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戦慄のアウディート  作者: 亥BAR
第二章 戦いの狼煙
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戦いの狼煙(8)

 昨日は力の使用が予想よりも体に負担が掛かって力尽き、考える間もなく寝てしまった。そして、今登校時になっていろいろ力について考えが出てくる。


 力を使ってしまった以上もう後戻りはできない。少なくともアウディーターと言う物が本当に人間を超越した化物であったことに違いはない。だとすれば、何としてでもあのデビルアウディーター、出門魔智を倒す必要がある。そう簡単に行くとは思えないが、出来ればさっさと叩きのめして、二度とこの力を使わないようにしたい。それで全てが丸く収まる。


 そう考えた。そうすれば、もし見かけた人がいたとしてもただの都市伝説程度で終わり、騒がれることも無い。


 少なくとも、今この状況では普通の学生として過ごす。正体をばらすなんてもってのほか。そう気合を入れて足を踏み出したのだが、麻布田市に入った時、急にあたりが騒ぎ始めた。人がある一点に向かって集まっている。その中、こんな声が聞こえた。


「あの立神とか言う強盗犯がまた銀行に現れたらしいぞ」


 学校に向かってひたすら歩めていた足を止めた。立神、立神魁。確か前ニュースでやっていたあの逃亡中の犯人だ。一瞬、そっちの方向に行こうとしたが、慌てて首を振る。


 まさか、いってどうする? 直、警察に捕まる。悪党はさっさと警察に捕まればいい。

 ……いや、野次馬が出来ているって事は長引いているって事じゃないのか? 人質を取って立てこもっているとか。いや、でも警察が何とかする。警察が……、警察。


『ねえ、龍巳? あんた、力を使って手を貸したいんでしょ?』


 急に頭の中に流れたドラゴンの声に目を見開いた。


『まさか。あんな民衆の前に化物姿で晒したらどうなる事か。あのデビルをこっそり倒す計画が全て水の泡だぞ。大体、何故恐れていることを自ら進んで陥らなければならない?』


『でも、悪党を倒す力は得た。やっぱり見過ごせないんじゃない? ヒーローさん?』


 今度ばかりはヒーロー好きである自分を少し呪いかけた。けれども、そのヒーロー像を目指して次の瞬間には飛び出していた。




 アウディーターとなり、持っている鞄を見えないところに隠しておくと、野次馬の上を分からないように飛んでいく。現場を見た所、警察の機動部が銀行の周りを取り囲んでいるが、どうも膠着状態が続いているようだ。案の定、あの犯人、立神魁は拳銃を使って市民を人質に取っている。その恐怖におびえている人質を見ては、意を決し、一気に地面へと降り立った。


 赤い翼を折り畳み、砂埃を舞い上げながら警察、民衆の前に化物姿をさらす。勿論、それに対し現場は騒然としていたが、その隙を逃すまいと立神の握る拳銃を人質から離すと人質を解放。すぐに警察に引き渡す。


 その時、後ろから発砲音が聞こえた。だが、それは意外にも小さい音だった。周りの人たちが耳を塞ぐ中、本当に小さな発砲音を聞く。これもアウディーターだからか。


 そんな考えをし終えた後に発砲音がした=弾丸が飛び出したと言う事に気が付く。


 慌てて身をかがめ防御態勢を取ったが、アウディーターの皮膚を弾丸如きが貫通するはずなどなかった。チクッとした感触だけで弾かれ地面に落ちる弾丸。落ちた弾を指で摘まみ、効かなかった事を改めて認識する。そのまま立神の方を見ると煙を吐く拳銃を握りながら恐怖に引きつる姿が目に移った。まあ、恐怖するだろう。自分でも認める化物姿だ。


 一つ跳躍すると立神の前に着地、鳩尾に軽い一発を噛ます。それでも予想より力が入ってしまい数メートル吹っ飛ぶ。焦りはしたが胸の動きで生きていることは確認できた。


 無力化すればあとは問題ない。翼を大きく広げるとこの場から去ろうとしたが、その直後、後ろから銃が構えられる音がした。


 それに伴い、翼を広げたまま停止すると振り返る。恐らく刑事なのであろう、男女二人組が拳銃を持ってこちらに狙いを定めている。さらには機動隊の銃もすべてこちらに向けられている。刑事の女性が一歩前に出て、油断なく拳銃を構えたまま口を動かした。


「お前は何者だ?」


 実に返答に困る質問だった。今は無視する以外の方法はないだろう。そのまま黙って翼を肌たかせるとその場を離れた。


『大丈夫? 警察、随分と敵意むき出しだったけど』


『まあ、当然の結果だろうな……。しっかし、時間食っちまったな。もう、登校時

間は過ぎてるぞ。遅刻だな……。いや、これはありのまま言っても問題ないか。どうせ、世間は化物騒動が広がるだろう。化物を見たとでも言っておけば理由になるだろうよ』


 遅刻の理由を考えながら急いで学校へと向かった。

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