正義の葛藤(7)
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火野龍巳は放課後までの時間ただひたすら、今日もまた飛び続ける空を見上げていた。
ここの所、数日空を飛び回り続けたがどうもキマイラ、ライオンの姿は見つかりそうもなかった。すぐにでも叩きのめしたいのに現れない。そのもどかしさは計り知れなかった。
『何も得られないのに今日もまたひたすら飛ぶの?』
『当たり前だ。このまま、この状況が続いたら、罪もない人たちが巻き添えを食らう。見ただろ、担架に運ばれるあの姿を。もしかすれば、百々宮とか言う刑事が俺に何か感づいた可能性だってある。正体に近づかれつつあるのかもしれないだろ。だとすれば。ばれるのもそう遠くはない。空を飛び回りキマイラを無理やり探し出して、さっさと決着をつけるしかないだろ!』
『でも、毎日飛び続けたら』
『悠長なことは言ってられないんだ! ドラゴンは黙っててくれ!』
人間は自由に空を飛ぶのが夢であり希望の一つなのかもしれない。だけれども、この自由な飛行は決して今の自分にとっては楽しいだけでは無い事は確かだった。
『……あんた、なに悟ってんのよ……』
『……うるさい。黙っててくれ』
そして、今日もまた、飛んだ。だがしかし、見つかる事はなかった。
「なぜだ! なぜだ!? なぜ、あのエボリューターどもを見つけられない!!」
何度も何度も街の上を周回しても何一つ見つかりやしない。何もできない。ただ飛ぶだけで無駄な時間が過ぎていく。奴らが少しでも顔を出せばすべて済むものを!!
『龍巳、少し落ち着きいたら、どう?』
「いいから黙ってろよ!」
『聞きなさい!』
いつになくはっきり強い口調の一言。それは一瞬で思考が停止させるに十分だった。
『な、なんだよ』
『いつもだったら、こんなこと絶対してなかったよ。いつもの冷静な龍巳なら』
『なんだ、今の俺が冷静じゃないと?』
『勿論。よくよく考えたら分かる事じゃない? あんたがそうやってがむしゃらに街中を飛んでも、ただの監視になってキマイラたちの行動を抑制することになるだけ。何より他の人たちに恐怖感を与えるだけじゃない』
『……俺がこうやって飛び回っているのは無駄だと?』
『無駄どころかマイナス。監視してる中、わざわざ飛び込む囚人はいないよ』
そうか……そういや、そうだな。今冷静に考えれば簡単な事だ。狙っていると分かっているのに、わざわざその中を堂々と出てくるバカなどそうそういない。ましてやキマイラは自分の飛んでいる姿は見ているだろうに。
「俺、バカだな……。ドラゴンそんな風に指摘されるなんてな………。バカに指摘された俺はどんなバカだよ」
『ちょっ、それ酷くない?』
「ちっくしょう! だったらどうすりゃいい! 腹立たしい!」
『いや、冷静になってないじゃない!? いいから、そこの山に隠れたら』
『うるさいな。これ以上に指図するつもりか?』
『いいから。飛んでても無駄って気づいたんでしょ? まずはそこの山に身を隠す!』
どうも気分はあまりよくなかったが、下にある山の中に身を隠した。




