32:+放浪記01:帝国立図書院
ようやくタイトルに追いついたなぁ…
ちなみに+放浪記XXと付く場合はトマさん主観になってますので
予めご了承ください。
<帝国統一歴 1702年 陽雷の月 第22日>
結局、儂はこのまま家には帰らないことにした。
となれば後はやる事は一つ。結局こうなったのは情けない限りだが、
能力ごり押しで帝国立大図書院に侵入し、そのまま全ての書を読み尽くして
西方諸国…最初は途中を素通りして西フランカリマから始まる
三方フランカリマの知識制覇から興味深いと思った大国を片っ端から侵入しては
知識制覇を繰り返し、適当なところでどこか星の記憶等に
アクセスできそうな理力源や龍脈等をそれなりに探しつつ
適当にやっていく事となるだろう。
「金は腐るほどある…無ければその辺のものから復元するのみ…
いや、別に金など無くとも…いや、無用な滅びを振りまくのは言語道断…」
そんな事を呟きつつ儂は顔を包帯で巻き、記憶にある嘗てのライラのような
傷と毒々しい様相をした顔に見える幻術を考えておき、必要なときに
即座に使えるようせねば…と、考えて…ライラを思い出した。
「そうだ…ライラだけは連れて行かねば…」
儂は感知能力を全開にしては夜は飛行して帝都への距離を詰めた。
「大王国の時はエンリルエリシュ達に出し抜かれたようだったが…
今回は…どうなのだろうな…あぁスノリフレキは…まぁ、大丈夫か
おそらく儂を探す為に馬車馬の如く使われそうで哀れではあるが…
儂を主と認めてしまったのが不運だったと諦めてもらおう…すまん」
ここには居ないスノリフレキに謝るだけは謝っておこうか。
「スノリフレキはともかく…ライラは駄目だ…ライラは儂が救い、
儂無しでは儂の知らぬところで自害しかねない…」
この時感情を出すのを止めた儂は機械人形のように目的を復唱して
それを執行するルーチンワークをとった。
帝都へは亡き母の遺服と変装に認識阻害と声を風魔術で偽装して入り、
帝国立大図書院の場所と警備状況を確認した後、ハルマローシュ邸近郊に向かう。
「ライラの魔力反応は……儂の部屋…だな」
今までハルマローシュ邸へは普通に出入りしていただけに、わざわざ人目や
気配すら掻い潜って自室へ入り込むというのは妙に罰が悪い気がしたが、
南方領での事を考えるとどちらにせよハルマローシュ伯には
迷惑を掛けそうだったので、居ない者は居ない方が彼の負担も減るだろうと思い、
どうにも塞ぎ込んだエンリルエリシュが部屋に閉じこもってばかりで
碌に学院にも通っていないという話し声などが聞こえたりするが、
儂はあえて無視することにした。
「…(エニは心さえ強くなれば、この世界では頂点に近い世界で
最強捕食者が如く生きることも容易…儂が近くにいたら却って彼女は
心が弱いままで歪なままだ…まぁ許せとは言わぬ)」
儂は自室の扉をすり抜けるように開けて入った。
「『……ライラサフィール、儂だ』」
「『!? …トマ様…!? い、いままでどちr』」
儂はライラの唇に指をあてて黙らせ、部屋全体に静寂の魔術を掛ける。
「『そんなことは後だ、ライラ。荷物を纏めろ』」
「『私のモノは私含め全てがトマ様のモノ…この衣ですらそうですから』」
「『いや、前に何着か着替えなどを買い与えたろうが』」
「『あ…』」
やれやれ…。
思わず額に手を当ててしもうたわ。
「『さっさと持って来い、出来れば悟られぬようにな』」
「『問題ありません。影渡りに隠形を駆使致しますので』」
そう言って本当に儂の影に潜り、気配を遠ざけていった。
儂が買った儂の奴隷とはいえ一応は女子なのだから着替え類は
リォリィら侍女達の着替え用のウォークインクローゼットに纏めてある。
「…そうだな。何の連絡もないのはどうかと思うから一筆したためておくか」
儂は机の上に亜空間から取り出した真っ新の羊皮紙に
筆を走らせていく。墨は油を混ぜているので羊皮紙には馴染みが良いはずだ。
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今更ではありますが、突然の出家をお許しください。実は出家の先日に
