正義の矛盾(5)
どうも魔智は仲間、友と言う事に関してやたらと執念があるらしい。鬱陶しいぐらいに語ってきやがる。龍巳は自分の仲間であるらしいアウディート、ドラゴンに少し意識を向けようと、心の内に問いかけようとしたとき、まさかのドラゴンが直接体から出てきた。
「ちょっと、あたしが落ちこぼれって!? デビルが言ったのね!? 出てきなさい!!」
多分、そのことに関しては罪が薄いであろう魔智の襟を握り締め何度も上下に振りまくるドラゴン。ドラゴンはご立腹らしいが魔智もまた流石に迷惑そうにしている。
すると、魔智の背中から上半身だけデビルが姿を現した。
「わたし、優秀。ドラゴン、駄目。言っただけ」
余りにはっきり、ストレートな表現。ドラゴンは既に真っ赤なのに更に耳の先も何もかも真っ赤にして怒りをあらわにしながら、デビルを引っ張りだした。
「ちょっと頭いいからって調子乗らないでくれる?」
「別に。ありのままを言っただけ」
「むっか~!」
赤いのと紫がピーピー騒ぎ始める。周りに人がいないから言いものの。第三者に見られたらどうするつもりだよ。それでも、騒ぐドラゴンらに鬱陶しさが芽生えてくる。
「ドラゴン! うるさい! 黙ってろ、気が散る!!」
「そうカッカするな。ああいう喧嘩仲良くてする物、仲いい証拠。黙って見届けてやれ」
「くだらん! 仲がどうだろうと知ったこっちゃねえ。それよりもお前はいつでも簡単に俺の事を探し出せるって事でいいんだな」
「下らんことはないだろ。まあ、いいが。そうだな、簡単じゃないが見つけられる」
龍巳は一つため息をつくと首を振った。
「ならばここでさっさと消すのがベストだな。何しろ俺はさっさと片付けたいんでね」
覚悟の上だ。さっさと終わらせる。その意志のまま、まだもめるドラゴンに手を出したが、否定されるように魔智に下ろされた。
「ここで俺ば倒したら、厄介なキマイラだけ残るぞ。あいつぁおめ一人で倒せるような奴じゃねえんだよ。おめの正義ぁそんな無謀な事でいいのか?」
振れる魔智の手を払いながら考え込んだが、奴の言い分も決して間違いではない。
「まずはそのキマイラって奴をこの目で見るのが先だ。その後でお前を倒すか考える」
魔智はひとまず頷くが、また曇らせた。
「ところで、お前にとってドラゴンは仲間か?」
その質問の意味がほとんど理解できず、向こう言い争っているドラゴンの方を見た。正直、そんなこと考えた事が無い。質問してきた魔智は違う重い雰囲気。まるで魔智に何かがあったよう。だが自分の考えを少しまとめるとためらいながら述べた。
「仲間……ね。そうかどうかは知らんが、ドラゴン、そしてこの力は今の俺には大切だ」
魔智はこの返事に今度こそ納得したと笑顔を振りまけるとデビルに近づいた。
「デビル、行くぞ」
まだ言い争っている中、デビルの尻尾を引っ張りドラゴンと距離を取らせている。
「へ~んだ。そんなの薄っぺらいジャガイモじゃない! キャンデイこそ美味しいのよ!」
「ポテチ、最高。砂糖の塊よりずっといい」
龍巳と魔智のシリアスさをぶち壊すかのように二人の間で瞼を裏返し、下をペロっと出しているアウディートたちに龍巳の蟀谷あたりが嫌に痛くなった。
「お前ら、何を言い争ってやがる……」
蟀谷あたりを抑えながら魔智が去っていくのを見送る。しかし、倉庫跡に行く気は失せていた。キマイラ、ライオン、知りたかったことはある程度知ることが出来たのだ。だとすれば、無意味に倉庫跡に行く必要はない。警察がいるとなってはなおさら。
『じゃあ、どうするのよ』
『…………、そうだな』
と、ふと思い出しスマホを取り出した。秋角から教えて貰った化物の情報を少し探してみようとしたのだ。まさか、ほとんど付け焼刃で直ぐにそんな情報を手に入るとは思えないが、何となくいじってみたくなったのだ。そう、本当に何となくなのだが、
「嘘だろ……今だ、今だよ!」
スマホに映る情報。まさに今現在、立月市に化物がいる。何がいるのかは知らないが、まさかついさっきまで対話していた魔智ではあるまい。例のキマイラか、ライオンか。
『しかし、アッキーすげえな……』
『ほんと、「まずアドレスってどこに打つんだ?」って聞いてたやつとは思えないわね』
『…………るせぇ』
とにかく詳しい場所までは情報を探せなかったが、大体の場所は掴んだ。自宅と同じ立月市、やっぱりいつかはここまで来るだろうとは思っていた。だが、ここで見つけたんだ。すぐに消し去ってやる。自分の正義を胸に飛び出した。




