魔法と剣技実技試験
学園内の屋外の魔法訓練場で魔法実技試験が行なわれた。
フェスとリラ、セレスティアとカタリナは訓練場の隅で様子を見ている。
「あの的を得意の魔法で当ててください。」
試験官が言った。
「はぁ…」
零は曖昧な返事をして的を指差した。
「風魔法という感じで。」
と零が言って粒子を風の様に高速で飛ばし的を破壊した。
「なんですか、今のは?的が破壊されるなんて!」
試験官は驚いた。
「えっ、一応風魔法のような…」
零は戸惑いながら答えた。
「無詠唱であんな威力の風魔法を使うのですか?」
試験官が聞いた。
「ええ、まぁ。」
零は苦笑いで答えた。
「…他には使える魔法はありますか?」
試験官が聞いた。
「えっ?じゃ火魔法のようなのを。」
と言いながら手の平に粒子で地下のマグマを転移させて作った炎の玉を隣の的に飛ばした。
的は小爆発を起こして破壊された。
「まだやりますか?」
零が聞いた。
「いえ、いえ、もう結構です。」
試験官が慌てて言って魔法実技試験は終わった。
剣技実技試験は屋内の訓練場で行われた。
「剣技実技試験は木剣による試合になります。試合の相手は風紀副委員長の2年生のウォルター君です。思いきって胸を借りるつもりで自分の力を出してください。」
剣技実技試験の試験官が言った。
魔法試験の時と同様、フェスやリラ、セレスティアとカタリナは訓練場の隅で様子を見ている。
試験官から零に木剣が渡された。
「はい。わかりました。」
零は言いながら2年生ウォルターの待つ訓練場の中央に行って構えた。
『何だ、こいつ、隙だらけだ。』
2年生ウォルターは思った。
「それでは始め。」
試験官が言った。
零はセレスティアとの模擬訓練の時と同様に、2年生ウォルターと自身の木剣を粒子で囲んで、2年生ウォルターの木剣の動きに合わせて自身の木剣が動き、木剣同士が当たるようにした。
「すぐに終わらせる。」
と言いながら2年生ウォルターは零の頭上に木剣を振りおろした。
零はそれを受けて弾いた。
そこから見えない速さで2年生ウォルターの胴を狙って、当たる寸前でピタリと止めた。
「え?何が起こった?…」
試験官は2年生ウォルターが負けると思わなかったので戸惑った。
「あの〜今のはダメでしたか?」
零が試験官を見て言った。
2年生ウォルターの目が怒りに満ちた。
「貴様!」
2年生ウォルターが零の左肩に木剣を打ち下ろした。
零はさっきと同じ動きで木剣を弾いて、2年生ウォルターの胴の寸前で止めた。
零はまた試験官を見た。
その隙を見て2年生ウォルターは又頭上に木剣を打ち下ろした。
零はまた同じ動きで木剣を弾き、また胴の寸前で止めた。
「ぐ、愚弄するのか?!」
怒りに震えた2年生ウォルターが言った。
「え?あの〜僕は何か間違いましたか?剣技はあまり慣れてなくて。」
零は困惑して言った。
試験官は、はっとして「試合はそれまで。」と言った。
零は笑顔で一礼して訓練場を出ようとした。
背中を見せた零に2年生ウォルターが襲いかかった。
2年生ウォルターは零の背後から頭上に木剣を振りおろした。
「主!」
「零殿!」
セレスティアが叫び、フェスが訓練場に飛び込んで2年生ウォルターを抑えようとした。
零の頭に木剣が当たる寸前で、フェスの拘束をすり抜けるように、2年生ウォルターの体が見えない速さで打上げられた。
訓練場の天井スレスレで2年生ウォルターは急停止して、そこからまた見えない速さで、フェスの目の前で床に叩きつけられた。
叩きつけられたはずの2年生ウォルターにキズはなく、床にもキズ一つ無い。
フェスは茫然とした。
「フェス、ありがとう。」
ゆっくり振り返って零が笑顔で言った。
セレスティアとカタリナは唖然としている。
その後零はリラを見て笑った。
「ジュウリョク魔法…」
リラが呟いた。
リラ達魔豹族が零を襲撃した時、族長代理の巨漢のガダンが見えなくなるまで上空に打ち上げられて落とされている。
「ちょっと、リラ、あんた今の魔法、知ってるの!?じゅうりょくって何よ!」
カタリナが焦った様に言った。
リラはチラッとカタリナとセレスティアを見て複雑な顔をした。
強烈な重力がかかった2年生ウォルターは気を失っていた。
零は何もなかったかのように木剣を試験官に返して競技場を出た。
零は編入試験に合格した。
2ヶ月後、学園に通う事になった。
成績優秀でシルビア王女と同じAクラスになった。
「零様が同じクラスで嬉しいです。」
「はい。頑張った甲斐がありました。」
同じ馬車の中でシルビア王女と零が喋っている。
シルビア王女が復学初日は零と登校したいと強く希望した。
護衛としてリラとルティナが同乗している。
「おい、お前、ちゃんと主を護衛してんだろうなぁ。」
フェスが前を歩くカタリナに言った。
「はぁ、バカじゃないの、零に護衛なんか必要ないでしょ。シルビア王女を護衛してるに決まってるでしょ。」
カタリナが言った。
フェス、カタリナ、セレスティア、騎士クノーラの4人は馬車の周辺を護衛して歩いている。
「お前達本当に仲がいいなぁ。」
騎士クノーラが言った。
「そんな事ありえないわ!」
「そんなわけないわ!」
カタリナとフェスが同時に言った。
「仲良いじゃねえか。」
騎士クノーラが笑いながら言った。
馬車が学園に着いた。
馬車から出たシルビア王女は立ち止まって顔がこわばった。
それを見た騎士ルティナが少し辛そうな顔をした。
シルビア王女は学園内で反王族派の貴族の子息の標的にされている。
ここからは病み上がりのシルビア王女が護衛無しで反王族派の貴族の子息達と相対さなければならない。
そのプレッシャーと魔族化の後遺症で精神が不安定になっている。
「シルビア王女、僕は何も分からないので、色々教えてくださいね。」
零が笑顔で言った。
零の粒子が王女の脳内で、王女が精神的に不安定になった時に、負の脳内物質を抑制している。
「はい。」
シルビア王女も笑顔になった。
【次回予告 】
学園生活の初日、早速トラブル。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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