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リブートライフ  作者: フロ
黒薔薇の洗礼
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第50話:中央大陸カーネギー


前世での人生を含めれば、私の精神年齢はとうに成熟しているはずなのだが、この異世界での肉体は未だに成長の途上にあった。それでも、この地で過ごした時間は確かに私を形作っている。そんなある日のこと、いつものように魔導の訓練を終えた後、ティアから唐突に「そろそろ次の土地へ移動しなければならない」と告げられた。


彼女の話によれば、この世界では十四歳になると公的な学校へ通う決まりになっているらしい。だが、その学校があるのは今私たちが拠点にしているこの界隈ではなく、遥か彼方に位置する『ヌラベル』と呼ばれる地域なのだという。十四歳で入学するためには、今からその地域へと向けて拠点を移さなければならないのだと、ティアは真剣な眼差しで私を見つめながら説明を続けた。


「移動にかかる時間を考慮すると、そろそろ重い腰を上げて出発の準備を始めるべきですね」


ティアの言葉を咀嚼しながら、私は少しだけ眉をひそめた。なぜならヌラベルという地域は、そこへ辿り着くまでの道程が酷く険しく、旅人泣かせの難所として広く知れ渡っているからだ。なぜそれほどまでに過酷な道のりなのか、その具体的な地形や魔物の生態といった理由は、今の私にはまだ分からない。しかし、あのティアがここまで警戒を露わにするのだから、並大抵の旅路ではないことだけは容易に想像がついた。


「ここからヌラベルまでは、普通に馬車や徒歩で移動したとしても、およそ二年の歳月を要します。ですから、今すぐに出発しなければ、入学の時期を完全に逸してしまうでしょう」


二年、だと?

私は思わず絶句しそうになった。この世界は一体どれだけ広大なんだ。前世の感覚であれば、二年あれば世界を何周できるか分からないというのに、たかがひとつの学校へ通うための移動にそれほどの時間を費やすとは。前世の常識では測りきれない異世界の圧倒的なスケール感に、私はただ呆れ返るしかなかった。


「それから、ユウカワ。もうひとつ重要な話があります。アレクシアですが……今後は本格的に、剣の道に没頭することに決まりました」


「それは、非常に良い報せですね」


私は驚きつつも、素直に喜びを表した。これからの過酷な旅路、そこで直면する未知の脅威を考えれば、パーティーにおける前衛、すなわち剣士のポジションは極めて重要だ。彼女が戦力としてさらに磨きをかけてくれるのなら、これほど心強いことはない。私の魔導と彼女の剣が合わされば、どのような苦難も乗り越えられるだろうと、そんな楽観的な未来すら思い描いていた。


「……ですが、アレクシアはこれから、特別な修練を受けるために私たちとは別の場所へ、単身で赴くことになっています」


「修練? 一体、誰に師事するというのですか。このカーネギーにも高名な騎士団や道場はいくつかあるはずですが」


嫌な予感が胸を過り、私は思わず問い詰めるような口調になっていた。聞き覚えのない名に首を傾げると、ティアの口から信じられない事実が飛び出してきた。


「バクルト、という名の剣士です。かつて、あのオーディスティルに多大な助力をもたらしたとされる、伝説的な人物です」


「……は? 冗談だろう?」


私の思考が一瞬だけ完全に停止した。オーディスティル。私の腕を奪い、世界を恐怖に陥れたあの凶悪な存在に手を貸した男の元へ、アレクシアが赴くというのか。


「オーディスティルの右腕と左腕。その双璧を文字通り一人で担っている、この世界で最強と目される孤高の剣士です」


普通、右腕と左腕といえば二人の優秀な側近を指すものではないのか。それを一人で兼ねているというのだから、生半可な強さではない。間違いなく人の領域を逸脱した化け物に違いない。


「ということは……アレクシアは、これからここにはいなくなるのですか。私たちの旅には同行しないと?」


私の問いに対し、ティアは静かに視線を落としたまま、何も答えなかった。しかし、その沈黙こそが何よりも饒舌に肯定を意味していることくらい、言葉にされずとも痛いほど理解できた。


「しかし、アレクシアはどうやって、そんな大層な人物から弟子入りを許されたのですか。彼女の剣技は、まだお世辞にも一流とは言えないはずだ」


率直な疑問だった。確かに彼女は熱心に剣を振るってはいたが、世界の頂点に近い男がわざわざ時間を割いて育てるほどの器には見えなかった。そんな子供が、どうしてそんな化け物の目に留まったのだろうか。


「アレクシアには、どうやら『剣神』の気配が宿っているらしくて。バクルト自身が、彼女の身体から尋常ならざる何かを感じ取り、自ら引き受けると申し出たのだとか……」


「なるほど、才能というやつか。……まあ、仕方がないな! 最終的に学校には一緒に通うことになるのだろう? なら、今生の別れというわけじゃない。問題ないじゃないか」


私は努めて明るい声を出し、努めておどけたように笑ってみせた。重苦しくなりかけた空気を振り払いたかったのだ。


「ええ、魔法学校には共に通うことになります」


「なら、学校で合流できるわけだな。少しの間、別行動になるだけだ」


「左様です。ですが……彼女が私たちの前に再び姿を現すのは、学校を卒業するまで残り三ヶ月となった頃でしょうね」


「その学校は、一体いつ卒業する仕組みなのですか。何年制なんだ」


「ペンデルハイムは……二十歳で卒業となります」


二十歳、か。

ということは、彼女は十四歳から二十歳までの大半の時間を、そのバクルトという男の元で過酷な修練に費やすということか。

アレクシアが自ら望んでその道を選んだ의 なら、私が外から口을 挟むべきことではない。それは分かっている。大丈夫だ、私にはまだフレルがいる。そう自分に言い聞かせたものの、私の宿敵であり、同時に最も気安い友人でもあったあいつがしばらくの間いなくなるという事実に、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような、どうしようもない寂しさを禁じ得なかった。


「フレルには、もうこの話を伝えたのですか」


「いいえ、まだです。彼女にどう切り出すべきか、私も測りかねていて」


ティアは困ったように眉を下げた。私たちは互いに顔を見合わせ、静まり返った部屋の中で、これからの長い旅路に思いを馳せるのだった。


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