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戦慄のアウディート  作者: 亥BAR
第一章 全ての始まり
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全ての始まり

 立月りつき市、ある家。少年、火野龍巳ひのたつみは戦慄を走らせていた。


 否、どちらかと言えば唖然としていた。自宅に帰り自分の部屋の電気を付けると自分の机の上に赤い未知の生物がいるのだから仕方がないだろう。

 その赤い生き物は鼠ぐらいのサイズ。ワニのような口だったり、コウモリのような翼を持っていたり、全体に赤い鱗があり。そう、それはまさに……デフォルメされた、


「赤いドラゴン……?」

「そう、その通り!」


 まさかの返答付きだった。その生物が発した声は女の子のように高い声。いやいや、全く持って状況が把握できない。取りあえず、部屋から逃げ出そうか、それとも追い出そうかどちらかの選択肢を選び始めたのだが、目の前のそれはそんな龍巳にはお構いなし。


「そうか、この姿じゃ流石に不安か……よし」


 そいつは宙に飛び上がり部屋の中央にまで飛んでくると急に光り出す。思わず目を細めて光から手で目を庇う中、それはみるみる人の形になっていく。光が止むと同時にふわりと部屋の床に龍巳と同じぐらいの背の一人の女の子が降り立った。


「へへ~、これなら文句ないでしょ」


 文句よりもそれ以外に突っ込みどころがありすぎる。ただ、今は茫然と目の前の現状を把握するのに必死。その女の子は、鱗を纏う尻尾があったり、翼があったり、なんか角が生えていたり、色々地球人を一脱しているが、ぱっと見た姿はやはり人間の姿。何よりも炎のような赤い目と赤く長い髪の毛が目立つ。まさに擬人化したドラゴンとでもいうべきその容姿。


「な、何なんだ!?」


 一言を振り絞ってみたが、目の前の女の子はすぐにニカッと歯を出して笑う。


「何って、あんたが言ったじゃん、ドラゴンよ。ド・ラ・ゴ・ン」


 ドラゴンの四文字を強調させながらそう告げる目の前の女の子。長い髪を大きく鬱陶しそうに振ると再び歯を見せた無邪気な笑顔。そこから見える鋭い歯もドラゴンのように鋭い。でも、目の前の女の子がドラゴンだと言われても誰が、納得するだろうか。


 どう動くべきか分かりもしない状況に嫌気がさしたのか軽いため息をつく女の子。


「もう、あんた。あんまり話せる状態じゃないらしいから、あたしから単刀直入に言わせてもらうよ。あたしは地球人からすると地球外寄生型知的生命体、アウディート。あんたに寄生するため、ここにやってきた。前に寄生していた宇宙人がこの星でさまよって、倒れちゃったって訳。だから、その宇宙人の体を全てエネルギーに変えてさまよい、あんたの前に居る。で、今、あんたに寄生していいかどうか聞いているの。分かる?」


 分かるわけがないだろう。そう言いたいが、それは心の奥でとどめておく。そのかわり、心の余裕も出て来たので少し相手を揺さぶるように質問してみた。


「なんで、さまよったんだ? 君が宇宙人だとして、この地球は生物にあふれている。すぐ近くにいくらでもいただろうに」

「アウディートは基本、知性を持つ人間に寄生するの。動物よりも生存確率が高いから」

「……だとしても、ここはある程度の街。人はたくさんいるぞ?」


 自分は何を誰と話しているのだろうと言う疑問をとにかく封印して続ける。


「まあ、あたしたちは単純じゃないからね。あたしたち、アウディートは寄生する代わりに宿主にアウディーターという力を与えるの。それは宿主の生存率をはね上げてあたしがより安全に安定して寄生し続けるため」


 流石にここに来てポカンとしてしまった。なんだ、その設定。


「おいおい、それって寄生か? 相互関係がある時点で生物学的に寄生とは言わないぞ」

「ああ~、あたし、まだ地球に着てほんの少ししかたってないのよ。だからあんまり詳しい地球の事は分かっちゃいないの」


 時々揺らす赤い髪の毛を見ながら龍巳は胡散臭いと思った。普通に胡散臭すぎる。


「だったら、なんで日本語なんて話せているんだろうな?」


 少し意地悪気味にそう吹っかけてみたがドラゴンはフフッと笑みをこぼす。


「当たり前じゃない。あたしは宇宙をさまよう寄生体よ。おまけに力を与える事になる以上、知性の持つ者と契約に近い接触は必要だしね。その星の、国の言語を覚えることぐらい、本能的に可能なのよ。日常会話くらいわね」


 ……なぜか妙に納得せざるを得ないようなその答え。


「も~う、決めてよね。寄生していいか、どうか。早くして頂戴! こっちはもう、エネルギーか切れかけているの。あんたに寄生しないと死んじゃうんだから!」


 急に迫ってくるドラゴン。とがった爪を動かしながら近寄ってくる。顔は結構可愛い部類に入るはずだが、その迫力とオーラが怖い。もしここで断ったら、何があるか。


「もし、断ったらあんたの生命力をごっそり吸い取って別の人の所に渡るだけよ。ただ、あんたの命の保証はないわ。実際、ここまで来るのに、前の宿主の死体からエネルギー全てをいただいてきたんだから」


 え!?

「まじっすか?」


「ええ。でも寄生を受け入れてくれたらそれまで。あんたは日常を普通に過ごしてくれたらいいだけよ。ただ、力を手に入れるだけの構図になる。安心して、寄生したら殺すことはないよ」


 胡散臭い上に、訳の分からないこの状況。ただ、あの赤い奴が、目の前で女の子に姿を変えた。不思議だが事実。それに、本当に寄生ならば確かに殺されることはないだろう。寄生する宿主の生存に不利な真似をしたら元も子もない。少なくともここで断って殺されるよりはまし。

 とにかく、ずっと冷静にこの状況をいち早く把握して最善策を叩きだした。


「まあ、いいさ。好きにすればいい」


 そう言うとベッドにぐたっと寝転がった。

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