正義の葛藤(6)
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麻布田市、高校。獅蛇京介は出席確認を取っていた。
「次、火野龍巳君」
そう言うと返事の代わりに龍巳は手を挙げてくる。普段なら「はい」と返事する学生なのだが、ここのところ不愛想に手を挙げるのみ。
あれから一時期、少し顔がよくなったかと思ったがまた、むしろより思いつめたような顔をしている気がする。授業中も上の空。窓から外を眺めている時間が長い。だが話しかけたところで「大丈夫です」の一点張り。前のように話しかけてくる気配すらない。
だからこそ、出席確認を終えると別の生徒に声をかけた。
「一夜君、ちょっといいですか?」
誰もいないところに呼び出すと秋角と向き合う。
「火野君の友人として聞きます。彼、最近どうです?」
すると秋角は驚いた様子を見せたが、やがて深刻そうに頷く。
「やっぱり、ちょっと変ですよね。特に最近は何か話しかけても微妙な返事しか返らないし、一緒に帰る事も無くなりましたね」
やはり、友人の眼からしてもそう映るらしい。
「何か心当たりはありませんか?」
すると秋角は深く考え始め、「心当たりか……」と言いながら頷く。
ないのだろうか、まあ、あったりすれば、二人で解決できているのかもしれないか。
そう思って、秋角を解放しようとしたが、秋角はポツリと口を動かした。
「最近、化物の事件、増えていますよね。何故かニュースになる事はないんですけど」
化物、自分もそれに入るが勿論表には出さず。
「僕は一回だけですけど。龍巳は既に二回も実際に化物を見たらしく、そのショックがやっぱり響いているのかもしれません。無理もないですよね。あんなのを何回も見れば」
「そ……そうです……か」
正直、返事に困った。もし、それが本当だとすれば半分は自分のせいで生徒を苦しめていると言う事になるのだ。だが、かといってこれをやめる訳にはいかない。だとすれば、やるべきことは一つ。彼らとの戦いに一刻も早く終止符を打つこと。
「一夜君、凄く参考になりました。勿論、君自身も大変でしょうけど、友人の事を」
「ええ、分かってます。僕にとってあいつは大切な友ですから」
秋角の肩を優しく包み込むと、教室に送り込んだ。
ならばまずここ数日、空を幾度となく飛び回っている赤いアウディーターをどうにかしなければならない。ただでさえ恐怖を与える化物の存在を飛躍的に印象付け、恐怖感を余計にプラスするだけだ。取りあえず、奴の事を付けてみる所から始めると決めた。




