闇ギルド5人
「バルトロさん、子供達には必ず栄養のあるものを食べさせて下さい。そしてしっかり睡眠をとらせてください。子供の間は勉強と成長を最優先してください。それが商いの利益につながりますから。」
零は苦笑いしながら筆頭財務官バルトロに言った。
「わかりました。零様。」
筆頭財務官バルトロが目を輝かせた。
「じゃ僕達はこの町の孤児達を集めて来ますね。」
零は言って外に出た。
フェスとリラも後に続いた。
「シスター、零様が使徒様というのはどういう事です?」
筆頭財務官バルトロのシスターマリアに対する言葉使いも変わった。
「はい、零様は女神の奇跡で危篤状態だった3人の子供達の命を救われたのです。」
シスターマリアは手を合わせて言った。
「何と!零様は女神の奇跡も使われるのか。」
筆頭財務官バルトロが叫んだ。
その時、零達が帰って来た。
「ただいま。2人の孤児を連れてきました。シスター風呂に入れてあげてください。食べ物はこれを食べさせてあげてください。」
零が言って、大量のパンや果物を置いた。
筆頭財務官バルトロとシスターマリアは驚いた。
「も、もうお帰りになったのですか?」
筆頭財務官バルトロが言った。
「はい、ではまた行ってきます。」
零が言った。
この日はもう夕方だったので20人程しか連れてこれなかった。
翌日は約200人の孤児達を連れて来た。
大人の貧困者も約100人連れて来た。
子供の数が多いので孤児院を増設し、大人の貧困者の宿泊所も粒子で作った。
「てんてこ舞いになってるね。」
孤児院や貧困者達の施設の周辺で差配する筆頭財務官バルトロやその部下達を他人事の様に見ていた零が笑顔で言った。
「はい。それにしてもあ奴の指図は的確ですね。」
リラが筆頭財務官バルトロの事を言った。
「下等な者にも一つくらい取り柄があるものだ。」
フェスが言った。
零達3人は笑った。
その日の夕刻。
町を出て森を歩く5人連れの姿があった。
5人はセドリック男爵の命令でバルドー村に向かう一団である。
目的は村長の娘のリーネとコットの誘拐。
セドリック男爵は村への使者・筆頭財務官バルトロからの報告で零達と村長の娘達の関係を知った。
セドリック男爵は零達の見えない脅威に備える為、人質を取ることにした。
汚れ仕事を請け負う闇ギルドに村長の娘達の誘拐を依頼した。
領主からの依頼なので、闇ギルドからは精鋭が選ばれた。
「たかだかガキ2人の誘拐に何で俺達が。」
スエンが言った。
スエンは大気を切り裂く真空連斬を使う。
「無駄口はやめろ。」
リーダーのジャッカルが言った。
ジャッカルは相手の影に縛りをかけて自由を奪う影縛凶刃を使う。
ジャッカルの後には巨体のザムラがいる。
ザムラは大剣で相手を地面ごと斬り潰す。
後方には闇魔導士のゾルツと狙撃魔法のネビルがいる。
ゾルツは精神操作や状態異常の闇魔法を得意とする。
ネビルは気配を消して数百メートル離れた所からでも標的の心臓を射抜く。
森の中を歩いていた5人の中のネビルが前方に何者かの気配を察した。
「誰かいるぞ。」
ネビルが言った。
5人は止まった。
森の中から狼牙剣を右手にダラリと下げてフェスがゆっくり現れた。
フェスの姿を見て狙撃魔法のネビルが狙撃位置を確保する為、姿を消した。
巨体のザムラが大剣を構えて前に出た。
スエンがゆっくりザムラの影に隠れた。
「何だ貴様。」
ジャッカルが言った。
「手を出すなよ。」
フェスがリラに言った。
5人には見えないが、リラはすでに4人の背後にいる。
フェスの言葉にジャッカルは首を傾げた。
フェスはゆっくり4人に向かって歩き出した。
目は殺気立って怒りに満ちている。
いつもと違い口元も笑っていない。
前衛のザムラが大剣を上段に振りかぶりながら飛び出し、フェスの頭上に振り下ろした。
フェスは右手の狼牙剣で下からザムラの大剣を弾き飛ばし、返す刀を左手に持ち換え、ザムラの右肩から左腰まで切下げた。
ザムラの巨体は右肩から斜めに二つにされた。
ザムラが大剣を振り下ろしたと同時にスエンが飛び出しフェスの右腰を真空連斬で狙った。
ザムラを二つにしたフェスの狼牙剣が跳ね上がり、スエンの両腕だけが宙に舞った。
「ギャー」
一瞬上がったスエンの叫び声がすぐに消え、鈍い音と共にスエンの首が地面に落ちた。
その時3本の矢が微妙な時間差でフェスに飛来した。
フェスは3本とも素手で掴んだ。
矢を握り折ったフェスが動きを止めた。
フェスの影にいつの間にかジャッカルの放った短剣が刺さっている。
ジャッカルは秘技の影縛凶刃でフェスの動きを止めたのだ。
「やれ、ゾルツ。」
ジャッカルが言った。
ゾルツが状態異常の闇魔法を仕掛けた。
黒い霧の様なものがフェスを包んだ。
ジャッカルの口元が笑った。
「とどめだ!」
言いながらフェスを斬りつけた。
ジャッカルはフェスが打ち下ろした狼牙剣に頭から真二つにされた。
「なっ!?状態異常の魔法も影縛凶刃も効かぬのか?」
と言った後、見えない早さで躍り込んだフェスにゾルツは二つ胴にされた。
離れた場所でフェスに矢を放って一部始終を見ていたネビルは必死の形相で逃げ出した。
「何だあの化け物は、なぜ俺達を…」
後を振り返り、走りながらネビルが言った。
ネビルが前を向いた時、前方にフェスが立っていた。
ネビルは慌てて止まろうとして、躓いて倒れた。
「何処へ行く。」
冷徹な声でフェスが言った。
フェスはゆっくりネビルに近づいて行く。
【次回予告 】
零達がいよいよ領都の問題の本丸に挑む。
物語を読んでいただきありがとうございます。
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