領都終戦
零達は城壁の上でオークや魔族の遺体を検分している領都兵団の様子を見守っていた。
そこに領都兵団を管轄する筆頭執政官ボルターと財務長官バルトロがやって来た。
「零様、この度は領都をお救いくださり、本当にありがとうございます。」
筆頭執政官ボルターが言った。
筆頭財務官バルトロもお礼を言いながら跪いた。
「いえ、魔族を退ける事が出来て良かったです。」
零が筆頭財務官バルトロを見て苦笑いしながら言った。
「兵士はケガ人はあったものの、誰一人戦死者はありませんでした。これは奇跡という以外ありません。」
ボルターが言った。
「そうですか。それは一番良かったです。」
零は笑顔で言った。
「零様、我々領都兵団も戦ったとはいえ、魔族や魔物を倒したのは零様の御付きの方々です。特に魔導士クノスバ様のお力で勝利したと言っても過言ではありません。」
筆頭執政官ボルターが言った。
フェスとリラは少し笑った。
「あっ、あ〜、そうですか。」
零が慌てて言った。
「倒した魔族や魔物の素材の所有権は、我々領都兵団が倒したのであれば領都の財産になるのですが、今回は零様の御付きの方々が倒されたので、九割は零様の物となります。」
筆頭執政官ボルターに指示され、筆頭財務官バルトロが零に説明した。
「はぁ。」
零は気のない返事をした。
「つきましては我が領都に全ての素材をお売りして頂きたいのですが。」
筆頭財務官バルトロが続けて言った。
「はぁ、いいですよ。」
零が言った。
「おお!ありがとうございます。これで領都の財政はまた潤います!」
筆頭執政官ボルターと筆頭財務官バルトロが顔を見合わせて歓喜した。
「魔物の肉は半分頂きたいんですけど。」
零が言った。
「半分?わかりました。半分でよろしいのですか?」
筆頭財務官バルトロが言った。
「はい。」
零が言った。
『500体分くらいあるから、森に帰って皆で焼いて食べよう。』
零が念話でリラとフェスに伝えた。
リラとフェスは笑顔で何度も頷いた。
「バルトロさん、解体作業は貧困者達を集めて行ってもらえませんか。」
零が言った。
「貧困者を!?…しかし集めると言っても…」
筆頭財務官バルトロが難しそうな顔で言った。
筆頭財務官バルトロは零の孤児院周辺開発が始まってから、人を使って貧困者を集めているが、思うように集まらない。
「この町にはまだ15000人程の貧困者がいるはずです。領都中に呼びかけましょう。」
零が言った。
「領都中と言いましても、時間がかかり、魔物の素材が傷んでしまうかと…」
筆頭財務官バルトロは困ったように言った。
「このマイクで呼びかけて下さい。」
零が粒子で作ったマイクを筆頭財務官バルトロに手渡した。
零は上空に領都全域に聞こえるように、粒子でスピーカーを設置して光学迷彩で目視出来ない様にしている。
「まいく?」
筆頭財務官バルトロが不思議そうに言って手渡されたマイクを見た。
「マイクに向かって、貧困者に城門に集まるように言って下さい。」
零が笑顔で言った。
筆頭財務官バルトロは零に言われたようにマイクに向かって貧困者に解体作業に参加するように言った。
筆頭財務官バルトロが言った内容はそのまま領都中に響き渡った。
「これは、なぜこの様な事が!」
筆頭財務官バルトロが驚いて言った。
「零様、これは何の魔法ですか?」
筆頭執政官ボルターが聞いた。
「え〜と、それはまぁ…」
零はあやふやにした。
「じゃ、特設の解体場を作りますね。」
零が言って城壁の前に粒子で10箇所の解体場を作った。
筆頭財務官バルトロはもう見慣れているが、筆頭執政官ボルターは驚いている。
各解体場には10体の魔物が解体出来る様になっている。
筆頭財務官バルトロの呼びかけで貧困者達が城門に集まって来た。
解体作業が始まった。
領都の人達の解体が終わるまでバルドー村に帰る事にした。
筆頭財務官バルトロには森の中で魔族軍の残党の偵察をするから3日は帰らないと伝えた。
領都からバルドー村の手前まで粒子で転移し、そこから歩いて村に入った。
「零様達が帰ってこられたぞ〜」
村の入り口の前で見張りをしていた守備隊員が村の中に向かって叫んだ。
「ただいま。」
村の入り口まで来て零が守備隊員に笑顔で言った。
「零様おかえりなさい。フェス様もリラ様も。」
守備隊員も笑顔で言った。
「ただいま帰りました。」
リラが言った。
フェスは無愛想に頷いただけだった。
入り口の守備隊員の声で村人が集まって来た。
「領主様の所からよくご無事で帰られた。」
「酷い目にあわなかったか?」
皆口々に心配してくれた。
「心配してくれてありがとうございます。大丈夫でしたよ。」
零が笑顔で答えた。
フェスの無愛想な目が少し左に動いた。
その方向から村長の娘リーネとコットが走って来た。
「フェスさん!おかえりなさ〜い!」
手を振りながら村長の娘リーネとコットが走って来たのだが、コットがバランスを崩して転びそうになった。
「あっ!」
フェスが小さく叫んで村人には見えない疾風の様な速さで村長の娘コットに走り寄ってコットが転ぶ前に支えた。
「あぶないではないか。」
と言って村長の娘コットを起こした。
コットは驚いて目を丸くしている。
「コット、大丈夫!?」
村長の娘リーネが言いながらフェスと妹のコットの側に来た。
「うん、大丈夫。フェスさんありがとう。」
コットが笑顔で言った。
「あ、ああ。」
フェスが赤面しながら応えた。
零とリラがフェスの方に歩いて来た。
リラはフェスの様子を見てニヤついている。
「フェスさん、皆さん、おかえりなさい。」
村長の娘リーネとコットが満面の笑顔で言った。
「ただいま。」
零とリラが言った。
フェスは「うん」とだけ無愛想に答えた。
【次回予告 】
ボルドー村で領都での顛末を報告し、再び領都へ。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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