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魔族

牙狼族の集落で夕食後くつろいでいると防犯カメラの粒子画面が零の前に現れた。


地図の複数の赤い点が通常より激しく点滅している。


映像に魔物でもなく獣人でもない、見たことのない種族が映っている。


『粒子、鑑定。』


鑑定結果

魔族・デンドロ

ランク・C

体力・1000/1000

魔力・800/800

剣技・700/700

備考・魔王軍偵察部隊所属。魔力探知能力。隠密能力。…以下省略。


『…全部で5人、魔族の偵察隊か。偵察…だとすればワイバーンの件の可能性が高いなぁ。粒子、5人全員を監視して、奴らの会話を聞かせて。これ以上奴らがここに近づいて来たり、他にも魔族がいたら教えて。』


「リラ、魔族ってよく森に来るの?」

零が聞いた。


「魔族ですか?魔族は森の深域には入ってきません。大昔、魔族が森の深域に攻撃を仕掛けてきたのですが、私達魔物が魔族を撃退して、それ以来奴らを森の深域で見ることはありません。」

リラが言った。


「そうか。…フェス、ちょっと避難所や周辺を変えるよ。」

零は言いながら避難所に歩いて行った。


避難所の前で粒子に命じた。

『粒子、避難所や周辺の焼け跡を偽装して、この周辺のワイバーンの魔力残滓だけを消して。』


避難所が大きな岩に変わった。


岩は避難所を包み込む大きさで、草や苔なども生えていて、昔からあるように周辺に溶け込んでいる。


ワイバーンのブレスによる周辺の焼け跡も全て偽装された。


「なんだこれは!?」

避難所や周辺の変わりように牙狼達は口々に驚きの声をあげた。

牙狼達の中には岩に上る牙狼もいる。


「この岩は本物の岩です。」

岩の上の牙狼達が叫んだ。


「焦げた臭いや、ワイバーンの魔力の残滓も消えた。」

フェスが言った。


フェスの言葉にリラも頷いた。


「リラ、フェス、ザッハちょっと集まって。」

零が言うと3人が来て片膝をついた。


「いや、片膝つかなくていいから。…実は魔族がこの辺りに来ているみたい。」

零が言った。


「魔族ですか?」

フェスが不思議そうに言った。


「うん、まだはっきりはわからないけど、ワイバーンの件だと思う。」

零が言った。


「なっ!?」

フェスの目が一気に怒りモードになり、副族長ザッハの目に殺気が走った。


「ではあのワイバーンは魔族が操って、ここを、我が牙狼の集落を襲わせたのですか!?」

フェスが怒りの目のまま言った。


「そこまではまだわからない。でも魔族の偵察隊の5人が、東の方角にいることは確かだ。」

零が言った。


リラは驚いた。


リラやフェスにも察しえない魔族の気配を零が察することは、その能力を考えると納得できるが、姿が見えない魔族の性質や人数まで把握することなど、リラの知る限りの魔法では成しえない。


「その5人を皆殺しにするお許しを。」

フェスが殺気を込めて言った。


副族長ザッハも強く頷いた。



ここで零の粒子画面が現れた。


森の中に3人の魔族の偵察兵が集まっている。


「この辺りまでワイバーンの魔力の残滓が感じられる。」

魔族の偵察兵の一人が言った。


『やはりワイバーンを差し向けたのは魔族か。』



「我が主、何卒お許しを。」

フェスがまた言った。


「フェス、聞いて。あの偵察隊の5人をフェスが全滅させるのは簡単だと思う。でもそんなことをしたら、偵察隊を殺された魔族は牙狼の集落に軍を差し向けることになる。僕達と魔族の戦争になる。」


