塩の影響
零達は銭湯から孤児院に行った。
孤児院に行くとシスターマリアが執務室から飛び出して来た。
「使徒様、お久しぶりです。お越し頂いてありがとうございます。」
手を合わせて跪いて目に涙を溜めてシスターマリアが言った。
「あ〜、使徒様じゃないですから。今日は夕飯を作ってもらおうかと思ってきました。」
零が言った。
零達はそのまま調理場へ行った。
零は粒子の異空間保存からオーク肉の細切れを50キロ程出して子供達の分の調理をお願いした。
メニューは玉ねぎの薄切りを炒め、赤ワインで煮詰めて、オークの細切れと蜂蜜と白銀の塩を加え、煮込んだ一品。
零が自分達の分を作って、作り方を調理担当者達に見せた。
出来た料理を零とリラがテーブルに持って来た。
早速フェスが食べた。
「主!これも美味いです!」
フェスが笑顔で言った。
「でしょ〜」
零が嬉しそうに言った。
シスターマリアは女神と零に祈っている。
「セレスティアさんも一緒にどうですか。」
離れたテーブルで様子を見ていたセレスティアに零が言った。
セレスティアはちょっと迷ったが、零達のテーブルについた。
「この孤児院の責任者のシスターマリアさんです。シスター、王宮の近衛騎士のセレスティアさんです。」
零が紹介した。
セレスティアは貴族の身分の騎士なので、シスターマリアは仰天してオロオロした。
「シスター、私の身分は気にしないでください。」
セレスティアが言った。
「何だ、お前も食うのか。」
フェスが食べながらセレスティアを睨んで言った。
「ああ、頂こうと思う。零殿、ありがたく頂戴する。」
セレスティアはそう言って食べた。
「美味しい!」
セレスティアは目を丸くして言った。
「そうだろー!」
フェスが笑顔で自慢気に言った。
「お前が作ったわけではないだろう。」
リラが言った。
零とシスターマリアが笑った。
「こんな美味しい料理も作れるなんて、零殿は本当に不思議な人だ。」
セレスティアが言った。
「零殿、あの白銀の塩はどのように作っているのですか?」
食事が終わってセレスティアが零に聞いた。
「えっ、はぁ、まぁそれは、色々と…」
零は困り顔ではぐらかそうとする。
「零殿、あの塩が国中で作れれば、多くの人がこの様な美味しい料理が食べられる。その方が王国の為になるのではないか。」
セレスティアが言った。
「う〜ん、王国の為になるかな〜」
零が言った。
「えっ?」
セレスティアが不思議そうな顔をした。
「確かに多くの人が良い塩を使えるって事は良い事なのですが…」
零はちょっと間を開けた。
「塩の製法を皆が知れば、多くの人が塩を作り出し、王国だけでなく、帝国や共和国等にも製法が流出します。」
零が言った。
「…確かに。」
セレスティアが言った。
「そうしたら塩は市場に大量に出回り、値段が下がり、儲けが出なくなります。」
零が言った。
「塩の値段?儲け…」
騎士であるセレスティアは商いのことなので、あまり理解できず呟いた。
「はい。将来的にはセレスティアさんの言う様に、多くの人が美味しい塩を使えるようになるべきかと思いますが、今はこの領都の孤児や貧困者を支援する為に、塩の儲けを使いたいと思うのです。」
零が言った。
セレスティアは零の話が理解できるようになってきた。
「そしてこの領地は王国の直轄領になったのですから、塩をここだけで管理した方が、王国の利益になると思うのです。」
零が言った。
セレスティアは唖然としている。
リラもシスターマリアも驚いた顔をしている。
フェスはポカンとしている。
「零殿はそこまで考えておられるのか、商いの事、いや政にまで精通しておられる。…まさか本当に大賢者なのか?」
セレスティアが真顔で言った。
リラは大きく頷いた。
「いや、大賢者じゃないですよ。」
零が笑って言った。
「では、塩を作る魔法具は何故魔法鑑定できないのか、教えて頂けないか。」
これはセレスティアにとっての核心を突いた質問だ。
「それは…教えません。それを教えると対処されて、また突然騎士団に襲われた時、殺されてしまいますから。」
零が笑いながらセレスティアに言った。
「あ、あれは、その、も、申し訳なかった。」
セレスティアが口籠りながら言った。
零が何かに反応した。
フェスとリラの目の色が変わった。
セレスティアはそんな零達を見て目つきが変わった。
「セレスティアさん、手伝ってほしい事があるのですが。」
零が真顔で言った。
「何でしょう。」
セレスティアは用心深く言った。
「ここでは何ですので外に出ましょう。」
零が言って席を立って外に出た。
フェスとリラも後に続いた。
セレスティアは用心深く見守って席を立って後に続いた。
「王都にはシルビア王女以外にも魔族化で苦しんでいる人達がいます。」
零が歩きながらセレスティアに言った。
「なっ、それは本当ですか?」
セレスティアが驚いて言った。
「はい。今からその人達を助けに行きます。手伝ってほしいんです。」
零が言った。
「…わかりました。それが本当なら、本来私達騎士団が成すべき事ですから。」
セレスティアが言った。
零達とセレスティアは人がいない所まで来た。
「セレスティアさん、今から王都のマロウ商会の本店の地下に転移します。魔族もいるので声を出さないで下さいね。」
零が言って粒子で転移した。
次の瞬間、セレスティアは地下の空洞の様な所にいた。
左右には人が入れられている檻がある。
100人程の人達の体の一部が魔族化した人達がいる。
体の魔族化の進行に苦しくて声を上げている人も数人いる。
セレスティアの目の前に十数体の魔族兵が檻を見張っている。
セレスティアは剣に手をやった。
【次回予告 】
零達が王都騎士団と接触。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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