戦いの狼煙(1)
窓から眩しい朝日が差し込み、うっすら目を開ける。しばらくそのまま布団の中に入っていたが、やがて目覚ましが鳴ると共に起き上がった。しばらくぼーっとしていたが、ふと思い出し部屋を見渡すが特に変わった様子はない。勿論誰かいる訳でも無い。
「夢か……」
あくびをしながら階段を下りると既に家族が台所にそろっていた。父と妹が椅子に座っており、母が朝食の用意。そんな中、父の前、妹の隣の席に「おはよう」と言いながら座り込む。三人からも挨拶を返されながら自然についているテレビのニュースが耳に入った。
「昨日夕方、岩手県久瑠巻町でコスプレをした男が暴れました」
はあ? なんと下らん。
「はは、おかしい事をする奴もいるもんだな、世の中には」
父は笑ってそのニュースを聞き流しているが龍巳の気分はあまり良くなかった。
「コスプレだろうが面白かろうが、犯罪は犯罪。周りに迷惑かけるような奴はただの悪党だよ」
龍巳は昔から正義のヒーローと言う物が好きだった。その流れから、正義にあこがれを持ち、悪を憎んでいる。故にこういう事をする輩はどうも気に入らなかった。
「でもさ、お兄ちゃん。これ、結構こったコスプレだよ。何と言うか、禍々しいとでもいうのかな。結構ハイレベルなコスプレだと思う。画質は悪くてあんまり見えないけど」
「うん。心の底からどうでもいい」
チラッとテレビの方に目を向けると黒い何かのコスプレをした奴が何かを叫んでいる姿が視界に入る。しかし、その映像はとだえ、次のニュース。
「続いてのニュースです。昨日、麻布田市にある銀行で刃物を持った男が押し入り、現金の要求をしたものの、警察に通報されたことを知り、逃走しました。現在、その行方を追っています。逃走している男は立神魁容疑者、二十六歳……」
「あら、近くじゃない!! あんたたち。学校行く途中、気を付けなさいよ!」
朝食の準備をしながら母が警告してくれる。それに妹、巳華は軽く返事をするが、龍巳は軽く舌打ちを漏らした。なぜ、そんな悪党が悠々と捕まらずに街をのさばっているのだか。警察は何をやっているのだ? テレビに映る獣のような鋭い目つきの犯人像を見てイライラが募る。
そんな龍巳をなだめるように母が朝食をみんなの前に置いていく。
「ほら龍巳、そんなにイライラしないの。御飯が美味しくなくなるでしょ」
出された朝食にそれもそうだと思い、手を合わせて食事に手を付ける。その時だった。
『へえ、地球人って随分いろんな種類の物を食べるんだね』
「? 何!?」
「な、なに!? お兄ちゃん!? どうしたの!?」
「え? え?」
慌てて部屋を見渡すが、母も父も巳華もこちらを変な目で見ている。気のせいなのか?
『そんなことないよ』
!? いや、確かに聞こえる。頭の中に直接届くようなその声……。
『ドラゴンか!?』
『当たり!』
自分の頭でそう問うと明るい返事が頭の中で帰ってくる。周りの家族に何でもない事を告げると箸を進めながら自分の頭に問いかけた。
『どういう事だ?』
『寄生したからね。基本的にあんたの体の中にあるの。で、意識で会話しているわけよ』
『そういう事じゃない。頭の中でお前の声が聞こえるとか聞いてない』
『そこまで言わなきゃダメだった? ごめんね。まあ、しょうがない』
マジか……。
『マジだよ』
クソッ。そんな事、全く視野に入れてなかった。予想外の出来事にイライラがさらに増しながら、それをごまかすようにご飯を口に掻き込む。
「ご馳走様!」
「ん? ちょっと、そんな急いで食べて。どうかしたの? 時間はまだあるわよ?」
「別に、何もないよ」
口に含む残りをゴクッと飲み込むと階段を掛ける。
『あ、待って待って! 気になってたの。その端っこ』
いらだち半分で目を動かす。
『そこそこ。そこにあるその丸いのがついてる棒。甘いにおいがする』
龍巳は恐らくそれであろう物を掴む。棒付ャンディ。
『そう。それそれ』
天井を見ると一つ息を吐き、キャンディを握って部屋に戻った。




