戦いの狼煙(2)
自分の部屋のドアを閉めると同時にすっと龍巳の体から長い赤髪の女の子が姿を現した。やっぱりあのドラゴンだ。長い髪を振りながら龍巳の持つ棒付キャンディを奪い取る。しばらく、それをじーっと見ていたので、付いている袋を取ってやってごみ箱に捨てた。
「うん。甘い。美味しい!
まさにお菓子を与えられた子供のように無邪気に喜ぶドラゴン。その姿に少し笑みをこぼしてしまうが、気を取り直して自分の椅子に座る。
「なんで、寄生体が外にいる? 大体、口から物食べてエネルギー摂取できるのか?」
「うんん。無理ね。ただ、これは人間の姿をまねしたから、味は分かるのよ。あと、この姿、ほとんど映像みたいなものに近いから。本体は勿論、あんた、龍巳の中になる」
口から棒を出しながらビシッと龍巳の方を指さす。面倒な事になりそうだなと予感してしまった。ため息をつきながらも鞄に手を掛ける。
「取りあえず、これから学校があるんだ。悪いけど……、いや、悪くもない。絶対にこんな風に外に出てくるなよ。あと授業中に声を掛けてくるな!」
「え~~……、ま、しかた無いか……、うん、OK」
キャンディをぺろぺろ舐めながらから返事。色々文句は言いたいが言った所で何もない。とにかく、出ていく準備を始める事にした。ベッドに座り何の偽りも無いとがった八重歯をさらけ出す無邪気な笑顔でキャンディを舐め続けるドラゴン。そんな姿を見ていたら、その文句も言いづらくなる。でも、そんな姿にも流石に一つ言いたい事があった。
「なあ、なんでさっきから髪を揺らすんだ? 鬱陶しいんだけど」
後ろで何度も赤く流れる髪を触ったり揺らしたり、落ち着かない。
「こっちも鬱陶しいのよ。長い髪なんて初めて。普段の姿からしたら髪自体慣れて無いし」
「……、じゃあ、短くすればいいんじゃなかったのか?」
「…………、ハッ!? その発想はなかった!」
無かったのか。
「まあ、いいや。面倒くさいし」
どうやら鬱陶しいよりも面倒くさい方が勝ったらしい。どうも、このドラゴンとかいう奴。あんまり頭がいいわけでもなさそうな気がする。
「まあ、いいや。行くぞ」
「ん? OK!」
ドアノブに手を掛けるとドラゴンはまさにドラゴンともいえる鋭く八重歯が目立つ頑丈そうな歯でキャンディを噛み砕くと体の中にすうっと消えていった。




