第3話:黒薔薇の洗礼
俺が5歳になった頃。一人で外に出て、散歩にでも行ってこようと決意した。
「行ってきます」
「ああ、危ないことは絶対にするんじゃないぞ」
夕暮れ時だ。異世界では散歩にうってつけの時間。肌寒いけれど、どこか暖かいゴールデンタイム。
外の景色は平凡だった。田畑で雑草を抜いているおっさんたち、渓谷で飛び跳ねて遊ぶ子供たちの姿があった。
「なんでこんなに遠いんだよ……」
村を一周するだけでも無駄に長かった。田舎だからだろうが。
その時、遠くから黒いシルエットが見えた。
ん……大人数人と、子供が一人? 待て、違うな?
俺はその方向へと駆け出した。
「や、やめてください……」
「お嬢ちゃんは、とっても良いところに『使われて』もらうんだよ」
やっぱりな、当たりだ。決めた。あの女の子を助けよう。
「黒い茨!」
俺の手首から噴き出した茨を掴み、鞭のように振り回した。
ヒュンッ!
右腕を切断された、いかつい男が一人。文字通り効果は抜群だった。男の右腕が激しく吹き飛び、血がドクドクと流れ落ちる。残虐な光景だ。
3人の悪党どもは、幼い少女の頭に刃を突きつけて脅してきた。
「おい、狂ったか? やめねえと、ぶち殺すぞ!」
正直きつい。諦めるか? いや、ダメだ。反省すると決めたんだろ。何より、好感度を稼げるじゃないか?
「土の魔法、土炭!」
「火の魔法、炎弾!」
土で壁を作り、火でその土を焼いて強固に固める。視界を遮ると同時に、頑丈な盾を築くのが目的だ。
「あぁん? 初級魔法が何の役に立つってんだよ!」
俺は背後から、反射属性を持つ爆弾系を放った。
「リバース・エクスプロージョン!」
びよんっ!
賭けだ。俺は目の前の土炭の壁を破壊し、『リバース・エクスプロージョン』を命中させる。今できることはこれしかない。すまない、お嬢ちゃん。
プシューッ!!!
反射される。壁を破壊しなければならない。
「黒い茨!」
茨を手に巻きつけ、尖ったグローブを作り出した。俺はそのまま距離を詰め、近接戦に持ち込む!
ヒュオオオオオッ!!!
言葉では表現できないほどの巨大な鞭の音と共に、ソニックブームが壁を打ち砕いた。あとは避けてくれさえすれば……。
一撃を躱された。冷や汗が流れる。頼む、少女から逸れてくれ……!
ドガァァンッ!
成功だ! リバース・エクスプロージョンは少女を人質にとっていた男の頭を貫き、残りの二人ごと爆発した。
肉片が飛び散る。命を奪った罪悪感はある。それにしても、魔力を消費しすぎた。
「大丈夫……ですか……?」
少女が小さく頷くのを見て、俺は意識を失った。




