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セドリック男爵

領都バルセーヌは高い城壁に囲まれ、城壁の前には水路が張り巡らされている。


馬車が城門に着くと門番の兵士が駆け寄って来た。


「これは、バルトロ様、よくご無事でお帰りなさいました。」

兵士が言った。


使者バルトロは筆頭財務官で、領地では領主、筆頭秘書官、執政長官に続いて4番目の実力者である。


数人の兵士が並んで馬車を迎え入れた。


街並みは綺麗に整備されている。


道は石畳で3〜4階建ての家が規則的に並んでいる。


『うまく造られてる町だね。』

零が念話でフェスとリラに伝えた。


『…見た目は良いのかもしれませんが…』

リラが念話で伝えて目配せした。


零が見ると薄暗い路地に見窄らしい服で膝を抱えて座っている人影が所々にある。


町中を歩く人々は明るく喋べっている人もいるが、暗い顔で歩いている人も多い。


『同じ人族をあのような目にあわすとは。下等な者共め。』

フェスが怒りの目になって念話で独り言の様に呟いた。


『そうだね、良いのは街並みだけかも。』

零が念話でフェスとリラに伝えた。


馬車は町の中央にある豪華な門の大きな屋敷の敷地の中に入って行った。


屋敷の廊下を兵士達と筆頭財務官バルトロに先導されて零達は案内された。


零達が応接室のような広い部屋に入ると豪華な椅子に男が座っていた。


セドリック男爵である。


その椅子の隣には筆頭秘書官のエレノアが立っている。


セドリック男爵は入室してきた零達を見て一瞬戸惑いを見せた。

『無反応!?鑑定魔法で鑑定できない。』


零達が鑑定防御の魔法を使っていたのなら、鑑定防御という鑑定結果が出たはずだが、何も出ない。


「よ、ようこそ、零殿。座ってくれ。」

気を取り直して、セドリック男爵が笑顔で言った。


「お招きいただいてありがとうございます。」

零が言って席についた。


フェスが口元を笑わせた。


「主、後にネズミがおるようですが。」

と言いながらフェスが座った。


リラも口元が笑っている。


セドリック男爵が雇った隠密の魔法士が零達の背後の壁際に姿を消して立っている。


「男爵にも色々お考えがあるのだろうから、そのままにしておいてあげて。」

と零も少し笑いながら言った。


「い、いや、これはちょっとしたおふざけで、その方等を楽しませようかと思ってな…おい、もういいから部屋を出ていけ。」

セドリック男爵は少し慌てて隠密の魔法士に言った。


零達の背後にいた隠密の魔法士は姿を現して慌てて部屋を出た。


「失礼した。まずはその方等にはバルドー村を魔物から守ってくれた事に礼を言う。」

セドリック男爵が言った。


零が会釈した。


「今回その方等を呼んだのは、この町の発展に力を貸してほしいからだ。」

セドリック男爵が言った。


「発展と言いますと?」

零が聞いた。


「商いに関する事を。最近、戦の為か王国への献上金が増えてきている。この領都自体も戦への備えが必要だ。例えば魔物を倒して素材を領都で売ってくれれば。何でもいいのだ、商いを活発にしてくれ。」

セドリック男爵が言った。


「…わかりました。町の商いを発展させるように尽力します。」

零が言った。


「バルトロ、零殿の手伝いをするように。」

セドリック男爵が筆頭財務官バルトロに言った。


「ははっ。」

筆頭財務官バルトロが頭を低くして答えた。


零達はセドリック男爵との面談を終え、応接室を出て廊下を歩いている。


『零様、なぜ男爵らを始末しなかったのですか。』

リラが念話で零に伝えた。


『最初は始末するつもりだったけど…始末したらこの領地の体制が混乱するだろ。そしたら路地で苦しんでいる人達を助けにくくなるかなと思って。現状なら筆頭財務官バルトロと商いの事を話せば、苦しんでいる人達を何とかできるかと思って。』

と念話で答えた。


『主のご命令があれば、あの女も含めて即座に八つ裂きにしたのですが。』

フェスが念話で零に伝えた。


『やめなさいって。』

零が念話でフェスに伝えた。


零達が部屋を出た後、セドリック男爵と筆頭秘書官エレノアの2人が部屋に残った。


「あの者達は何ですか?私の鑑定魔法に無反応でした。無反応などという事があるのでしょうか…」

セドリック男爵が筆頭秘書官エレノアに言った。


領地では最高権力者のはずのセドリック男爵が部下の筆頭秘書官のエレノアに敬語を使っている。


「私にも分からぬ。私の鑑定魔法にも無反応だった。」

筆頭秘書官エレノアが言った。


「エレノア様の鑑定でも!?」

セドリック男爵が驚いて言った。


「ギルザの独断失態の件では謎が多い。」

筆頭秘書官エレノアが言った。


ギルザとは魔王軍の小隊長でバルドー村の近郊の森で魔物1000体と共に零達に倒された魔族である。


「先日の地下の者共が見張りごと消えた奇妙な事件もある、あ奴らにも油断するな。」

筆頭秘書官エレノアが忌々しそうに言った。


「はい。…それにしても零の護衛のフェスとかいう者、ずっとエレノア様を睨んでいました。エレノア様の正体を見抜いているのでは。」

セドリック男爵が言った。


「ふふ。私の正体を見抜いているからといって、それがなんになる。たかだか魔物を300体倒したぐらいで思い上がりおって。」

筆頭秘書官エレノアが鼻で笑いながら言った。


「念の為、手を打っておきましようか?」

セドリック男爵が不気味に笑いながら言った。


「そうよな。」

筆頭秘書官エレノアも目で笑いながら言った。


【次回予告 】

孤児院を視察。


物語を読んでいただきありがとうございます。

これからも面白い物語に育てていきます。


「面白い!!」「続きが読みたい!!」と思っていただけたら、

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