祝賀会
セレーナは間合いの内に鋭く踏み込んで、零の右肩に木剣を振り下ろした。
零はバランスを崩したまま、それを木剣で受けて弾き飛ばした。
セレーナは弾き飛ばされる木剣を何とか左手に留め、零を横薙ぎに払おうとした。
それより速く、零の木剣の切先が見えない速さでセレーナの喉元まで伸びて止まった。
「それまで!勝負あり!勝者、零!」
審判の剣技教官カイザードが言った。
『やっと終わった。』
零はほっとした。
「さすが婿殿。あのセレーナに勝つとは。」
貴賓席でアルベール国王が笑顔で言った。
「不思議な試合だったな。あの構えからセレーナの攻撃を全て受けるとは。サイエス、お前より強いのではないか。」
第一王子ジュリアスは笑いながら言った。
「ご冗談を。」
副騎士長サイエスも笑いながら言って、チラッと騎士長レグルスを見た。
騎士長レグルスは無表情だ。
アルベール国王も目を瞑って口元だけで、第一王子ジュリアスとは違う意味で笑った。
「あの少年がシルビアを救ったのか。」
第二王子ヴァルハイトが言った。
「はい。命がけでシルビアの病室に来て救ってくれました。」
第四王子ユーリが言った。
「私も見ていました。転移魔法でユーリとセレスティアと護衛2人と突然現れて、あっと言う間にシルビアを治癒させていました。」
第三王子レナードが言った。
「はい。私の命の恩人です。」
シルビア王女が目を輝かせて試合場の零を見ながら言った。
第一王子ジュリアスは苦虫を噛み潰したような顔をした。
本来王家としてはシルビア王女を他国の有力者と婚姻させて、グランバルト王国を対外的に争いを無くし、経済的にも国を発展させなければならない。
第王子ジュリアスは皇太子としての自覚を持つがあまり、アルベール国王との関係がぎくしゃくしている。
零とシルビア王女との婚約の件でもアルベール国王に反発している。
第一王子ジュリアスは外交的手札を失う、シルビア王女と零の婚姻に反対している。
試合会場では表彰式が行われていた。
「え、何ですか?祝賀会って。」
武術大会の帰り道、零が不思議そうにセレスティアに聞いた。
「今夜、王宮で行われる。アルベール国王が武術大会の優勝者に祝賀のお言葉を述べられる。」
セレスティアが零に答えた。
「美味しい料理も出るわよ。」
カタリナが笑顔で言った。
「ふん、主の料理より美味い物はないわ。」
フェスが言った。
「気疲れしたんで、村に帰ってゆっくり休もうかと思ってたんですけど…」
零がガッカリしたように言った。
「優勝者は必ず参加してもらわねば。何とか来て頂きたいのだが。」
セレスティアは困った顔で言った。
「はぁ…わかりました。」
零は渋々了承した。
祝賀会は王宮の大広間で行われる。
零には迎えの馬車がきた。
零が乗る馬車には護衛としてリラとセレスティアが乗った。
零は王宮に行く馬車の中で、王宮の中の様子を粒子で探索した。
王宮の大広間に大勢の貴族や生徒が集まっている。
王族も勢揃いしている。
零はため息をついた。
「どうかされましたか?」
馬車の中でリラが聞いた。
「うん、…王宮の大広間に大勢の貴族や生徒や王族まで集まってる。これから何が起こるのか、憂鬱になってきた。」
零が苦笑いしながらリラに言った。
「零殿は本日の主役ですから、多少堅苦しい事もあるかと思いますが、何卒ご理解頂きたい。」
セレスティアは申し訳なさそうに言った。
馬車が王宮に到着した。
零が馬車を降りると、悪魔グローリが出迎えた。
「零様、優勝おめでとうございます。」
悪魔グローリが一礼しながら言った。
「グローリ、ここで何してんの?」
零が呆れ顔で言った。
「零様の晴れの姿を見にきたに決まっているではありませんか!」
悪魔グローリは満面の笑みで声を大にして言った。
「ちょっと、声が大きい。目立つからやめて。」
零が迷惑そうに言った。
リラは苦笑いした。
フェスは満足そうに笑った。
「零様、私めが会場の大広間までエスコートさせて頂きます。」
悪魔グローリが言った。
悪魔グローリが堂々と大広間まで零達をエスコートする。
「ちょっと、又状態異常魔法で近衛兵達を操ってるわね!」
悪魔グローリをスルーする近衛兵達を見て、カタリナが怒って言った。
悪魔グローリは近衛兵達に状態異常魔法を使って、自分を王宮の執事と思わせている。
「おや、未熟者もいましたか。大人しくしていなさい。」
悪魔グローリは術式の違う状態異常魔法をカタリナに仕掛けた。
「グローリ、やめなさい!」
零が呆れて、粒子でその魔法をカタリナから取り除いた。
「はい。しかしさすがです。術式を変えても零様の前では意味を成しません。」
悪魔グローリが会釈しながら零に言った。
カタリナは悔しそうな顔で悪魔グローリを睨んでいる。
「我ら近衛騎士団が守っているのに、こうも簡単に王宮に入り込めるとは…」
セレスティアは悔しさを滲ませた。
「グローリは三千年以上生きてる悪魔ですから、100年も生きられない僕達が届かない事はたくさんありますよ。」
零が苦笑いでセレスティアに言った。
「しかし、それでは王家をお守りする事が出来ない。」
セレスティアが言った。
「グローリと敵対すれば守れないかもしれませんが、仲間にしてしまえば守る必要もなくなるじゃないですか。」
零が笑顔で言った。
「仲間にする…」
一瞬、セレスティアの心の中に何かが動いた。
【次回予告 】
簡単には終わらない祝賀会。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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