親らしき人物の手がかりを掴みました。居ても立ってもいられませんので、
このままハルマローシュ家を失礼させて頂き候。父上、義庶子のわたくしめを
本当の息子のように扱い育て剰え学院にまで通わせて戴きました事、
誠に多謝恐悦至極に候。そして同時に誠に勝手な行いをお許しください。
私も今年で数え16。今年はエアメルドゥク様も冠礼を迎えましたし、
私の存在は父上…いえ寛容公閣下にとって足枷となるは必至とも考えました。
本来であれば私ももう少しだけこの家に留まりたくは思いましたが、
やはり私も人の子。自らの出自を、そして世界を知りとうございます。
いずれお耳に入ることかとは思いますが私は南方領へ厄介になっておりました。その時に強く外の世界も意識しました。南方公閣下に至っては
ご子息を北方へまで武者修行に出したとのこと。そういう方法でも
良いような気もしましたが、それはあくまでエアメルドゥク様や
エンリルエリシュ様のような正当嫡子にすることですし、先にも述べましたが
今後は私の一挙手一投足が伯爵閣下に大きな枷を科すことは必至。
伯爵閣下…いえ、父上。僕は貴方を尊敬しております。だからこそ、
父上を無為に苦しめるようなことは耐えがたいのです。なので僕は家を出ます。
無理に、いえ絶対に探すのはお止めください。僕は帰らないと言ってませんよ?
ちゃんと父上と初めて煙を一緒に吸ったあの日のことは忘れてません。
いつか…かなり時間は経ってしまうかもしれませんが、エアもエニも立派に
一角の者となるころには一度は戻ります。その時に父上の心がお変りでなければ
また、僕と一緒に煙草なり酒なり茶なりを呑み交わしましょう。
では、ひとまずこれにておさらばと致します。皆様お元気で…
帝国統一歴 1702年 陽雷の月 吉日 トマ より
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…むう、少し長かったか? 聊か諄い様な気もする…
しかしメインの相手は父上…ハルマローシュ伯だからこれぐらいのほうが良い…?
「『お待たせいたしました、トマ様』」
「『前言の割には随分と荷物が多いな』」
「『侍女の方々が沢山くれるので、どんどん溜まってしまいました。
邪魔でしたら捨てましょうか?』」
儂は何も言わず、ライラに背負われた大きな包みを亜空間に収納した。
「『では、行こうか』」
「『トマ様。スノリフレキはどうなさるのですか?』」
ライラがスノリフレキに気を使うとは思わなかった儂は、
柄にもなく驚いてしまった。
「『お前が彼奴を…? いや、スノリフレキはエニにも恭順の意は示している。
まぁ儂の匂いが感じられるのと圧倒的上位者への恐怖もあるんだろうが…
それにマーナガルムは同道させるのも都度都度面倒が付きまとう。なので
彼奴は置いていく。少なくともエニがいるのであれば問題は』」
べろりと顔面を舐められたので、なぬ? と思いながら見れば…
スノリフレキが居た。尻尾がブオンブオンとうるさい。
「ウォフ!」
「………そういうことか」
「はい、どうにも後を追尾してくるので振り切ろうとはしたのですが…」
儂はスノリフレキをモフる。モフりながら語りかける。
「スノリフレキよ。これより儂は世界を巡る。そこで貴様には一つ頼みたい」
「わふ?」
彼奴は「何だ我が明王? お使いか?」と犬みたいな反応をする。
なので儂はスノリフレキの顔を両手で掴みこちらに引き寄せ
しっかりと目を合わせる。
「真面目な話だスノリフレキ。お前にはエニを見守ってやってほしいのだ」
「わう…」
「そう嫌そうにするでないわ…今のエニは心が弱い。年相応ですらない。
そんな中で多少は思い切り触れ合える数少ない存在のお前まで居なくなっては
エニが何をしでかすかわからん。だからお前には
エニを見守る大事な仕事を与える。そういうわけだから、
賢きマーナガルム・スノリフレキ…エニにも手紙を書いたのでこれを渡すのが
最初の仕事だ。この手紙は父上…ハルマローシュ伯へ渡してくれ。
