第5話 : 黒薔薇の洗礼
「じゃあ、見てて。火の魔法、炎弾!」
俺の手から小さな火花が咲いたかと思うと、一瞬で前方へと飛んでいった。初級魔法の割にはなかなかの威力だな。
「すごい……火の魔法、炎弾……」
「次は君の番だ」
俺の言葉を聞き、アイナは目標へと視線を向けた。
「火の魔法、炎弾……!」
同い年の頃の俺よりはるかにマシだな。その瞬間、アイナの手から真っ赤な火花がパッと咲き、1メートルほど飛んでいった。
「わ、私はなんでこんなに小さいの?」
「まだ魔力が足りないからだよ。これ以上は無理をするな。下手をすると魔力切れで気絶しちゃうからね」
アイナが「は、はうっ!?」と声を漏らした。可愛いな。告白でもしてみるか? いやいや、いくら前世の精神年齢が36歳だからって、俺はロリコンじゃない。俺はロリコンじゃないんだ……。
思わず目をぎゅっと閉じた俺に、アイナが尋ねてきた。
「魔力は、年齢を重ねるごとに自然と増えていくの?」
不思議そうに小首を傾げるアイナに答えた。
「正確にはそうじゃないよ。俺が読んだ本には、コツコツ続ければ増えるって書いてあったんだ。でも、まだ慣れてないうちは、たまに気絶しちゃうこともあるけどね」
その言葉を聞き、アイナの瞳がキラキラと輝き始めた。
「本? 君の家に本があるの? 君の家に行ってもいい? ねえ、お願い!」
愛らしい仕草でお願いをしてくる彼女の頼みを断りきれず、俺は結局、我が家への訪問を許可した。そして、家のドアを開けた。
「まずは両親の許可をもらわないとダメだからね。もし断られたらすぐに帰るんだぞ」
「私たちはいつでも大歓迎よ! ユウカ、あなたのお友達? 一体どうしてこんなに可愛いの!?」
母さんが俺の言葉を遮って、アイナを抱きしめた。この様子だと、俺とアイナのためなら何でもしてくれそうな勢いだ。おそらく俺の友達だからというのもあるのだろう。
「あ、あの……おばさま。ユウカくんと一緒に本を読んでもいいですか?」
「あら、もちろんよ! 本棚はあっちにあるからね」
シルフィアが階段を指差した。
「ありがとうございます!」
アイナはパッと明るい笑みを浮かべ、階段の方へと走っていった。
「はぁ……」
俺はため息を一つ吐き、彼女の後을追いかけた。




