第19話:きゅうせいのきびょう
フドゥドゥドゥドゥッ——!
そうだ。私はティアに本気だ。あの野郎に、私の未来のものを奪われてたまるか!
「この野郎、ぶっ殺してやる!」
全速力で走った。シルフィア、ごめんなさい。これほど激怒したことは、今までの人生で一度もありませんでした。
「ウキキッ!」
クソ猿め、こちらを嘲笑うかのように木々を飛び移りながら見下してきやがる。
「地の魔法——『土弾』!」
地面からせり上がる土の壁。それほど強固ではないが、あの変態猿の行く手を阻むには十分な壁だ。
ズガガガガァン!
予想通り、猿は勢いよく壁に激突し、地面へと転げ落ちた。
「仕留めてやる、DK!」(スーパー○リオ、ドン○コンの略称である)
ふと、あのスーパー○リオが頭をよぎった。ド○ゴンクエストが恋しい……。
「はぁ、はぁ……っ! ユウカワ! こいつは私が処理します!」
後ろから追いかけてきたティアの声が響いた。ティアも相当頭に血が上っているようだ。
ボカッ——! バカッ——!
猿を容赦なく殴りつけるティアの後ろ姿が見える。まだパンツを穿いていないせいか、心なしかお尻のラインが露わになっていた。助けるフリをして、どさくさに紛れて触ってみるか? いや,ダメだ。正妻はアイナ。正妻はアイナだ。
「あの、気絶したみたいですし、残りの仕事を片付けましょう」
「いや、むしろ先生のほうがもっと働くべきだと思いますけど」
「てぇいっ! 女の子にこんな力仕事をさせちゃダメなんですぅ!」
私は男女平等主義者だ。だが、女の子のほうが好きなのは揺るぎない。当然のことだろう? 違うか?
「はいはい」
「……私も、手伝います」
私がやむを得ず首を縦に振ると、ティアはすっかり気落ちしたようだった。
結局、私が大体10万個、ティアが6千個ほど片付けた。
「全部終わったようですし、戻りましょう」
今日は私がティアと一緒に寝る番だ。朝起きればアレクシアに殴られて目が覚める。実にいいルーティンだ。
「お兄ちゃん。おかえり、なさい……?」
今日に限って、フレルの元気がない。
「あぁ。どこか具合でも悪いのか?」
「ゴホッ……。いえ、大丈夫、です……」
こういう時の「大丈夫」は、100パーセント大丈夫じゃない。
「はぁっ……はぁっ……」
なんだその艶めかしい吐息は……。下半身が少し危険な領域に入りそうだが、違う。私はロリコンじゃない。
「そ、それが……私、ア、アロンソ病に……罹っちゃったみたい、です。ゴホッ」
ちょっと待て。アロンソ病? それって、一ヶ月以内に死ぬやつじゃ……。
「冗談だろ?」
タチの悪い冗談だ。一体何を言い出すんだ、この子は。ハハハ……。
「本当んだ……」
割り込んできたのは、ジフの声だった。
「え……? なんで……?」
眉間にシワが寄る。皆で口裏を合わせてからかっているのだろうか。
「おい、ユウカワ。ティアと一緒に寝ないなら、俺が代わりに寝るぞ」
しばらくの間、頭が真っ白になった。私の妹が、アロンソ病だって? なぜだ?
「こんな突然の病、あまりにも急すぎるだろ……っ」
(アロンソ:稀な病。罹った人は正確に30日後の正時刻に死ぬという。治療するためには、シムストンという薬草を採らなければならない。)




