結成
「ケガしてるね、治そうか。」
零が言った。
フェスは全身火傷だらけで右腕と左肩には大きな裂傷を負っていた。
『粒子、治癒。』
フェスが答える前に治してしまった。
「重傷のキズが一瞬で治った⋯」
フェスは驚いて目を丸くした。
「フェスの仲間のキズも治すよ。」
零が言った。
全身火傷で瀕死の状態の牙狼も数匹いる。
瀕死の牙狼や軽傷の牙狼、獣人達のキズも一瞬で治した。
治癒してもらった牙狼や獣人達は歓喜した。
零が辺りを見渡すと集落は焼け野原になっている。
「避難所がいるなぁ。」
零が言った。
「ひなんじょ?」
フェスが聞いた。
『粒子、焼け残った物を集めてここに。その後に整地して。』
フェスの前に焼け残った物が集められた。
「こっこれは、何の魔法だ⋯」
フェスは焼け野原から選別して集めてくる粒子の能力に驚愕し、独り言の様に呟いた。
まだ使えそうなものや牙狼族に代々伝わる貴重品等が集められた。
『粒子、整地した所に2階建ての300人住める家を建てて。』
整地された所に2階建ての大きな家が現れた。
「何だこれは?!」
フェスや牙狼達が口々に叫んだ。
「とりあえずの避難所。雨露をしのげるから。入ってみて。」
零が言った。
フェスが恐る恐るドアを開けた。
中は広々としていて、2階と合わせて300台のベッドが並んでいる。
「ベッド⋯これでは元の集落より豪華ではないか。」
フェスが言った。
「しかもこの家は我が魔豹族の大斧でもキズひとつつけられん。」
リラが言った。
「魔豹族の大斧が効かぬのか⋯リラ、お前は何故来た?まさか牙狼族を助けに来たわけでもあるまい。」
フェスが言った。
「私は零殿がワイバーンとどう戦うのか見極めたかった。しかし零殿の前ではワイバーンでさえ戦いにならなかった。あの方は⋯」
リラは言いかけてやめた。
牙狼の子供達がベッドに乗って遊んでいる。
フェスは何か考えているようだった。
「じゃ帰るわ。」
零が言った。
「零様!」
帰ろうとする零をフェスが呼び止めた。
「零さま?」
零は戸惑いながら応えた。
「皆集まれ。」
フェスの号令で牙狼族が集まった。
「この命、零様に救われました。今後我が牙狼族は零様に命をかけてお使いします。我らのこの命、零様に捧げましょうぞ。」
そう言ってフェスが片膝をついた。
フェスの後の牙狼族の全ての者も片膝をついた。
「えっ〜」
零は戸惑った。
『肉が食べたくてワイバーンを捕獲するついでに助けたんだけど、これはそんな事言えない雰囲気だし⋯』
零は困り顔でリラを見た。
リラも驚いた顔でフェスを見ていたが、自身も片膝をついた。
「我が魔豹族も零様の軍門に下りたくお願い申し上げます。」
リラが言った。
「えええっ〜!!⋯いや俺そういうのは⋯」
零が言った。
「配下として加えていただけないなら、零様から頂いたこの命、もはや不要。」
と言ってフェスは自らの首に短剣をあてた。
「ちょっと、待って、そんな事駄目でしょ、やめなさいって。」
零が止めながら言った。
「駄目と言う事は、配下として認めて下さったのですね!!皆喜べ、零様の配下にして頂けたぞ〜」
フェスの背後で牙狼族は歓声を上げた。
「あぁ⋯何これ、俺どうなるんだろ⋯」
零が諦めた様に言った。
「リラ、帰ろうか⋯」
零が元気なく言った。
困った雰囲気を出しながら零は帰ろうとした。
「お待ち下さい、我も共に参ります。」
フェスが言った。
「ザッハ、我の留守中、後を任せたぞ。」
フェスが背後の牙狼族を振り向いて、牙狼族の男の獣人の副族長ザッハに言った。
「はっ、かしこまりました。」
副族長ザッハが片膝をつきながら言った。
「では参りましょう、我が主。」
フェスがスクっと立ち上がって、晴れ晴れとした顔で言った。
「えっ、あぁそうね。」
零は色々諦めた様に言った。
零達3人は飛び上がった。
「これが空を飛ぶと言う事ですか、主。」
嬉しそうな顔でフェスが言った。
「⋯あぁそうね。」
零が少し笑って言った。
フェスとリラがワイバーンを横から見ると、ワイバーンは首が切られていた。
その横にワイバーンの血を抜いた球体があった。
「零様、あれはワイバーンの血ですか?」
リラは驚いて聞いた。
「そうだよ。」
零が言った。
「ワイバーンの血があれだけあれば人族の町で金貨50枚で売れますよ。」
リラが言った。
「えっそうなの!」
零は驚いた。
「さすが主。ワイバーンの血を飲まずに抜くとは。」
牙狼族だったら仕留めた獲物の血を肉と一緒に食べるが、零は抜いて保存している事が素晴らしいとフェスが言った。
「えっ飲めんの?」
零が言った。
「我ら獣人は竜の血を飲むと強くなると言われています。」
リラが言った。
「そうなんだ。じゃ家に帰ったら2人にご馳走するよ。」
零が言った。
「本当ですか、ありがとうございます。」
フェスが嬉しそうに言った。
「ありがたき幸せ。」
リラが言った。
森の中で上空を飛んで行く零達を見送る妖精達がいた。
「森を炎から守ってくれた。」
「ありがとう。」
妖精達は口々に礼を言って手を振った。
「あの者達に近づいたらダメですよ。」
木の中から森の管理者ドライアドが現れて言った。
「どうして?」
妖精が聞いた。
「あの者達はとても危険です。」
ドライアドが怖い目で妖精達を見て答えた。
「危険なんだって。」
「危ない。」
「怖いわー」
妖精達は又口々に言った。
ドライアドが上空を見上げて複雑な顔で零達を見送った。
【次回予告 】
うまい肉を食べて狩りに出て、零達の生活が始まる。
粒子の能力も増える。
魔族の陰謀も少し。
物語を読んでいただきありがとうございます。
これからも面白い物語に育てていきます。
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