第31話:何一つ変わらない日常
「次に進みます。今度はバーストフレアです」
どこかで聞いたことのある格好いい名前だ。早くやってみたい。
「詠唱を教えます。『燃え盛る炎よ、我が身に熱き力を与えたまえ! バーストフレア!』」
ファッ——。
爆裂魔法かと思ったら、ただ手から炎が出るだけ? ちょっと期待外れだな。
ヒュン!
「うわっ」
突然、その炎が前方に飛んでいった。これ、ただ少し威力が強くなっただけの炎弾じゃないのか?
「やってみてください」
「はい……『燃え盛る? あ、炎よ、我が身に熱き……力を与えたまえ、バーストフレア!』」
今回は魔力を目一杯込めてみた。ティアに自慢してやろう——。
……そう思った直後、私は意識を失った。
久しぶりに気絶した。なぜか気絶した後は、疲労がすっかり回復しているような奇妙な感覚になる。
「ユウカワ、起きましたか?」
目を開けると、視界の真正面にティアの絶壁が広がっていた。私は今ベッドに横たわっていて、ティアが上から私を覗き込んでいるという構図だ。
「ユウカワも本当に。魔力が底を尽きそうならちゃんと言ってください。そうすれば、私が分けて(充電して)あげられたのに」
「魔力って分けてもらえるものなんですか?」
「もちろんです。私はそれを無詠唱で行っているので、詠唱のフレーズ自体は知らないというだけですよ」
私も教わりたかったのだが、ティアはそれを無詠唱で発動させてしまうらしい。
「私の茨は……何級なんですか?」
特に深い理由はない。ただ、純粋に気になっただけだ。最上級だろうか。それとも、まさかのグランド級?
「分かりません。ですが……グランド級、かもしれません」
おお。私にグランド級のスキルが備わっているというのか?
「バグロールが茨の能力を開放しました。ですから……ええ、おそらくグランド級なのだと思います」
「ほほう、そうなのか」
「先生、何してるの?」
アレクシアが目を覚ました。起きて窓の外を見たら、私がティアと怪しいことをしていた……という、お約束のシチュエーションだろう。
「目が覚めて窓の外を見たら、ユウカワと先生が何だか楽しそうにしているのが見えたわ」
「魔法を教わっていたんだよ」
「魔法?」
アレクシアはどちらかといえば前衛の剣士スタイルだろうか。彼女は魔法こそ扱えないが、剣の腕前は確かだ。この異世界では、男が剣士や戦士を目指さなければならないというような、固定観念でもあるのだろう。
「私にも教えてもらえる?」
「もちろんです。まずは魔力があるかどうか確認させてくださいね」
ティアがアレクシアの胸のあたりにそっと手を当て、静かに目を閉じた。アレクシアは少し驚いたような表情を浮かべている。
「ふむ……本当にごく微量ですが、感じられますね。魔力自体はありますが、決して多くはありません」
「あるなら、扱えるってことでしょ?」
「それはそうですけれど……気絶しても大丈夫ですか?」
「魔力が枯渇して? それとも、ただ単にぶっ叩かれて?」
「当然、枯渇する方ですよ」
なんなんだ、こいつ。バカなのか?