零の話をフェスが遮った。


「望むところです!」

フェスが意気込んで言った。


「戦争になったら勝敗に関係なく、僕達にも被害者は出る。この集落も攻撃を受けて、牙狼の子供たちが被害を受ける。例え戦いに勝っても、そんなの僕は嫌だ。」

言いながら零は避難所の岩の周辺を駆け回る子供たちを見た。


フェスもハッとして子供たちを見た。


ワイバーンの襲撃を受けた時、フェスが最初に命じたのは子供たちを逃がすことだった。


「今回ワイバーンの襲撃で、牙狼の皆は傷つけられた。絶対許すことはできない。でも運よく誰も死んでない。」

フェスと副族長ザッハに語りかけるように零が言った。


フェスも副族長ザッハも目から怒りが消えていった。


「フェス、ザッハ、難しいことだけど戦わないことで了承してくれないかなあ?」

零が言った。


「勿体ないお言葉、我が主のお心わかりました。我ら牙狼族の為にそこまで考えていただき、本当にありがとうございます。」

フェスは涙を浮かべながら言った。


「主のお心のままに。」

副族長ザッハが言った。


『もしやこの方は賢者どころか、大賢者なのでは。』

リラは心の中でつぶやいた。


『ふー、良かった。戦かったら、勝っても負けても、死者なんかが出て、嫌だからなぁ。納得してくれてよかった。』

と零は思った。


「フェス、ザッハ、この事は牙狼の皆には言わないようにして。普段の様に過ごしてもらうから。」

零がフェスと副族長ザッハに言った。


「しかし、それでは皆が魔族の危険にさらされるのでは。」

副族長ザッハが言った。


「大丈夫。皆は僕が守るから。」

零が言った。


『粒子、ここにいる3人を粒子で囲んで守って。』


フェス、リラ、副族長ザッハの3人が人型の粒子に囲まれた。


「今、3人に一時的に特殊な防御の力を与えた。牙狼の牙を折る、魔豹の大斧にヒビを入れる、その硬さで身を守る力だ。この力を牙狼の皆に与える。これで万一、魔族の偵察兵に襲われる事があってもその身は守られるから。」

零が言った。


リラもフェスも副族長ザッハも自身の身に何か変化があった様には思えず、不思議そうに零を見た。


『うーん、そうなんだよねぇ、変化は感じないんだよね~』


「さぁ、皆を集めて。」

と零が言ってフェスを見たら、フェスが短剣で自分の腕を切った。


「ええ〜、フェス何してんの〜!」

零が慌てて言ったが、フェスの腕にはキズはない。


「お〜主、痛くありませんし、キズもありません!!」

とフェスが言った。


副族長ザッハも同じ事をした。

同じく痛みもキズもない。


「これは何とした事か。」

副族長ザッハも言った。


「ちょっと、やめなさいって!」

零が副族長ザッハにも言って、リラを見た。


リラも短剣を握っていた。


「リラ!やめなさい!!」

零は慌てて言ってリラを止めた。


「はぁ…」

とリラは言って未練を残した。


「あのね、これは一時的な防御だから、切られても大丈夫なんて癖になったら、この防御が解除された時、酷い事になるから。」

零が言った。


「では、皆を集めます。」

副族長ザッハが言った。


「ザッハ、この防御の事、皆には言わないように。」

零が言った。


副族長ザッハは振り返って零に「わかりました。」と言ってから皆を集めに行った。


集まった牙狼達を零は粒子で囲んだ。


『これで大丈夫だろう。』


この日の夜、魔族の偵察兵デンドロが牙狼の集落に来た。


事前に零とフェスとリラと副族長ザッハの4人は粒子の光学迷彩で姿を隠していた。


リラとフェスは既にログハウスの光学迷彩を見ているので驚かなかったが、副族長ザッハは自身や他の3人の体が見えなくなった事に大騒ぎした。


零の前に粒子画面が現れ、魔族の接近を伝えた。


『来たよ。』

零は3人に念話で伝えた。


魔族の偵察兵デンドロは隠密の魔法を使っているので、気配も消していて肉眼では見えない。


しかし零の粒子画面にはしっかり映っている。


フェスは臭いで魔族を感じとった。


『魔族がいる。』


フェスは念話で副族長ザッハに伝えた。

副族長ザッハは頷いた。


リラは目で空気の揺らぎと微かな魔力を感じて、魔族がいる事を確信した。


魔族の偵察兵デンドロは辺りに気配の無い事を確認し、隠密を解いて姿を見せた。


姿を見せても気配の変化はないので、誰もいないと確信した。


暫くして歩き出した。


避難所の岩の前で止まった。


フェスの目が鋭く光った。


偵察兵デンドロは避難所の岩の辺りを伺っているようだ。


「ワイバーンの魔力の残滓は完全に消えたか…」


偵察兵デンドロは呟いて振り返り、来た方へ帰りだした。


零は粒子画面で魔族の偵察兵デンドロが遠く離れたのを確認してから、3人の光学迷彩を解除した。


「魔族の偵察兵は行ってしまいました。」

リラが言った。


「そうだね。もうこれで大丈夫だ。」

零が言ってホッとした。


「…主。…動けません。」

フェスが苦しそうに言った。


「あ〜ごめん。魔族が避難所の前で止まった時、襲いかかろうとしたから、固めたんだ。」

と零は言いながら、フェスを解放した。


「あの魔族、あれ以上近づいたら噛み殺してやろうかと。」

フェスが言った。


「そういうの、やめなさいって。」

零が少し笑いながら言った。


「これで偵察兵は魔王軍に、ここには何もない事を報告するだろうから、ここは安全地帯になった。じゃ皆の防御を解除するよ。」

零は言いながら牙狼達の粒子の防御を解除した。

【次回予告 】

粒子に新たな能力が追加される。

いよいよ異世界の人間との接触。


物語を読んでいただきありがとうございます。

これからも面白い物語に育てていきます。


「面白い!!」「続きが読みたい!!」と思っていただけたら、

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また読んでもらえることを楽しみにしています。

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