


 現状、ケルエタはフリィアを剣士にならせるために、何か進展を起こしたわけでもなく、只々リルメスとの関係が深まるのを待っていた。


「使えませんが、この世の誰よりも詳しいです」


 それは、一石二鳥を狙っていたからである。


(リルメスというか、ボルワール家の財力は凄まじい。この村丸ごと買えるくらいにはな……フリィアちゃんは今の所剣士を目指してるが、良い剣士には良い剣が必要だ)



「……ケルエタ様が言うなら嘘ではないでしょうが、さすがに、魔法も使えない状態では──」


「なら決めましょう。今日から一ヶ月後、リルメスお嬢様を中級魔法使いにしてみせます!」


 強気にそう言い切るケルエタ。



(リルメスと仲良くなった今、フリィアちゃんは剣を買える機会もあるし、剣士でありながら魔法を多少扱えるようになったって良い……!)



「……わかりました。その言葉、信じますよ」


 グラバは無謀なケルエタの言葉に頷く。



(二人が剣と魔法、どっちだって使える未来もあるし、互いに努力し合える関係は、一番人を伸ばす)


 過去の経験を活かすようなケルエタの考え、彼が前世で得たそれは、異世界にて役に立つのであった。


(……あいつ、今も陸上の大会出てるのかな)



「ケルエタ殿、随分大きく出ましたなぁ……もし達成できなかったらどうするんですぅ?」


「……決めてません。でも、決める必要なんてないですよ。必ず……成し遂げてみせますから」


 ケルエタは確信を持っていた。まるで未来を見透かすように。そうした態度を持って話す彼に対し、グラバとマレッカは顔を合わせた後──


「では、ありがたくお任せいたします」


「期待しておりますよぉ」


 二人はこちらに顔を向けてそう言ってきた。



「あーもー! いきなり速くなりすぎよ!」


「えへへ、言ったもん、わたし速いって」


「……次はあたしが追いかける側よ!!」


 ケルエタらが真剣に話す中でも、二人の少女は相変わらず元気だった──


 これから訪れる、死の危機も知らないまま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。