ではな、スノリフレキ。達者で暮らせ。儂はまたいつか戻るから心配するな」
しばらくはモフってやれそうにないのでモフれるだけモフっておく。
「くきゅぅ~ん…」
悲しそうだが「くっ…だが気持ちいい…! くそっ…!」と言ってそうな
顔をしてこちらを見てくるスノリフレキだったが。フンッ! と
自らに一喝するような鼻息をして、預けた手紙ふたつを咥えてのそのそと
自室を後にしていった。
「『では、行こうかライラ』」
「『地の果て天の果て星海の果てまでお供いたします…!』」
儂らは窓から飛行魔術でハルマローシュ邸を後にした。
<帝国統一歴 1702年 陽雷の月 第23日>
帝国立大図書院の警備はやはり連中の国民性か性なのかは知らんが、
豪華絢爛にして堅牢なつくりの建物の割には警備兵の数が少ない。
書物も印刷技術が未熟ゆえに本の値段も金貨単位な筈…
つまり帝国民にとっても金の匂い漂う…もとい大金の象徴な筈なのだが…
その割りには大図書院を守る人手が足りない気がするのう…。
「まぁいい…例え何万人何億人だろうと儂にすれば何の問題もないのだ」
どうにも釈然としないのだが、儂は入り口を素通りすることにした。
…ちょっとばかし認識阻害に光学迷彩と消音と導眠の魔術を駆使するだけで
用意に潜入ができたのは…やはり釈然としない…。
「…ここは仮にも帝国全土の知識の集積所ではないのか?」
「トマ様。トマ様相手では例え警備に北方公等の傑物がいても容易いでしょう?」
「…その四方公爵ないしそれに匹敵する将校の一人や二人くらい
警備にいても儂は良いとは思うのだが…やはり全央帝国民は度し難い国民性だな」
「まぁ、彼らも白蛮族共と大差無いですから」
ライラの主観に塗れた批評はともかく、とりあえず何の問題も無く
儂は予てよりの目標であった帝国立大図書院に入ることと相成った。
本来であればもらえたはずの正式な許可証で出入りする予定だったが、
…そうだな、どうせなら普段着の貴族服になっておくか…今の格好よりは
目撃された際にもこの格好よりは怪しまれにくくなるだろうし…というわけで
儂は早着替えをしたのだが…その際に先日のミーシュから始まった
女たちの修羅場の件を思い出してしまい、思わず呟いてしまった。
「この儂にああも口内陵辱を尽くされては……そういえば」
ライラが一番長かった気がするので今一度ライラを引っぱたいておく。
頭はこれ以上馬鹿になられても困るので尻にしておこう。
「あひんッ☆?! と、トマ様? (ハァ、ハァ、…!) 私が何か粗相を…?」
「………」
やはり先日の緊縛放置刑は間違いだっただろうか…微妙に喜色を浮かべておる。
しかも小麦色の肌の上からでも上気しておるのが分かる規模とは…!
「………お前への仕置きはやはりお前を無視するか眠らせるのが一番と見た」
「そ、そんなぁ…!?」
どうやら儂は見た目はこれでもまだ11歳の少女だが、
とんでもない変態怪物を生み出してしまったようだ…。
以下、妙に切なそうなライラと少々不毛な遣り取りがあったが割愛する。
流石に眠らせるわけにはいかなかったので、儂はライラとともにまずは
ここに居るであろう司書の姿を探す。やはり大図書院と言うだけあって
広さは広大だ。感知能力で見る限りではかつての我が家の
倍の面積はあるのではないだろうか? いやしかし前見ても巻物、右見ても本、
左見ても書簡、後ろを見ても紙莎草書簡と素晴らしい光景だ。
これには流石に帝国一完美族にふさわしい父上のもしかしたら貴族中では一番…
つまりは帝国民で一番の蔵書を誇るかもしれない書斎も…
…申し訳ないがゴミのようだ。
「……いいや、やはり父上の書斎のほうが素晴らしいな…父上の書斎に比べれば
ここの蔵書はゴミのようだ」
せっかくなのでふと過剰な装飾だからきっと大層な知識書かと思えば…
何だこの「韓妃子の凋落~良いから黙って我の種を仕込ませろ~」だの
「孫誤公の冒険~唸れ俺の股間の如意棒~」とか「三国志房中演義」に
「秘水滸伝」…は普通…じゃねぇ! 秘水は秘水でも小水(尿)か馬鹿がッ!!
