真実
筆頭秘書官ディゴラスの顔色も真青になった。
「ベリラスさんには是非とも王宮でウライアの民の為に働いて頂きたいのです。」
零が言った。
「零国王!あなたは一体何を、何を知っておられるのか!?」
ギルド本部長ダイラルクが動揺しながら言った。
「はい。では僕の知っている事を話します。ダイラルクさんのご子息ベリラスさんは、今は亡きウライアのレンドスキ前国王とイタリウス帝国皇帝の妹ルシーナ王妃との忘れ形見です。」
零が言った。
「え、レンドスキ前国王の忘れ形見はジルーラス皇太子では!?」
セレスティアが言った。
ウライア前々国王が急死し、突然紛争が起こり、若かったウライア前国王レンドスキは共和国ケンデラル子爵に騙され国外逃亡させられた。
妻の帝国皇帝の妹ルシーナ王妃と1歳の皇太子ウライラスは戦火に巻き込まれ亡くなったとされていた。
レンドスキ前国王はケンデラル子爵に保護され、その後ケンデラル子爵の妹ラテシアと再婚し、ジルーラス皇太子を授かった。
レンドスキ前国王はジルーラス皇太子が生まれてすぐ病死した。
ジルーラス皇太子はモフトネロ領のケンデラル子爵に庇護されている。
「ああ、ジルーラスさんは偽の皇太子で、ケンデラル子爵の妹のラテシアさんとケンデラル子爵の部下の今は筆頭財務官サラノスさんの子供です。」
零は粒子の探索と鑑定で調べた事を説明した。
「何ですって!」
そんな事を知らなかったギルド本部長ダイラルクが驚いて叫んだ。
「ダイラルクさんの本名はブライレルさんで、ウライアの元近衛騎士です。そちらの筆頭秘書官ディゴラスさんの本名はサンゴラスさんでウライアの元調査局長です。ご子息ベリラスさんの本名はウライラス皇太子です。」
零が言った。
「零国王、その話は本当なのですか!本当ならとんでもない事なのですよ!」
セレスティアが叫んだ。
「本当の事です。」
零が言ってダイラルクの顔を見た。
「証拠は何処にあるのです?」
本部長ダイラルクが真青な顔で言葉を絞り出した。
「証拠は僕の手元にはありません。ダイラルクさんがウライア前王家の短剣を持っておられます。僕はそれを手に入れるつもりもありません。僕の知っている真実だけを話してます。だからこの事を何処かに公表する気はありません。公表したら、多分幸せになる人はいなくて、不幸になる人がたくさんになるだろうから。」
零は淡々と言った。
皆は沈黙した。
「ベリラスをウライアで働かせる話、時間をかけて、ベリラスとも話し合って決めさせてもらって良いだろうか。」
本部長ダイラルクは振り絞るように言った。
「はい。ただベリラスさんの承諾が得られたら、この事をゼノヒィス皇帝にお話しようかと思います。」
零は言った。
「ゼノヒィス皇帝に!?」
本部長ダイラルクが驚いて言った。
「はい。ベリラスさんはゼノヒィス皇帝の甥御さんになるのですから。」
零は言った。
本部長ダイラルクは暫く零を見た。
「零国王、あなたはわかっておられない。ゼノヒィス皇帝がこの事を知ったら、アルベール国王がこの事を知ったら、ウライア前王家の血を持つ者が王宮に入ったら、その後何が起こるか。ウライアの戦争がなぜおこったのか。あなたは何もわかっておられない。」
本部長ダイラルクは沈痛な面持ちで言った。
「はい。僕にはわかりません。僕は仲間やウライアの民と楽しく暮らしたいだけです。実は王位に固執する気はあまりないんです。ははは…」
「な、何を言われる!零国王!」
セレスティアが慌てて言った。
「主〜王様が良いではありませんか〜」
フェスが残念そうに言った。
「僕はフェスとリラと皆との暮らしが一番好きなんだ。」
零が苦笑いで言った。
「主〜」
「零様〜」
フェスとリラが涙を溜めて言った。
「何言ってんのよ!シルビア王女を悲しませたら、ただじゃおかないから!」
カタリナが怒って言った。
「はい、そうですよね。ははは。」
零は苦笑いした。
本部長ダイラルクが呆れた顔で零を見ている。
「ダイラルクさん、じゃ1週間で返事をいただけますか。色々あって、あまり長く待てなくて。転移門を作っていきますから、それでいつでもウライアに遊びに来てください。大歓迎ですから。」
零が言った。
「…わかりました。」
本部長ダイラルクが複雑な顔で答えた。
イタリウス帝国ニスラウス領。
帝国ニスラウス領は共和国のギルリス領と隣接している。
帝国軍はギルリス領の侵攻の目的でニスラウス領に3万人の兵を集結させていた。
帝国軍のニスラウス仮設司令陣。
「零国王が教会と教会派の5ヶ国と同盟を結ばれた。」
副将軍ベリンラルが言った。
「本当ですか!?零国王の動きは皇帝の予想以上に早い。これ以上共和国との同盟を増やされる前に侵攻を急がねば。」
大隊長ドラストラスが言った。
副将軍ベリンラルが頷いた。
「零国王は皇帝の真意を知っておられるのですか?」
大隊長ドラストラスが聞いた。
「わからぬ。零国王は底知れぬお方だ。知っているのやも…しかし我らは皇帝のお気持ちにお応えするまで。」
副将軍ベリンラルが言った。
帝国軍の共和国への進軍が開始された。
【次回予告 】
皇帝の思いと戦争。
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