問題の相手
『なんだ、今のは!迅歩の太刀を受けたのか!?二の太刀までも…三の太刀に踏み込めなかった。』
風紀委員長エリシアは動揺した。
『何、今の。何にも見えなかったけど…』
零は顔を引きつらせて思った。
『ならば、迅嵐剣。』
エリシアは木剣を構え直した。
風紀委員長エリシアの周りに気が集まってきた。
今度は最初の踏み込みから見えない速さだった。
エリシアは零の右側に現れ右肩に木剣を打ち下ろした。
そう見えたが、左側に現れて零の腰に木剣を打ち込んだ。
零はそれを木剣で受けた。
二の太刀は右側に現れ、右肩に打ち下ろされた。
零はそれも受けた。
三の太刀、四の太刀、風紀委員長エリシアの、肉眼では見えない速さの打ち込みを零は全て木剣で受けた。
瞬間的な動きを続けたエリシアは、五の太刀を打った時、少しバランスを崩した。
零の木剣の受けが、エリシアの五の太刀の木剣を強く弾いた。
『私の木剣が弾かれた!』
零の木剣がバランスを崩したエリシアの喉元の寸前で止まった。
「勝負あり!」
審判剣技教官カイザードの声が響いた。
どよめきの後、大歓声が起こった。
「剣が弾かれた…負けたのか…私が。」
風紀委員長エリシアが呟いた。
エリシアと零は開始線に戻り、一礼した。
「君は凄いな。迅嵐剣を全て受けきられたのは初めてだ。今日は良い勉強になった。ありがとう。」
風紀委員長エリシアが言った。
「エリシアさん、凄かったです。打ち込みが見えない速さでした。良い経験になりました。ありがとうございます。」
零が興奮して言った。
「見えない速さ?変な事を言うな。私の打ち込みを全部受けていたではないか。」
エリシアは不思議そうに言った。
「あ、あぁ、そうですね。ははは。」
零は慌てて言った。
2回戦。
対戦相手はシルビア王女の婚約問題の2年生イグナート・バンドールである。
バンドール公爵の子息で、武術大会の優勝と引き換えに、国王にシルビア王女との婚約を迫るつもりの相手である。
2年生イグナートと零が試合場に入場してきた。
「あれが、バカ公爵の息子か。」
フェスが言った。
カタリナがクスッと笑った。
「フェス殿、我が王国では貴族を侮辱する事は罪になります。」
セレスティアが言った。
「へ〜、我をどんな罰にするのだ。」
フェスが目を殺気立ててセレスティアを見た。
セレスティアはフェスを睨んだ。
「フェス殿ダメですよ。学園内でのもめ事は。」
フェスの後に現れた悪魔グローリが言った。
「薄気味悪い魔力を出すな。」
フェスが後を振り返りながら言った。
セレスティアとカタリナは身構えた。
「私は悪魔ですから、この様な魔力しか出せません。そこの騎士2人とも私に殺気を向けないでください。」
笑いながら悪魔グローリは言った。
「おい、観客がいるのに転移してきて、大丈夫なのか?」
リラが言った。
「大丈夫です。見た人には忘れてもらいますから。」
又笑いながら悪魔グローリが言った。
「気安く状態異常魔法を使うんじゃないわよ。」
カタリナが言った。
「未熟者が私に命令しないでください。」
悪魔グローリがカタリナに言った。
「なんですって〜その内あんたの魔法も弾き返してあげるから、見てなさい。」
カタリナが言った。
「勝負あり!」
試合場の審判の剣技教官カイザードが言った。
「え?」
フェスとリラ、セレスティアとカタリナ、悪魔グローリは同時に試合場を見た。
試合場では零が勝者の名乗りを受けていた。
「試合、終わったのか?」
フェスが驚いた顔で言った。
「零殿の勝ち…のようだ。」
セレスティアが言った。
皆が唖然とした。
「…そ、それでは私は仕事がありますので、これで失礼します。」
と言って悪魔グローリはどこかへ転移した。
「リラ、お前見たか?」
フェスが聞いた。
「いや…見た時には終わっていた。」
リラが答えた。
「肝心の試合だったのに、見逃すとは。」
セレスティアが悔しそうに呟いた。
「おのれ、グローリめ!」
フェスが怒って言った。
この試合に零が勝ったことでバンドール公爵が言い出したシルビア王女の婚約問題の半分は解決した。
準決勝の日。
「おい、面倒な奴等がいる。お前達の知り合いか。」
フェスの目に殺気が漂った。
「違うわよ。あいつらは多分帝国の連中よ。」
カタリナが言った。
試合の観客席に行くまでの所々に王国の騎士とは気配の違う強い護衛がいる。
「まさか、今日の零殿の対戦相手は帝国の王族か?」
セレスティアが言った。
『零様、おかしな連中がいます。お気をつけください。』
リラが零に念話した。
『知らせてくれてありがとう。帝国の黒騎士のようだね。今日の僕の対戦相手は帝国の王族なのかもね。』
選手控室にいる零が念話で答えた。
『粒子、準決勝の対戦相手を探索して鑑定。』
準決勝の相手は、前回大会の準優勝者、3年生アランに勝った、帝国のシルフィード男爵の娘ルミニアという事になっている。
実は帝国第ニ王女のイザベラである。
零は選手控室で椅子に座り、傀儡を残して悪魔グローリの教官の執務室に転移した。
「今日の僕の相手は帝国のイザベラ王女じゃないの?」
零が悪魔グローリに聞いた。
「これはこれは、零様。わざわざお越し頂きありがとうございます。仰る通りです。帝国第ニ王女のイザベラです。」
悪魔グローリが笑顔で答えた。
「帝国のお姫様が敵対国の学園に入学なんて大丈夫なの?」
零が心配そうに聞いた。
【次回予告 】
準決勝、いろいろな意味で難敵。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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