作者がここに居たら即座に滅しているところだ!!
「やはりトマ様はそちらに興味があるのですね…
そこは艶書(要するにエロ本)の一角みたいですし…言ってくだされば…
いつでもトマ様の熱きにkはふん!?」
儂はライラに当身をして気絶させた。やはり一度司書を探し当て
衣服の複製と記憶を少々覗かせてもらわねばならぬ。
「はえ…? あなただあれ? 今はおそうじのじかんですよ?」
「む…?!」
いつの間にそこに居たのか…外の兵士とは違った格好をした
羊魔人族の少女がいた。背格好からするとまだ七歳かどうかも分からん年頃だ。
「そうだったのか…いや、それは済まなかった…であれば
何処で待機していればいいのだ?」
「えーと…そうですね…ちょっと待っててくださ…」
儂はこの幼女の手を掴んで引き止めた。人を呼ばれては面倒だからだ。
しかしこの光景を見られたら見られたで何か事案が発生しそうで嫌である。
「あのぅ…どうしてボクの手をつかむのですか?」
なぜ生物学的にも間違いなく女なのに自分をボクなどと言うのかは
不明だが…ふむ…ではこうしてみるか。
「それは儂…いや僕がこの書院の精霊だからだよ向日葵?
大人たちに見つかってしまうと僕は消えてしまうんだ」
「ふぇ…?! 何でボクの名前知ってるの…?」
幼子は変にああだこうだと言うよりはこういう類の話で引き止めたほうが
効果的であると父上の書斎のボロボロの子育て教本(父上…お疲れ様です)で
読んだ覚えがあったのでやってみれば、彼女は動きを止めてこちらを
訝しげに見てきたので…儂は消音魔術を周囲に張ってから指を鳴らし、
かつて帝国の聖地で見た純粋理力自走体を回りに現出させて躍らせてみる。
「ふぁ…? 何これぇ…? 魔力じゃない…!」
「それはそうさ、これは僕の眷属…兄弟の精霊達だからね」
「ふあぁあ…?」
幼女…向日葵は儂が現出させた純粋理力自走体と戯れようと必死である。
信憑性強化の為に彼女の頬を擽ったり、捕まえられそうで
捕まえられない動きをしてみたりしてやる。
「凄いなぁ…おにいちゃん本当に精霊さんなんだねぇ!」
「こらこら向日葵、そんな大声では大人たちに気づかれてしまうよ」
儂は彼女の口に指をあてて静かにするよう促す。
「…はい、精霊さん…ねぇねぇ? 精霊さんはどうして今日ここにいるの?」
「今日はね…ずっとここにいるうちに溜まりに溜まった本が気になったからだよ」
「そーなんだ…? あ、そういえばそこの大人しか読んじゃダメっていう本も
今日新しいの入ったんだよねぇ…ねぇねぇ精霊さんは読んだの?」
「む………うーん…読んだだけどね…」
「けどぉ…?」
「…………凄く怖くて夜中に厠に行けなくなるような怖いのだけど聞きたい?」
「え…ッ?!」
向日葵は少し顔を青ざめさせて押し黙る。そうだ、それで良い。
いらんことを教えて後ろで伸びている半生が酷かったとはいえ、
11歳のくせに既にかなりの領域に色々と踏み込んでいる
儂の不肖の変態怪物従者みたいになっても困る。
「だ、だいじょうぶ。そういうのはもう少し大きくなってから読むから!」
「うむ…そうしなさい。僕も夜中に君が厠に行くのを手伝うためだけに
出てくるわけにもいかないからね」
「そ、そっちはひとりでできるもん!!」
「そんなに怒らないでおくれ向日葵…大人たちに気づかれてしまう…」
何となくだが、儂は彼女の着ている服…司書見習い服を亜空間内にて
大きめのサイズに複製し伸びているライラ共々超能力で瞬間着替えした。
「んひっ?!」
衣擦れが激しかったか、ライラは起き上がる。それに気づいた向日葵も
驚いたようだ。
