魔智の仲間(1)
西に沈みかけている真っ赤な太陽に麻布田市が照らされ、街全体が夕焼けの色に染め上る。麻布田市にある一つのコンビニにもその赤い光が届いていた。そんな光を細めた目で見上げる出門魔智は箒を手に店周りの掃除を一通り終えると、店の中に戻る。
掃除器具を直していると店長にポンポンと軽く肩を叩かれた。
「出門君、ご苦労さん。今日はもう上がってくれていいよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
その言葉を受け、帰り支度をしているとバイトの先輩が声を掛けてきた。
「出門、バイト始まって数日たつけどどうだ? 都会は慣れたか?」
「え? 俺ぁ田舎者だなんて言いましたっけ?」
「方言だよ。共通語使おうとしているみたいだけど、完全に隠しきれてないぞ」
「…………別に方言使う、東北出身さげって田舎とは限らね」
「あ……そ、それもそうだな。悪い、気を悪くしたか? 謝るよ」
そんな風に少し申し訳なさそうにする先輩に大丈夫ですと伝えるとその店でポテチを二袋買い、店を出た。一袋あけてポテチを口に放り込みながら先のやり取りに思いふける。
『なあ、デビル。俺ぁそんなに訛ってるか?』
『知らない。方言までは理解できない』
寄生しているデビルに頭の中で問うがそっけない返事が変えるだけ。
『ただ、魔智は他とは少し文法、アクセントが違うのは分かる』
『……そうか』
そんなデビルの返答に正直かなり戸惑っている。いくらアウディーターに変身しようと訛が目立っては自然と正体に繋がっていく可能性もある。魔智自身、共通語を意識して話しているつもりではあるが、やっぱり完全に隠しきれていないと言うのが現状か。
ドラゴンアウディーターの前では仲間出来るかと浮かれて堂々と話してしまったが、奴はこの喋り方をどう思ったのだろうか。尤も、奴にはこの人間時の姿も見せているし、そこはもう問題ではないのか。
それに今は、他に気になる事があった。先日のドラゴンが戦っていた相手の事だ。デビルがドラゴンの動きに気づき見物に行ったが、その相手が気になった。デビルが言うにはアウディーターではないとの事。ただ、どうやらあのライオンにはアウディートに似た力を感じるらしい。少なくともアウディートが寄生している訳では無いと言っていた。
『そのことで考えた。確信はないけどあれはアウディートの力を別の方向に使っているのかもしれない。アウディートの力を応用した感じ』
『どうやって?』
『わたしに分かるわけない』
アウディート自身にも分からないらしい。ならそんな事いくら考えても無駄か。
既に半分ほど減ったポテチの袋の口を閉じるとこっそり人気のない所に入る。周りに誰もいない事を確かめるとデビルアウディーターの姿になった。人に見られていないか慎重に注意を張り、とあるビルの屋上にまで飛び立つと、ゆっくり降り立った。
この今は別に寒いわけでもないし、アウディーターになってからそういうのにも強くなっている。故に誰にも見られないようにそっとこういう場所をねぐらにしていた。
再び人間の姿に戻る。同時に幼き姿のデビルが姿を現し、屋上の床、コンクリートに立つ。魔智が壁にもたれ力を抜くと、デビルは柵の方に向かって歩き始めた。
「デビル、あんまり柵さ近づぐな。おめ、体小さいさげ落ちんべ」
「それ。気にしてるなら、普段から共通語使うべき」
「あ、そうか。おう……」
こちらを見て至極まっとうな意見を述べられ何も返せず。見た目小学生だが、結構しっかりしているデビル。よく、ぐうの音も出ない指摘をされるので妙な気分になる。
そのデビルはとうにこちらには関心をなくし自分の背よりも高い柵に顔を近づけ、風になびき揺れるワンピースのスカートを抑えることもせず、ずっと下に広がる街を見続けている。




