正義の葛藤(5)
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麻布田市、魔智がバイトするコンビニ。
出門魔智はコンビニの周辺を掃きながらドラゴンアウディーターの事を考えていた。
『あいつ……変わりやがった……』
『変わった?』
寄生するデビルが応答してくる。
『ああ、前までとぁ明らかに違う。でも……悟ったって感じじゃなかったな。開き直ったとでもいうのだろうか。真からの決意って感じじゃない』
『言っている意味が分からない』
デビルの心の無い返事に少し笑みすらこぼれる。
『そんな愛想のないこと言うな。俺ぁ妄想馬鹿になっちまうだろ。でもよ、あいつ正義かどうかはともかく、ガチで強くなった。しかも俺にとどめをさせるチャンス捨てやがった。いつでも倒せるってか? キマイラ倒すための餌ってか。冗談じゃない』
箒を危うく折りそうになり慌てて力を抑え込む。しかし、ドラゴン、一体どうしたと言うのだろうか。友などいらないだと? 学生がふざけた事を抜かしやがって。あいつには、仲間にするよりまず、仲間、友ってものを叩きこむように教える必要がありそうだ。
『その、ドラゴンアウディーター。近づいているよ』
デビルは急にそう告げてきたが『またか』と思うと上空を見上げた。空を切るように飛行していく赤い化物。ここのところずっととにかくバカみたいに空を飛びまわっている。
『何考えてんだ、あいつ? あれから随分と荒れてやがる』
『うん、焦ってる』
見た感じ、あいつはがむしゃらに飛び回っている感じだ。らしくもない。ドラゴンは今までかなり警戒していた方だ。少なくとも自分よりは自ら騒ぎを起こそうとしていない。だが、今回の行動は騒ぎどころではない。奴は何をしたい?
「出門、中の仕事してくれるか」
「あ、はい」
先輩に呼び出され掃除を終わらせると別の仕事に移った。
それからしばらくたち、シフトの時間は終わるがまだ残っている商品の陳列を続けていた。だが、それももうそろそろ終わる頃、またお客様が一人来店。
「いらっしゃいま……」
ドラゴン……。あの学生がコンビニに来店してきたのだ。視線に奴が映り込んでくる。
「……せ。どうぞご利用ください……」
流石にマニュアル通り行うが奴も間違いなくこちらに気づいたらしく妙な空気が漂う。だが、ドラゴンの学生は一瞥すると商品を選びに入っていった。
それを気にしていないふりをして作業に戻るが、気になって仕方がない。
仕事を終わらせるとレジに入ろうとしている先輩に断りを入れ自分は上がる。
素早く支度を整えるとコンビニを出たが以外にも奴はまだコンビニ内にいた。放って帰ろうと思いはしたが、どうしてもそうできず、道端で壁にもたれながら待機。
その中、ドラゴンの学生がコンビニを出てきた。
「随分品選びに時間がかかってたが、買ったのはおにぎり一個か? お客様」
「……ふんっ。お前、バイトなんかしてるんだな」
ドラゴンの学生は異様に蔑んだ目でこちらを見てきた。コンビニからは少し遠いし、周りに人がいない事も確認すると、学生の方に見据える。
「残念ながら、人間の世界で人間が生きていくにぁ金必要だからな」
「まるで、自分が人間じゃないみたいな言い方だな?」
ドラゴンの学生が放つ予想外の言葉に鼻で笑ってやった。
「おめ、人間だと思ってるのか?」
「なに?」
「普通じゃない化物の力持ってるんだぞ、俺たち。あの姿に成れるのに人間だと?」
そう言うと、学生は急に押し黙ったが、急に魔智の体の中からデビルが顔だけ出す。
「例えアウディーターになっても立派な感情を二人とも持っている、理性を持ち知性も高いまま、故に人間であることに違いない。尤も魔智の知性は大したこと」
「……おい」
今度はドラゴンの学生の体からアウディートの方のドラゴンが顔だけ出してきた。
「ただ、地球人かどうかって言われたら少し、外れる部分はあるかもだけど。で
も、DNA的に地球人であることに違いはないし、地球人、人間なんじゃない?」
「「人間の定義などどうでもいい」」
「お? 初めて意見あったんじゃないか?」
「知るか。それこそどうでもいい」
相変わらず、こいつは慣れ合いが嫌いらしい。ならば、直接聞こう。
「おめ、なで、空飛びまわってる?」
すると、学生はまた押し黙った。顔だけ出すドラゴンアウディートも心配なのか顔を近づけようとするが学生は容赦なく、体の中に押し込むようにアウディートの姿を消す。
「少しでも早く、お前ら化物どもを倒したいからに決まってるだろ!」
そう言うと、まさかの目の前でアウディーターの姿になるとそのまま飛び去った。周りに人がいなかったが、飛び立つ所を離れたところからでも見られたらどうするつもりだ? やはり、あいつはどうも冷静さに掛けているようだな。
『魔智が冷静さを語るとか』
『なぜ今そこ突っ込まれた?』




