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ミストウルフ

零達はギルドを出て少し村を歩く事にした。


「どうやら魔族は今夜動くらしい。」


零は粒子の探索で村の近郊の東の森の中にいる魔族の動向を監視していた。


「今夜ですか…」

リラが言った。


「なんなら我が今から行って魔族を始末してきましょうか?」

フェスがニヤリとしながら言った。


「フェスが今行くとフェスがいない事が目立つし、魔族の小隊長を始末した後、魔物達はバラバラに暴れだすだろうし。…魔族も明日にしてくれれば今夜片付けられたのに。」

零が面倒くさそうに言った。


「どうなされます?」

リラが言った。


「う〜ん、しょうがないから今夜奴らが動き出すまで待つか。」


零達が村長の家に向かって歩いているのをつけて来る者がいる。


『零様、なんでしょうか、あれは。』

リラが念話で伝えた。


『うん…』

零が念話で答えて苦笑いした。


村長の娘リーネともう1人村の子供が零達をつけている。


『追っ払いましょうか?』

フェスが念話で伝えた。


『やめなさいって。』

零が念話でフェスを止めた。


「何か用かな?」

零が振り返って子供達に言った。


子供達は木の陰に隠れたが、つけている事がバレたので出てきた。


「お兄ちゃんはケガを治せるの?」

村長の娘リーネが言った。


「えっ?治せるけど。誰かけがしてる人がいるの?」

零が聞いた。


村長の娘リーネが村の子供と顔を合わせた。


「誰にも言わないって約束してくれる?」

村長の娘リーネが言った。


「えっ?…うん、わかった。約束する。」

零が言った。


「じゃあ来て。」

村長の娘リーネが言った。


リーネが零達を案内したのは村のはずれの小屋だった。


小屋の中に入ると、村長の娘コットともう1人の村の子供がいた。


コットは零達に背中を見せて、何かを抱いているようだ。


「誰にも言っちゃだめだよ。」

村長の娘リーネが言って妹のコットの肩に手をやった。


コットは零達の方を向いた。


コットは狼の子供を抱いていた。


フェスの顔が少し笑顔になった。


『主、我が同胞のミストウルフの子供です。』

フェスが零に念話で伝えた。


ミストウルフは魔物の森の浅い地域に生息し、主に植物を食べる。


村長の娘コットが手を離すと、ミストウルフの子供は、はしゃぎながらフェスに近づいた。


フェスも笑顔でミストウルフの子供を抱こうとした。


「ダメよその人は、殺されるわ!」

村長の娘リーネが叫んだ。


村長の娘達はフェスがゴブリンを倒した事を知っているので子供の狼を止めようとした。


「殺さないで!」

村長の娘コットも叫んだ。


「殺さぬわ!!」

フェスがキレて言った。


ミストウルフの子供は歩き方のバランスがとれていない。


どうやら右足をけがしているようだ。


零が粒子で鑑定した。


右足を骨折した後そのままだったので骨が歪んでくっつきかけている状態だった。


「その子、村のはずれで苦しそうに倒れてたの。村の人達に見つかったら殺されてしまうから、私達がここで介抱したの。」

村長の娘リーネが言った。


「足をケガしてるみたいでちゃんと歩けないんだ。」

村の子供が言った。


「その子治る?」

村長の娘コットが涙目で言った。


「治るよ。」

零が言った。


『粒子、治癒。』


ミストウルフの子供の右足の骨は元通りに完治した。


ミストウルフの子供は痛みが取れ、村長の娘リーネやコットや村の子供の周りを喜んで駆け回った。


「うわ〜治った!!」

子供達皆も喜んだ。


「お兄ちゃん、ありがとう。」

子供達が口々に零に言った。


「治って良かったね。」

零が言った。


『主、我が同胞をお救いくださり、ありがとうございます。』

フェスが念話で零に伝えた。


『うん、治って良かった。』

零が念話でフェスに答えた。


子供達とミストウルフの子供は小屋の中で遊んでいる。


零は暫くその様子を見ていた。


「さぁ、この子もよくなったから、森に返してあげようか。」

零が言った。


「えっ!?どうして?」

村長の娘コットが言った。


「この子はミストウルフと言って森に住む魔物なんだ。」

零が言った。


「いやよ!私達と一緒にいるわ。」

村長の娘リーネが強い口調で言った。


「それは…この子も足が治ったから、ここから飛び出して村の人に見つかるかもしれないだろう。」

零が言った。


「この子は良い子だから、おとなしくしてるわ。」

村長の娘リーネが必死に言った。


零は困り顔になった。


「この子にも親や兄弟や仲間がいる。そ奴らはきっとその子の事を心配している。」

フェスが語りかける様に村長の娘リーネに言った。


村長の娘リーネは、はっとしてフェスを見た。


「娘、おまえは父や母や妹や仲間達と、離れ離れになって幸せか?」

フェスが言った。


「そんなの嫌よ。」

涙目になりながら村長の娘リーネが言った。


フェスは暫く村長の娘リーネを見つめた。


「この子を家族や仲間の元に返してやって良いか?」

フェスが静かに言った。


子供達は涙を浮かべて頷いた。


「お前達、この子を救ってくれた事を、この子の家族や仲間達に代わって礼を言う。」

フェスが言って子供達に頭を下げた。


零とリラは優しい笑顔でそれを見ていた。


零達と子供達は森の入り口手前まで来た。


フェスがミストウルフの子供を抱いている。


『よいか、お前を救ったのはあの村の子供達だ。お前が大きくなって力をつけたら、あの者達を助けてやれ。この村で牙狼族のフェスと会ったと皆に言うのだ。』

フェスがミストウルフの子供に念話で伝えた。


ミストウルフの子供はワウッと吠えて応えた。


フェスはミストウルフの子供を離した。


ミストウルフの子供は森に向かって駆け出して、すぐ振り返った。


「元気でね!」

「もうケガしたらダメだよ。」

子供達は口々に言った。


又森に向かって駆け出したミストウルフの子供は森の中にスーッと消えて行った。


零が粒子でミストウルフの子供をその群に転移させた。


【次回予告 】

いよいよ魔王軍・魔族と戦う。


物語を読んでいただきありがとうございます。

これからも面白い物語に育てていきます。


「面白い!!」「続きが読みたい!!」と思っていただけたら、

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また読んでもらえることを楽しみにしています。

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