市民の探偵(1)
麻布田市、麻布田高校に通う生徒、龍巳の帰り道。
龍巳とその友、秋角は自宅がある立月市に向かって歩んでいた。くだらない話で下校が盛り上がってはいるが、龍巳の心は秋角との会話よりも別の所に向いていた。
『あのライオン、一体何だったんだ? アウディーターじゃないんだろ?』
『うん……。何なんだろ? しかもライオン、炎に囲まれながら一瞬で姿消したし』
『デビル野郎だけで手いっぱいなのに面倒なのが増えやがる……』
思わず現状にため息をついてしまう。力を得たがやり切れない自分がいる。でも、とにかく自分の信じる正義のためにライオンとデビルを倒すのみ。警察には色々としてやられた感はあるが、問題ない。さっさと奴らを倒して力を封印すればいいだけの話だ。
「おい? タツ? 何、気合入れてんだ?」
「え? あ、おう! 別に。アッキーは気にするな」
本気で気にしないでほしい。当たり前だが、秋角を巻き込む気は更々ない。
『ん? ちょっと待って龍巳』
『ドラゴンか? なんだ?』
『あれ、あの猫。何かあの探偵が探していた猫と似てない?』
『はい?』
一瞬何のことか分からなかったが、数日前に出会った探偵の事を思い出し、辺りを見渡す。すると、確かに塀の上に猫が丸まっているのが視界に入ってきた。慌てて鞄から奥の方に押し込まれていた探偵から貰った写真と見比べる。
「今度はどうした?」
「いや、あの猫、これと似てないかなって」
秋角もこの写真にのぞき込み、「ああ~」と唸る。
よし、そうと分かれば。猫を驚かさないようにそっと近づき、塀にいる猫を抱え上げる。暴れはしたがすぐに直ぐに落ち着いてくれた。名刺も貰った事を思い出し秋角に渡す。
「なあ、この探偵事務所、場所分かるか?」
「ん? ああ、理戸市だな。分からないけどアプリのマップを見れば一発だ」
「理戸市か。遠回りどころか完全に逆方向だし、猫連れてたらバスには乗れないか……。ま、しかたないよな。じゃ、案内頼む」
龍巳はスマホで地図やら道案内の機能やらを仕える自信は皆無だが、秋角はそれを難なくこなすと理戸市にある志染探偵事務所に向かって猫を抱えながら進路方向を変えた。




