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騎士長と零

「えっ、もう終わったのですか?」

文官が驚いて聞いた。


「予定していた試験時間の半分も経過していませんが。」

別の文官が言った。


零の答案用紙をチェックした文官達が驚いた。


「全ての教科、満点です。」


文官達は唖然として零を見た。


零は王国図書館の全ての本の内容を粒子の能力で自身の脳内にも保存している。


満点は当然の結果である。


「こんな事…確かに簡単な問題もあったが、優秀な文官でもわからない問題もあったのに。」

文官が言った。


「これでは逆に零様の学力の判断ができない。」

別の文官が言った。


セレスティアとカタリナも驚いて零を見ている。


「さすがは主。」

フェスとリラは満面の笑みで零の側に寄った。


零も笑顔で2人に応えた。


模擬試験が早く終わったので、予定を変更して夕刻から剣技実技試験の練習を行う事になった。


王宮内の近衛騎士団の訓練場が使われた。


セレスティアと零達が訓練場に入って来た。


事前に聞いていたので訓練場にいた騎士達が訓練をやめて周辺に散らばった。


セレスティアが零に木剣を渡した。


零は木剣を握って戸惑っている。


「零殿、どうされた?」

セレスティアが不思議そうに聞いた。


「あっ、いや、僕は剣を握るのは初めてで…」

零が苦笑いしながら言った。


「初めて?!」

セレスティアが驚いて言った。


「では、試合ではなく、型を行いましょう。参ります。」

セレスティアが言って木剣で構えた。


零も見様見真似で構えた。


セレスティアがゆっくり上段から零に打ち込んだ。


零はそれをしっかり受けとめた。


『…受けが強い。』

セレスティアは思った。


そこからセレスティアは零の胴を狙った。


また零は受けた。


その時セレスティアの剣は弾かれたように感じた。

『何だ、今のは?弾かれた?』


零はセレスティアと自身の木剣を粒子で囲み、セレスティアの木剣に零の木剣が当たるようにして、木剣の粒子同士が当たったら、零の木剣の粒子がセレスティアの木剣の粒子を少し弾くように命じている。


セレスティアは打ち込みを速く強くし、手数を増やし15分間程休みなく打ち込んだ。


零の木剣はその全てを弾き返した。


「零殿、本当に今日初めて剣を握ったのですか?」

セレスティアが言った。


「はい。初めてです。こんな感じでいいんですか?」

零が息も切らさず言った。


「防御は充分過ぎます。では今度は撃ち込んできてください。」

セレスティアが言った。


「…はい。」

零がゆっくり振り被った。


そこから零の木剣は見えない速さでセレスティアの左肩に打ち下ろされた。


「な?!」

セレスティアの受けは間に合わなかったが、左肩に当たる寸前で止まった。


「あ、大丈夫でしたか?当たらなかったと思うのですが。」

零が言った。


セレスティアは茫然と零を見た。


騎士達からどよめきが起こった。


「見えたか?」

真剣な目でフェスがリラに言った。


「…いや。」

目を細めていたリラが我に帰って言った。


いつの間に来ていたのか、零とセレスティアの打ち込み練習を見ていた騎士長レグルスの眉間が厳しくなった。


「…では、試合形式を行います。」

セレスティアは意を決して言った。


「待てセレスティア。私が零殿の試合の相手をする。」

騎士長が言って訓練場に歩み出た。


見ていた騎士達はざわついた。


「零殿、よろしくお願いする。」

零の前に向かいあって、騎士長レグルスが言った。


「…嫌です。」

零が笑顔で言った。


「…何故だ。」

少し首を傾げて騎士長レグルスが言った。


「騎士長、怖いです。」

零が言った。


「怖い?…」

騎士長レグルスは拍子抜けした。


「そんな顔で来られたら、殺されるんじゃないかと思いますよ。」

零が笑顔のまま騎士長レグルスに言った。


零は剣士ではない。

剣士同士なら「怖い」を理由に試合を拒否するなどありえないが、剣士でない少年なら、その気迫に普通は恐怖する。


気負っていたセレスティアがクスッと笑った。


「そうだな。」

騎士長レグルスも目の奥の殺気が消え、思わず笑った。


「なぜ止めなかった?」

リラがフェスに言った。


「あっ。」

フェスは一瞬戸惑ってリラの顔を見た。


「……お前と同じだ。」

フェスが苦笑いで言った。


「…零様と騎士長の立合いを見たいと思ったか?」

リラが言った。


「あぁ。…護衛失格だ。」

フェスが少し笑いながら言った。


「本当だ。」

リラも苦笑いした。


国王執務室。


「何、満点…」


国王執務室でアルベール国王が宰相フランツからの報告を受けている。


アルベール国王は腕を組んで考え込んだ。


「まさか、零殿が王族の機密まで解答するとは思いませんでした。」

宰相フランツが言った。


「騎士団の件もあったからのぉ、まさかと思って王族の機密を模擬試験の中に入れてみたが…どこからの漏洩だ?」

アルベール国王が聞いた。


「王国図書館の機密結界の中の情報です。」

宰相フランツが答えた。


「図書館の機密結界が破られたのか?」

アルベール国王が聞いた。


「いいえ、そのような報告は受けておりませんし、零殿の模擬試験の後も機密結界を調べさせましたが、侵入された形跡はありませんでした。」

宰相フランツが答えた。


「ではどのようにして…騎士団の内部調査といい、闇ギルドの壊滅といい、シルビアの魔道具といい…零殿の情報網は王国の内務調査局の情報部を上回っていると言う事か。」

アルベール国王が少し笑って言った。


「国王…」

宰相フランツは困惑している。


「そして、あの難度最高位の問題を混ぜた模擬試験で満点をとれる。我が婿殿として想像以上ではないか。」

アルベール国王が笑って言った。


「確かに、零殿を確実に王国の味方にするには、シルビア王女との婚姻はこの上ない策ですが…」

宰相フランツが困った顔で言った。


「零殿はその上優しい。シルビアは必ず幸せになれるわ。王国が守れて娘も幸せになれる。これ以上の事はあるまい?」

アルベール国王は満足顔で言った。


宰相フランツは呆れてもう何も言わなかった。


//////////////

【次回予告 】

学園に通う服装で波乱。


物語を読んでいただきありがとうございます。

これからも面白い物語に育てていきます。


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