ボルダーの願い
「零様!おかえりなさい。」
守備隊隊長のイグニスが駆け寄りながら言った。
後からギルド長のカトレアも来た。
「よくご無事で。」
ギルド長カトレアが言った。
ギルド長カトレアと隊長イグニスは協力して魔族化の被害者達を保護していたので、領都での事件を知っている。
「はい。色々とありがとうございます。」
零が言った。
「零殿、よろしければ詳しくお話を。」
ギルド長カトレアが言った。
「はい。その説明をする為にきました。」
零が言った。
零の家に村長、副村長、ギルド長、守備隊隊長が集まった。
零は男爵が魔族と組んで貧困者に魔族化の実験をしていた事、領都兵団と魔王軍が戦って魔王軍を撃退した事を詳しく話した。
「そ、そんな事が…」
村長グスタフが驚愕して言った。
ギルド長カトレアと隊長イグニスも魔王軍との戦争にまで発展するとは思ってなかったので驚いていた。
「それで領都の被害はどの程度なのですか?」
副村長のレイモンが聞いた。
「城門等の被害はありましたけど、僕の仲間が直したので、実質被害はありません。」
零が言った。
「魔王軍1500体を相手にどこにも被害がなく、死者もなく無傷だったというのですか?」
村長グスタフが驚いて言った。
「はい。僕の仲間が頑張ってくれたおかげです。」
零が言った。
「フェス様とリラ様のお2人で魔王軍を倒したのですか!」
隊長イグニスが歓喜の目で言った。
「ええ、まあ。2人だけではなく、もう1人、魔導士クノスバも…」
零がちょっと口籠って言った。
「魔導士クノスバ…様?」
隊長イグニスが不思議そうに言った。
「零様にはフェス様、リラ様以外に他にも護衛の方がおられるのですか。」
村長グスタフが聞いた。
「はあ…魔導士クノスバ、ここに来て。」
零が言うと床に黒い穴が開いて、下からクノスバの傀儡が上がって来た。
「我は魔導士クノスバ。零様の忠実な下僕。」
傀儡のクノスバが言った。
「なっ、何ですか!これは!?」
村長達4人は驚いて立ち上がった。
「大丈夫ですよ。お座り下さい。」
零が言った。
しかし村長達4人が今度は不思議そうな顔をしている。
零がクノスバを振り返ると、リラがクノスバを前から後からジロジロ見ている。
フェスは人差指でクノスバの頭をつついている。
『フェス、やめなさい。リラもジロジロ見ない。』
零が念話で2人を止めた。
零の報告が終わって村長達は帰っていった。
零達は2日間村で過ごして領都に戻った。
領都に戻ると解体作業は全て終わっていた。
「解体作業に1万人も集まったんですか!?」
筆頭財務官バルトロの説明を聞いて零は驚いた。
貧困者は最終的に1万人程になった。
「はい。彼らはこの後も孤児院周辺の開発地域で働く事を望んでいます。」
筆頭財務官バルトロが言った。
貧困者達は衣食住のある所で働ける事に大喜びしていた。
「じゃ、皆が宿泊する家を作りましょう。」
と言って零は新たに5階建ての宿泊施設を100棟作った。
領都の中に新たな町が出来た。
零達は宿泊施設を作った後、肉の取り分だけ先に貰い、又魔王軍残党の見回りに行くと言って、森の深域に粒子で転移し、魔豹族や牙狼族と、バーベキューのステーキで大盛り上がりして食べた。
零達は又領都に戻って、筆頭財務官バルトロに魔王軍の素材の買取価格の白金貨3枚3000万円を受け取った。
解体作業に必要だった運搬費用、解体費用、人件費等、諸々の費用の合計白金貨7枚7000万円が差し引かれている。
純粋な素材の買取価格の七割が経費になっている。
「さすがですね、バルトロさん。」
筆頭財務官バルトロの商魂に零は苦笑いしながら言った。
「お褒めに預かり光栄です。」
筆頭財務官バルトロは満面の笑みで言った。
『まったく、金の亡者め。』
フェスが苦い顔をしながら念話で呟いた。
『こ奴の頭の中には金貨しかないのではと思ってしまいます。』
リラが念話で零に伝えた。
零はまた苦笑いした。
「バルトロさん、孤児院の周辺の開発の事、くれぐれも働く人を大切にして、商人達は将来安定した彼らから儲けるように、よろしくお願いしますね。」
零が筆頭財務官バルトロに言った。
「ははっ。零様のお教え、肝に銘じて、私も働かせていただきます。」
筆頭財務官バルトロは跪いて言った。
零達はバルドー村と森の深域を行き来する生活に戻った。
領都には時折顔を出した。
そんな生活に戻って半年が過ぎた。
「ここ領都バルセーヌでは白銀の塩と銭湯の治癒の話が広まって、各地から人々が訪れています。」
応接室で執政長官ボルターが零に言った。
領都に顔を出した零達をボルターが出迎えて自身の屋敷に案内した。
「そうですか。人が集まると商いは活発になりますから。」
零が笑顔で言った。
「はい。銭湯の周辺には宿泊施設や飲食店や特産品市場等が出来て栄えています。」
執政長官ボルターも笑顔で言った。
「農地にも作物が育っていましたね。」
零が言った。
「あの荒廃した土地が、予想以上の速さで農地になり、早い周期で農作物が収穫できています。その作物を運ぶ商いや売り買いの店も盛んになっています。」
執政長官ボルダーが言った。
「バルトロさんも張り切っていましたね。」
零が笑顔で言った。
これらの商いに領都の商人達を上手く手配するやりくりで筆頭財務官バルトロの手腕が発揮された。
「バルトロの商いの才には驚くばかりです。」
執政長官ボルダーが笑って言った。
「…ところで、零様に折り入ってお願いがあります。」
執政長官ボルダーが真顔に戻って零に言った。
「零様に私の息子になって頂きたいのです。」
「はっ?何ですか、それは?」
零が目を丸くして聞き返した。
フェスもリラも目が丸くなり、唖然とした。
「零様には是非ともこの領地を治めて頂きたいのです。」
執政長官ボルターが熱い眼差しで言った。
「ちょっと待って下さい。僕は貴族ではないですし、王国の国民ですらないのですよ。」
零が言った。
「はい。ですから私の養子になって頂き、私が引退した後、この領地を治めてほしいのです。」
執政長官ボルターが言った。
【次回予告 】
敵か味方か、新たな出会い。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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