第6話 : 黒薔薇の洗礼
「楽しかったよ、じゃあまたね、ユウカワ!」
再び家へと帰っていく彼女を見送った。俺がバイバイと手を振ると、彼女は純粋な笑顔を返してくれた。
今や立派な9歳。14歳になれば学校に行くらしい。この異世界では16歳が成人だ。その分、成長のスピードもかなり早いそうだ。学校という空間は、今の俺にとってはもう怖くない。異世界の人間は温かいということを知ったからだ。シルフィアの魔法の授業も真面目に受けている。
しかし、問題が発生した。一ヶ月前に言われた言葉。「冒険者になりなさい」。カナーマンからの提案だった。「アイナと一緒じゃダメなのか」と聞いたが、ダメだと言われた。来年にはアイナを置いて旅立つことになる。シルフィアは、俺の冒険を指導してくれる先生を呼んでくれると言っていた。名前はティアだったか。とにかく、行きたくない。
はぁ、本当に荷造りが嫌だ。行きたくない。アイナを置いて離れたくない。だけど、やるべき時はやらなきゃいけないんだ。
パカパカ、パカパカ。
間違いない、馬の蹄の音だ。今からでも隠れ。
目が覚めると、見知らぬ場所だった。低い椅子、ふかふかのベッド、そして目の前に広がる青みがかった銀髪と、黄金色の瞳。この人がきっと、ティアだろう。
妙に頭の奥がズキズキと痛む。っていうか、子供を強制的に送り出すために気絶させる親がどこにいるんだよ。いや、せめて殴るのだけは勘弁してほしかったな。はぁ。
「あの、起き上がりましたか?」
低いけれど、どこか包み込むような温かい声が聞こえた。
目を覚ましてすぐに視界に入ってきたのは、ロリ体型の少女だった。あるいは、そんな俺を不思議そうに見つめる金髪の少女がもう一人。異世界の髪の色は本当に多様だな。ちなみに俺の髪は明るい茶色だ。ベッドから体を起こそうとしたが、頭がひどく眩暈を起こす。意識が遠のきそうだ。すると、青みがかった銀髪の少女が体を支えてくれた。
「ユウカワさん、大丈夫ですか?」
俺の名前、どうして知っているんだろう。
「俺の名前、どうして知っているんですか?」
「シルフィア様から伺いました」
透き通るような、細い声だ。
「私はティアです。あなたの先生兼、冒険の指導者です。あ、それから、こちらはアレクシアです」
金髪というよりは、鮮やかな黄色に近い。
「ひとまず、今日はゆっくり休んでください。お風呂は地下にありますからね」
お風呂があるなんて、最高かよ。天国じゃないか。それにしてもアイナのことが心配だ。何も言わずに旅立ってしまったが。なんて言い訳をすればいいだろう。俺は考えるのをやめ、まずはお風呂へ向かうことにした。
階段をトコトコと下りていると、背後に人の気配がした。振り返ると、そこにはアレクシアが立っていた。
おいおい、こいつ、なんでついてくるんだ。まさか一緒に風呂に入る気か? そんなわけないよな。男湯と女湯は分かれているはず。って、分かれてないじゃん! しかも、覗き見するのにうってつけの構造だぞ。
地下に下りて脱衣所に着くやいなや、俺は固まった。アレクシアがいきなり服を脱ぎ始めたのだ。
「お、おいおいおい! 何のつもりだ……」
アレクシアの身体を見て、俺は言葉を失った。




