市民の探偵(3)
いや良かった、猫が見つかった。依頼人の電話番号を確認すると飼い主に見つかった事を報告、直ぐに行くと連絡が返る。一通り電話が終わると鈴たちの方に振り向いた。
「って、鈴! なんで俺にはお茶を淹れず、二人にはコーヒー淹れてるんだ!?」
「お客様なんですから当たり前です! 何分かりきった事を言ってるんですか!」
言い返す言葉も無く、しぶしぶコーヒーを淹れる続きでもしようと棚に寄るが、既にビンは棚に戻され、何故かしっかり真のカップも棚に戻されている。キッと鈴の方を睨んだが、知らん顔をかまされるだけ。仕方なく、鈴の隣に座り込んだ。
「まあ、取りあえず、猫を探し出してくれてありがとう。凄く感謝している」
「最初から素直に感謝すればいいんです。中途半端に恰好付けるからダサくなるんですよ」
「俺の感謝の言葉も台無しじゃねえか!?」
「あ、そうそう。この二人は龍巳君と秋角君、麻布田高校に通っているんですって」
「俺の突っ込みは無視ね?」
そんな二人の会話が続くと学生の人が何故か妙に鈴の方を見ているのに気が付く。
そして秋角と言う学生が鈴に手を指した。
「高校生が探偵やってるんですか?」
「プッ!!」
「真さん、笑わないでください! わたしは高校生ではありません。少なくともあなたたちよりは年上です! って、なんでそんなに面食らった顔するんですか、二人とも!」
「いやいや、二人とも良い目してるね。わたしは市民を脅かす謎を追いかける街探偵、志染真、女子高生、未来鈴と共に志染探偵事務所をよろしくお願いします」
そう言いながら、まだ名刺を渡していなかった秋角の方に渡す。横でムキーッとギャアギャア言う鈴を置いときながら、軽く決めポーズでもかますと秋角は龍巳と何やら名刺を見ながら顔を合わせている。そして、秋角は頭を掻きながら笑顔で言ってきた。
「シジミか~。なんかこの苗字、おいしそうな苗字ですね」
「って、俺の苗字を味噌汁に淹れようとするな!」
「うわ~真さん、その突っ込みは微妙ですよ。分かりづらい」
「って言いながら鈴、絶対心の中で笑っているよな」
「さあ、知りませんよ、貝探偵さ~ん?」
「あ、俺はシジミよりはアサリ派です」
「知るか!」
まさか真面目そうな龍巳にまでいじられるとは思わなかった。
ただ、一つ言える事は楽しいひと時だったと言う事である。年甲斐もなく学生とワイワイ話すことが出来たのだから。無事、迷子猫の依頼も解決でき、心地よいひと時だった。
そして、猫の飼い主が事務所にまでやってくる。確かに依頼人の猫で間違いはないようで無事解決。まだ残っていた学生らに依頼人が礼金を渡そうとするも、学生らは丁寧に断りを入れ、全ては丸く収まるはずだった。依頼人がこう告げるまでは。
「そういえば、ここ、理戸市でも遂に化物が現れたらしいんですよ」
化物!? 依頼人の一言に一気に空気が硬直した。
それは学生たちも同じようで、龍巳が恐る恐る依頼人に近づく。
「もしかして……、その……化物…………って」
「ええ、麻布田市の銀行に二回ほど現れたと言う化物らの事だと思います。今、警察が出動したりして大変な騒ぎになっているらしいですよ。今までとは被害の規模が違うとか」
そういえば、龍巳も秋角も麻布田高校に通っていると言っていた。だとすれば、化物の存在には特に敏感に恐怖を感じているだろう。何しろ身近の事件なのだから。勿論、探偵としてそれらの事件を気になっていたが、まさか、理戸市にまで現れるとは……。
「鈴、とにかくその場所にいってみるぞ。学生君、悪いけど今から事務所を閉める」
「え? あ、はい」
とにかく、現状を知る事が大切だ。少なくとも他人事で済むはずが無い。壁に掛けてあるソフト帽を頭に乗せると依頼人から聞いた場所に向かって鈴と共に走り出した。




