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粒子の探索

フェスと別れて森の中を歩く零。


零を左右と後から音もなく尾行する牙狼。


『それにしてもさっきから全く隙だらけで歩いている。なんなんだあの者は。』

左から尾行している牙狼が思ったその時、急に零が立ち止まってその牙狼を見た。


『まずい、見つかったか!まさか、心の声も聞くことができるのか!?』

と左の牙狼は思った。


じっと左の牙狼を見つめる零。


気配を消し身構える左の牙狼。


零が左の牙狼の方へ歩き出した。


『お前達は逃げろ、そしてこの事をフェス様に報告を、絶対にコチラに来るな!』

左の牙狼は、同じく身構えて臨戦態勢を取った右と後の牙狼を念話で制した。


零は左の牙狼と目と鼻の近さで立ち止まった。


「これフキノトウじゃないか!こんな所に生えているなんて、まさか野菜が手に入るとは。天ぷらにするとおいしいんだよなぁ。」

と言いながら、しゃがんで左の牙狼の足元に生えているフキノトウのような植物を数本摘んだ。


左の牙狼は息をとめた。


心臓の音が零に聞こえるのではないかと思うくらい高鳴った。

生きた心地がしなかった。


右と後の牙狼も飛び出す寸前だった。


「よし、これだけあれば良いか。早く帰って昼食にしよう。」


と言ってそのまま飛び上がって、川辺のログハウスの方へ飛んでいった。


『とっ、飛んだ!?』

残された左の牙狼は頭の中で呟き、その場にへたり込みハァハァと息を切らした。


右と後の牙狼は飛び出て左の牙狼へ駆け寄った。


『⋯あの者は、一体何なのだ。』

3頭の牙狼は唖然としながら、飛んで行く零を見送って頭の中で呟いた。


ログハウスに戻った零は、昼食を取った。


粒子で川魚を捕獲し絞めて、粒子で内蔵を取り出し、魚体の周辺で粒子を振動させて遠赤外線状態を作って焼いた。


そこに先ほど採ってきたフキノトウをお湯で茹でて、細かく切って焼き魚と食べた。


「焼き魚だけでなくフキノトウを添えるだけで若干味を変えれるなぁ。」

零は笑顔で言った。


色々工夫しながらキャンプの様な時間を楽しんでいる。


昼食後、昨夜魔豹族が切り倒した大木を片付ける事にした。


「切り倒さた大木は薪にしよう。」


大木を粒子で薪のサイズに切り刻んだ。


「このままでは水分が多くて薪にするには1年くらい乾燥させないと駄目だからなぁ。粒子で乾燥させてみるか。」

『粒子、木の水分を取り除いて。』


粒子が切り立ての薪の水分を取り除いた。


一瞬で乾燥が終わり、薪が山のように積み上がった。


薪を作った後、風呂を作った。


粒子で浴槽を作って薪で湯を沸かせるようにした。


『上手くできたかどうか、試しに入ってみよう。』


粒子で川の水から不純物を取り除き、粒子の風呂桶に入れ、薪で炊いた。


湯がいい感じになったので入浴する事にした。


「いいね〜キャンプで露天風呂なんて最高だ。」


夕方とは言え明るいうちから風呂に入るのは旅行気分だ。


湯船でふんわりしてると、突然ステータス画面が開いた。


「えっ、入浴中にステータス画面って。何かあるの?」


粒子の能力の無限分散は光ったままで継続中のようだが、項目欄に新たに【探索】が加わった。


『探索?何だこれは?⋯分からないから使ってみるか。粒子、探索。』


目の前にタブレットの様な粒子の画面が現れて、風呂に入っている自分を上から撮影しているような映像と周辺の地図が映し出された。


「えっ何だこれ。」


声もエコーのように聞こえたので、映像だけでなく集音もしている。


「俺が映ってる。周辺の地図も映し出されてる。」


撮影している位置の辺りを見あげた。


当然何もない。


しかし何もないように見えて空中にはナノサイズの粒子があるのだ。


地図の方には黄色い点が点滅している。


「この黄色い点は何だ?」


黄色い点を押すと零自身のアップ画像が映し出された。


「おーこれも便利。」


地図に零自身の位置を示す事が出来るのだ。


まるでマップのGPSの様に。


「もしかして場所の指定も出来る?」


前世のインターネットの地図の様に、場所を指定して地図に表示出来るのか。


『粒子、ここから500メートル西を上空から撮影。』


目の前の粒子画面に森の上空からの様子が映し出され、地図上に赤い点と青い点が点滅している。


「やはりそうか!でもこの赤と青の点は何?」


粒子画面の赤い点を押すと画面が切り替わり、虎の魔獣の最強種の炎虎が映し出された。


「とっ、虎?」


炎虎は足音を忍ばせ鹿の魔物の迅鹿を狙っているようだ。


どうやら赤や青の点は周辺に生体がいる事を示しているようで、赤は危険生体、青は安全生体といったところか。


零は湯の中で歓喜の声を上げた。


「これも凄い能力だ。居ながらにして色々な情報を得られる。ナビみたいな。粒子、チート過ぎ。⋯ところでこの怖そうな虎は何?」


炎虎は狙いを定めたようだ。


「あれ、鹿、やばいんじゃない?」


『粒子、虎の動きを止めて。』


と命じたが、炎虎に変化はない。


「あれ?虎が固まらない。」


炎虎は一歩一歩迅鹿に近づいている。


『粒子、お湯を少し浮かせて。』

零が頭の中で命じると一握りのお湯が宙に浮いた。


「浮いたなぁ」

零が呟いた。


「そうか、遠い場所では粒子を操れないと言う事か。」


炎虎が襲いかかる寸前、迅鹿の横の草むらがガサガサ音を立てた。


それで迅鹿は炎虎の方を見た。


炎虎に気づいた迅鹿が俊敏に逃げた。


炎虎は迅鹿を追った。


炎虎と迅鹿はどうなるのか、思わず零は粒子に命じた。

『粒子、虎を追って撮影。』


炎虎の後から、両者を追う映像が粒子画面に映し出される。

「うぉー迫力の映像!!動物自然系の番組でもこんなの観た事ない!」


迅鹿は左右に飛ぶ様に走り、炎虎を振り切った。


悔しげに唸る炎虎だけが画面に残った。


「何とか鹿は助かったなぁ。良かった〜。んっ?でも今は魚ばかりだけど、俺もあの虎と同じように鹿とか食べる様になるのでは?」


目を閉じて湯船につかる零。


今度は別の場所を粒子の探索能力で観た。


「本当に凄い能力だ。」


夢中になりすぎた零は長風呂すぎてのぼせた。

【次回予告 】

魔豹族リラが零に挑む。


物語を読んでいただきありがとうございます。

これからも面白い物語に育てていきます。


「面白い!!」「続きが読みたい!!」と思っていただけたら、

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また読んでもらえることを楽しみにしています。


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