強引な停戦2
「貴様!何者だ!」
「帝国の魔法使いか!」
「王国の魔法士め!」
「降りて来い!」
「おい、ワイバーンがいるぞ!」
両軍兵士が又口々に叫んだ。
「あ〜本当にうるさい奴らだ。」
フェスが言った。
「皆さ〜ん。」
零が粒子で空中にスピーカーを浮かせて、大音量で叫んだ。
「アルベール国王とゼノヒィス皇帝からウライアに親書が届いていま〜す。急いでその内容を確かめてくださ〜い。戦闘すると命令違反になりますよ〜」
零が大音量で続けた。
『零、あんた、何してんのよ!』
カタリナから念話があった。
『あ、カタリナさん。戦闘は何とか止まりました。』
零が念話で返した。
「黙れ!敵の諫言に騙されんぞ!」
「はしごを持ってこい!」
「降りて来い!」
「ワイバーンは動かないぞ!」
両軍兵士は口々に叫んでいる。
『零…閣下が呼んでおられるわ…戻って来て。』
カタリナが念話した。
『はぁ。わかりました。』
零が念話で答えた。
「閣下が僕を呼んでるから、行こうか。」
零がフェスとリラ、セレスティアに言った。
「お、あ奴、怒っているのですか。面白いではありませんか。」
フェスが言った。
「奴らと一戦交えるのも良いですな。」
リラも言った。
「何を言うのだ!冗談がすぎるぞ!」
セレスティアが2人を怒った。
「あははは…とにかく行くよ。」
零は言って粒子で王国軍総司令官執務室に粒子で転移した。
王国軍総司令官執務室。
零達が粒子の転移で総司令官執務室に現れた。
「零殿!あれは何だ?」
零達の姿をみるなり、総司令官バルハイトが笑いながら言った。
零は総司令官執務室の様子を粒子画面で見ていたから、総司令官バルハイトが何に笑っているのか知っている。
「はぁ、声を大きくさせる、魔導具のような物です。」
零が苦笑いで答えた。
「ここにいて、今すぐ儂にもできるのか?」
総司令官バルハイトが聞いた。
「はい。」
零が答えた。
「では儂もやってみよう。」
総司令官バルハイトが言った。
「閣下!」
副官クレールが止めようとした。
「よい。もう誰も死なせるわけにはいかん。急げ。」
総司令官バルハイトが言った。
「ではこれを。」
零がマイクを大隊長ハーラスに渡した。
大隊長ハーラスはマイクを総司令官バルハイトに渡した。
「王国軍総司令官バルハイト・フォン・グランバルトである。我が兄アルベール国王から親書が届いた。戦闘を一旦停止し、全軍本陣へ帰還せよ。繰り返す。全軍本陣へ帰還せよ。」
総司令官バルハイトがマイクで言った。
この言葉は大音量となって空中のスピーカーから発せられた。
全軍静まり返った。
「閣下のお声だ。」
王国軍の上官達が口々に言った。
「敵将の声なのか?」
帝国軍の兵士も口々に言った。
「撤退だー」
王国軍の各隊長が撤退の号令を発した。
王国軍は本陣に撤退した。
帝国軍は城壁を越える為、はしごを持ってきたが、城壁はあまりに高すぎて意味をなさない。
帝国軍の上官達が城壁を越える方法を考えていると、漸く皇帝からの撤退命令が前線に届いた。
「全軍撤退!」
帝国軍も撤退した。
王国軍総司令官執務室。
「あの城壁は何だ?」
総司令官バルハイトが呆れて言った。
「はぁ、戦闘を止める為にやむを得ず…」
零が恐縮しながら言った。
「我ら王国軍を城壁に閉じ込めて何をするつもりだ。」
総司令官バルハイトが言った。
「あ、いえ、帝国軍も城壁の囲みの中に…」
零が言った。
「帝国軍も閉じ込めたのか?!」
総司令官バルハイトが少し驚いて言った。
「はぁ、やむを得ず…」
零が又恐縮して言った。
「ワハハハ。20年続いた戦争を一瞬で止めたのか!」
総司令官バルハイトが笑った。
「ははは…」
零はつられてなんとなく苦笑いした。
「で、どうするのだ?」
総司令官バルハイトが真顔で聞いた。
「はぁ、両軍撤退したので城壁は消そうかと。」
零が答えた。
「ふむ。そうじゃな。停戦でもう城壁は必要なくなったからの。しかし儂が言うておるのは、その後の事じゃ。」
総司令官バルハイトが再び聞いた。
「は?」
「100体のワイバーンを倒し、我が王国軍、帝国軍を無力化した。この戦の勝者は零殿ではないか。」
総司令官バルハイトが言った。
「閣下!それは…」
副官クレールが言った。
「構わぬ!儂は事実を誤魔化すような狭量ではない。」
総司令官バルハイトが言った。
「はっ!」
副官クレールが答えた。
「で、零殿、どうなさる?」
総司令官バルハイトが再び聞いた。
「どうと言われても…僕は平和主義なので、アルベール国王やゼノヒィス皇帝が言うように戦争をやめて同盟を締結する方がよいと思います。」
零が言った。
「…平和主義、ワハハ、左様か。」
総司令官バルハイトが思わず笑って言った。
「閣下!しかしそれでは、兵達の士気は?死んでいった同胞達の悲願は…」
大隊長ハーラスが訴えた。
「20年、ウライアで戦った儂が、その方等の思いをないがしろにするように思うか?」
総司令官バルハイトが真顔で言った。
「いえ閣下…不敬をお許しください。」
大隊長ハーラスが言った。
「よい。許す。…長い戦だったわ。…零殿、城壁を消してくれ。」
総司令官バルハイトが言った。
「はい。」
零は粒子でウライアの上空に転移して城壁を消した。
【次回予告 】
ウライア停戦の後のあれこれ。
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