「ひゃっ?! おにいちゃんと同じ包帯グルグルさんがまた出てきた!?」
「ハハハ…彼女は僕の奴r…召使さ」
「トマ様…何を言って…」
儂はライラの唇に指を当てて黙らせた。
「こら…司書見習いの子供相手とはいえ目の前で儂の名前を呼ぶな」
「も、もうしわけありませんト…我が君」
「まりーく?」
「おやおや聞いていたのか向日葵。悪い子だなぁ…
精霊の世界に連れて行っちゃうぞ?」
「ひゃあ!?」
儂が伸ばした手に思わず飛びのく向日葵。
「ふふふ…冗談だよ向日葵。ただ、僕のことはさっきも召使が言ったように
マリークって仮の名で読んでくれると嬉しいな。精霊は本当の名前を
人に呼ばれても大変だからね。もしうっかり呼んだら…」
あまり怖がらせたくは無いのだが、儂は沢山の純粋理力自走体を現出させ、
向日葵を取り囲ませて笑顔で一言言うことにした。
「君を本当に真っ暗な精霊の世界に連れて行かなきゃいけなくなるんだよ?」
「ひっ…!!」
すばやく儂は純粋理力自走体を消し、向日葵の頭をポンポンと
軽く叩いてから優しく撫でてやる。
「だから約束しておくれ? また僕に出会っても、
さっき聞いてしまったであろう僕の本当の名前は絶対に言っちゃダメ。
誰かに言ってもダメ。もし言ったら…」
「い、言わない!! ぜったいに言わない!!」
ちょっと泣きそうな顔だったので目線も合わせてやる。
「良い子だ向日葵。良い子だからこれをあげるよ」
鞭ばかりでは可愛そうなので、飴をやる事にした。
これは果物の汁を濃縮し、さらに砂糖も少し添加して作った特別製だ。
未だ帝国では甘味は高級品だし、甘いものが嫌いな子供はそうそういない。
「うわぁ…綺麗…あれ。これって飴?」
「そうだよ。良い子にしてるからご褒美だ」
「いま舐めて良い!?」
「どうぞ」
「はむ…! んんん…! おいひぃ…!!」
向日葵の顔は喜色に満ちていた。
「…そうだ、向日葵。今度また会う時があれば、ここを案内してくれるかい?
僕は精霊だからここに長くは居るんだけど、最近のここが何がどう変わったか
広すぎて全部は分からないんだ。もし案内してくれたら、
また飴をあげるから…いいかな?」
「いいよ! と……!? ま、マリークおにいちゃん!!」
「おっと…危なかったね。でも、最初だから許してあげるよ」
おっかなびっくりな向日葵の頭を撫でてやる。
とりあえず今日からここに住み込むわけだからな、
人の居ない時間帯の水浴び場だの厠が儂はともかくライラには
必要だろうからな。力尽くのごり押しよりは賢明なやり方だろう。
「ありがとうマリークおにいちゃん!!」
「さて、じゃあそろそろ僕らは精霊の世界に帰るよ…それじゃあね。向日葵」
「バイバイ! マリークおにいちゃんに召使のおねえちゃん!!」
儂は認識阻害と光学迷彩に消音の魔術でライラ共々向日葵の前から消えた。
「ふわ…!! ホントに消えちゃった! 精霊さんは
凄い魔術が使えるんだなぁ…!」
まだキョロキョロと様子を伺う向日葵に、儂は声を掛ける。
「ところで今はお掃除の時間じゃないのかい?」
「ひゃわ!? あっ!! そうだ!! 戻らなきゃ!!
それじゃあねマリークおにいちゃん!!」
急に声を掛けられて驚いたが、向日葵は挨拶もそこそこに走り去っていった。
「トマ様…トマ様ってもしかしてあれくらいの幼女が…」
「黙れライラ。置いて行くぞ」
実際本当に置いていってやろうかと考えたが、変な所で自害されては
たまらんので歩を進めても慌てて追いかけてくるライラを待ってやる。
さぁ…何はともあれ今日から帝国の知識を制覇するぞ…!
33:に続く
問題はここからなんだよ…投稿の間隔とか投稿そのものの話でさぁ…




