風紀委員と御陵馬車
「零君、よく来てくれた。」
風紀委員長エリシアが言った。
「はぁ、何のご用でしょうか。」
零が恐る恐る聞いた。
「うん、座ってくれ。」
風紀委員長エリシアが言って応接用の椅子に座った。
「はぁ。」
零も向いに座った。
「実は零君には風紀委員になってもらいたい。」
風紀委員長エリシアが言った。
「あ、お断りします。」
零が間髪入れず答えた。
「え、なぜだ。」
風紀委員は学園内で生徒会に次ぐ権力組織だ。
風紀委員長エリシアは風紀委員会に加わる事を断られるとは思わなかった。
「僕は風紀を取り締まったりするのは好きではないので。」
零は苦笑いで答えた。
「う〜ん。…零君、君は将来王家に仲間入りする。王家の男系の方達は学園で必ず生徒会か風紀委員会に入っておられる。」
風紀委員長エリシアが言った。
「え、そうなんですか?」
零が驚いて言った。
「私の先輩のユーリ王子も風紀委員長をされておられた。」
風紀委員長エリシアが言った。
「はぁ、だけどケンカなんかあったら止めるのが大変だし…」
零が憂鬱そうに言った。
「何を言うのだ。数十体の魔族や伝説の魔物ミノタウロスを1人で倒した君が。」
風紀委員長エリシアは驚いて言った。
「生徒達は魔族や魔物とは違いますよ。」
零が苦笑いで言った。
「…今朝、宰相フランツ様からの使いの方が来て、零君を必ず風紀委員会に入れる様に厳命があった。」
風紀委員長エリシアが真剣な目で言った。
「え〜、それじゃあ強制じゃないですか。学園は生徒の自治でしょ。王国からの強制なんて断ってくださいよ。」
零が嫌そうな顔で言った。
「うん、そうなのだが、風紀委員会としても是非とも、零君のような人材はほしい。国家機関との利害が一致した。」
風紀委員長エリシアは笑顔で言った。
「そんな〜」
零はほぼ諦めた。
「では、明日から風紀委員の活動に参加してくれ。風紀委員会入会を歓迎し、感謝する。」
風紀委員長が言った。
「はぁ。」
零は気のない返事をした。
放課後。
校門に目立つ豪華な馬車が3台止まっていた。
近衛騎士も十数人いる。
「何かあったのですかね。」
ロアンは零と学舎を歩きながら言った。
零はあまり興味なく、この後の第一王子ジュリアスの夕食の誘いで憂鬱になっていた。
「零様〜」
学舎の玄関でシルビア王女が零に手を振った。
シルビア王女の後には騎士ルティナとクノーラがいる。
「シルビア王女!」
零も笑顔で手を振った。
フェスとリラ、セレスティアとカタリナの後に、何故か近衛騎士長レグルスがいる。
フェスは露骨に嫌そうな顔をしている。
騎士長レグルスを見た零の笑顔が途中で消えた。
「なぜ騎士長がいるのですか。」
零は嫌な予感がして聞いた。
馬車の周りにも近衛騎士達が十数人いる。
「我が近衛騎士団の騎士達も零殿の治癒魔法で多くの騎士が命を救われた。そのお礼をまだ申し上げていなかった。零殿、ありがとう。」
騎士長レグルスが一礼して言った。
「あ、そうでしたか。皆さん大事なくて良かったです。」
零が少しホッとして言った。
「…では。本日我ら近衛騎士団が学園に参りましたのは、零殿が第一王子ジュリアス様の夕食会に向かわれるにあたり、王家専用の御陵馬車をご用意させて頂き、零殿をお連れするようにとの国王の命であります。どうぞお乗り下さい。」
騎士長レグルスが零に言った。
「え〜あれに乗るの〜」
零は豪華な馬車を指差して露骨に嫌そうな顔をした。
「零君、凄いじゃないですか。栄誉ある事ですよ。」
ロアンが興奮して言った。
仰々しい出迎えに生徒達の人だかりが出来てざわついている。
「今回はフェス殿とリラ殿も馬車にお乗り下さい。我ら近衛騎士団が皆様を護衛させて頂きます。」
騎士長レグルスが言った。
「…ありがとうございます。」
リラは苦笑いしながらチラッと騎士長レグルスを見て馬車に乗った。
騎士長レグルスは無表情である。
「お前達が護衛だと!おちおち座ってられないじゃねぇか!」
フェスが近衛騎士達を見て怒って言った。
フェスと王宮で戦った近衛騎士の何人かはフェスから目を背けて、とぼけるように目だけで空を見た。
「フェス様、私がご一緒しますから大丈夫ですわ。私がフェス様をお守りいたします。安心してお乗り下さい。」
馬車の中でシルビア王女が笑顔で言った。
「あ、ぐ、うぅ。」
シルビア王女を見ながら言葉にならない声を発して、フェスが馬車に乗った。
馬車は王宮内の第一王子ジュリアスの屋敷に着いた。
零とシルビア王女が馬車から降りた。
前の馬車からアルベール国王が降りてきた。
「アルベール国王!」
「お父様!」
零とシルビア王女が驚いて言った。
「ワハハ!驚いたようじゃの。婿殿にはいつも儂の前に突然現れて驚かされてばかりなのでな。今回は儂が婿殿を驚かせようと思ったのじゃ。」
アルベール国王が喜んで言った。
「お母様!」
シルビア王女がアルベール国王の後に降りてきたビクトリア王妃を見て言った。
「シルビア。」
ビクトリア王妃は満面の笑みでシルビア王女を見た。
「零様、私の大切な子供達を救ってくれて感謝します。」
ビクトリア王妃が言った。
「あっ、いえ、ぶ、無事で良かったです。」
零は王妃からの言葉に戸惑って答えた。
【次回予告 】
零達と王族の夕食会。
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